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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
9章 南方地域の大森林と誘拐事件、である
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みんなが来たよ!


 私の名前はサーシャだよ! アーノルドおじさんや、ひいおばあちゃんのようなれんきんじゅつしになるために毎日頑張ってるんだよ!





 洞窟で見つけた子供達が少しでも安心できるように、結界を作って魔獣が近づけないようにした私は、夜の一族のおじさんと別の人達を助けるために、また洞窟の中を歩き出すの。


 『おじさん、見つかった?』

 『…………いるはいるんだが、どうやら下の方なんだ。下がる道を探さないといけない』

 『そういうのはわからないもんね。じゃあ、お猿の魔獣に道案内してもらう?』

 『残念ながら、そっちも下の方だな。このあたりにいるのは陽動に使った魔獣を追ったのか、それとも異常自体に気付いて報告しに行ったのか…………』

 『じゃあ、行ってみないとわからないんだ…………』

 『そういうことだ。気をつけて進むぞ』


 おじさんの言葉に私は頷くと、できるだけもの音を立てないように急いでさっき来たときとは違う道を歩き始めるの。

 結構分かれ道があって時々同じ場所を戻ったりしたりもしたけれど、下の方に進むことができたんだ。


 『この洞窟っておっきいね。昔誰か住んでたのかなぁ』

 『南の方の大森林のいくつかの洞窟は、一番深いところに湖があると言われていて、そこには、比較的大人しいが巨大な蛇のような生き物が住んでいると言われているんだ。言い伝えでは、その蛇と仲良くなった獣人の若者が、大森林の先にある果てないほどに巨大な湖に連れていかれたという』


 私はおじさんのお話を、もしかしたらその蛇って蛇海竜の事で、洞窟にある湖っていうのは巨大な湖、多分海だよね……に繋がっているのかなぁとか思いながら聞いて進んでいったんだ。


 『……いるな。人の発する構成魔力も多いが…………魔獣……あと、重なっている構成魔力…………霧の魔物に憑かれてしまっている者もいるな……』

 『霧の魔物がいるなら、おじさんお人形を分けてあげる。これを持っていると、霧の魔物に取り憑かれるときに身代わりになってくれるんだよ』

 『ありがたいが、ここから発している意思の構成魔力に反応して霧の魔物が人形に取り憑くのだろう? なのでおそらく、ある程度の距離になると私の認識阻害の魔法は霧の魔物には効果を発揮しなくなると思うが…………』

 『あ…………そうだね…………でも、もしものために持っていた方がいいと思うんだけど……』

 『それは分かっている。こちらの話は、だから、さっきよりも用心しながら進むようにするんだと言いたいんだ』


 おじさんは私から紙人形を受けとると、頭をくしゃくしゃって撫でると、何かを見つけるようにあちこちを見ながら進んでいくから、私も後を追うの。

 それからは魔獣に気付かれないように進んだり、紙人形に気付いてこっちにやってきた霧の魔物を紙人形に取り憑かせて倒したり、蛇の魔物や森コウモリを倒すために、遠くから魔法を撃ったり、すごく大変だったの。

 ダンおにいちゃんやアリッサおねえちゃんは、簡単に倒していくからしこの前の魔鶏蛇の時も、お兄ちゃんが魔獣と戦っていて、私は遠くから魔法を撃っているだけで結構疲れちゃったのに、隠れるのも遠くからちゃんと倒せるように魔法を撃つのもこんなに大変なんだって始めて知ったよ。


 そんな風に少しずつ進んでいった私達だけれど、またおじさんが止まったの。


 『おじさん、どうしたの? また敵?』

 『……いや、これは……お嬢ちゃん、結界を! ……ぐぅっ!』


 おじさんは何かを感じて慌てて結界を張るように頼んできたんだけれどそのあとすぐに突然苦しそうに頭を抱えるだしたの。


 『おじさん? 大丈夫?』

 『お嬢ちゃん……逃げるんだ……強力な……意思の……』

 『!! おじさん! これ飲んで!』


  少しでも危ないと思ったらすぐに結界を張ること、これはアーノルドおじさんやダンおにいさんやウォレスおじさんから口がすっぱくなるほど言われて、森の家やウォレスおじさんのところで訓練してきたから、おじさんに頼まれてすぐに結界を張った私は、苦しんでいるおじさんの言葉から、もしかして誰かから魔法をかけられているんじゃないかと思って、持っていた[心戻し・改]の瓶をおじさんの口に強引に突っ込んで飲ませるの。


 『ごぼっ! 強引だ! ……が、助かった』

 『おじさん、大丈夫?』


 私がおじさんを心配していると、洞窟の奥の方から声が聞こえて来るの。


 『ソノ…………見エナイ壁…………キサマ、アノ時ノ人間ノ仲間カ? 私ノ意思ノ魔法ヲ弾ク貴様ト言イ、解除スル薬ト言イ……忌マ忌マシイ……』

 『…………』


 そうして私達の前に、嫌いな人を見るような目で私を見る森の民の男の人と、何を考えているのかわからないくらい冷たい目でこっちを見るハーヴィーお兄ちゃんのような顔の雰囲気を持った獣人の女の人が刃物を持って現れたの。


 『すまない。認識阻害の魔法で姿を隠されていた。気付くのが向こうの方が早かったから、先手を取られてしまった』

 『あっちの方が強いの?』

 『いや…………あっちがこちらに気付いたのは、紙人形のせいだろう』

 『あ…………』


 多分、あの森の民の男の人が霧の魔物で、こっちの紙人形に反応しちゃったからこっちに気付いちゃったんだ。


 『ナゼ貴様ガココニイルノカハ分カランガ、チョウド良イ。オ前ヲアノ方ニ献上シ、ソノ能力ヲ取リ込ンデモラオウ』


 そう言うと、男の人は大きな水のかたまりを作ってこちらに撃ってきたの。

 凄い速さでこちらにぶつかってきた水のかたまりだったけれど、結界はちゃんと守ってくれて私たちは何ともなかったの。

 強い結界にしておいて良かったよ。


 だけど、今持っている結界石は、いつもの石よりも弱いやつだから、後すこしで結界が切れちゃう。

 残りの結界石は5個か6個しかないから、このまま攻撃が続くと大変なことになっちゃう。

 でも、おじさんは夜の一族だから、結界石を使って結界を張ることができないみたいだし、おじさんの魔法の届かない所に二人はいるの。

 だから、私が戦うしかないんだけど、私もさっき魔物を倒したときに魔法を使って、少し休まないと結界を張り直せなくなっちゃう。


 『ドウシタ? 反撃デキナイノカ? ナラバ…………猿ヤ魔法ヲ使エル共ヲ呼ビ寄セテイタダキタイ』

 『…………わかった……』


 女の人がそう返事をしてどこかいなくなると、男の人は苦いものを食べたときのような顔をするの。


 『フン……アノ方ノオ気ニ入リダカ知ランガ、直ニ私ノ方ガ…………』

 『喧嘩してるの?』

 『!! ……貴様ガ知ッタ事デハ無イ!』


 そう言うと、男の人はさらに大きな水のかたまりを作ってこっちにぶつけて来るの。


 『きゃああぁぁ!』

 『ぐうううう!!』


 かたまりが結界に当たったときに凄い音を出しながら地面が揺れたから、私は驚いて悲鳴を上げちゃったの。

 結界はこれも防いでくれたけれど、もうだめみたいだから新しい結界を張る準備をするの。


 『コレモ防グカ……フフフソノ技術ガ我等ノ物トナレバ、アノ方ノ悲願モ叶ウトイウモノ……』


 そう言って、男の人の攻撃はどんどん続いていく事になって、私とおじさんは全く動けなくなっちゃったんだ。






 『フフフ……イツマデ持チコタエラレルノカナ? モウ4回ソノ壁ヲ張リ直シテイルゾ?』


 森の民の男の人の攻撃とは別にここにやってきた森の民の子供や大人の魔法の攻撃や、猿の魔物の攻撃を受け続けているの。

 いま、男の人が言ったように、もう4回結界が限界になっちゃって張り直しをして、魔力の残っている結界石もあと2個になっちゃったの。

 おじさんは合間にお猿の魔獣に魔法をかけようとしているんだけれど、そうすると、向こうの男の人に邪魔をされてなかなかうまくいかないみたい。

 私も時々水の魔法で攻撃しようとするんだけれど、それも向こうの森の民のみんなに邪魔されて全然うまくいかないの。


 そんなことを思っていると、向こうの攻撃を防ぐための魔力を維持できなくなってきて結界にヒビが入りはじめるから、最後に思いきって無くなりそうな結界石の魔力を全部使って結界を大きく広げるように張りなおすの。

 そのおかげで、攻撃をしようといていたお猿の魔獣や近くに来ていた人達を押し飛ばすから、その結界の中に、最後の結界石を使って結界を張るの。


 障壁石を持って来ていれば、障壁を張りながら来た道を逃げることもできたのに、何で持って来るの忘れちゃったんだろう……。


 「道具の準備というのは、つねにいろいろな状況を考えて行うものなのである」


 っていう、おじさんの言葉を思い出しながら、自分の準備不足を反省するの。


 『こうなったら私が囮になるから、君だけでも逃げるんだ』


 どんどん大変になっていることで、おじさんが自分を犠牲にしようって考えはじめちゃったみたい。


 でも、


 『ううん、大丈夫だよ。あと少し、あと少しだから頑張って!』


 私にはわかるの。

 コルクが近くに来ているの。

 だから、きっと。


 そう思ったとき、私達の奥から大きな声が聞こえてきたの。


 「嬢ちゃん! 結界を張っているか!」

 「うん!」

 「良いぞ! センセイ!」


 一日くらいしか経っていないのにすごく久しぶりに聞こえる知っている声が聞こえると、私たちの結界を張っている先から突然煙が発生するの。


 あ、これは大変な煙だ!


 そう思った私は、煙が結界の中にはいらないように地面にちゃんとくっつくように張り直すの。

 小さな隙間でもあったら大変だからね!


 『ナ! ナンダ!』

 『!! アアアアアアアアァァァァァァァ!!』

 『目が! 目がぁぁぁぁ!』

 『痛い! 痛い!』

 『息が! 苦しい!』


 私が思った通りあの煙は大変な煙だったみたいで、煙を吸い込んだ周りの人や魔獣が一斉に苦しみだすの。


 『な、何が起きているんだ?』


 突然のことに驚いているおじさんに、私は笑顔で答えるの。


 『みんなが助けに来てくれたんだよ。もう、大丈夫だからね!』



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