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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
9章 南方地域の大森林と誘拐事件、である
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夜の一族ってやっぱり凄いなぁ


 私の名前はサーシャだよ! アーノルドおじさんや、ひいおばあちゃんのようなれんきんじゅつしになるために頑張ってるんだ!






 『おじさん、もう動けるの?』

 『きみが飲ませてくれた薬のおかげで、思ったよりも早く動けそうだ。ありがとう』


 夜の一族のおじさんが立ち上がると、私の質問にそう答えて笑ってくれたんだけど、よく見ると足がまだ少しふらふらしてる感じだから、きっと無理をしてるんだと思う。


 『おじさん、無理しちゃだめだよ……』

 『魔物にわざと捕まっちゃうような無茶をする子供がいるからな。私もすこしは頑張らないとな』

 『…………おじさん、イジワルだ』


 頬を膨らませて怒る私を見ておじさんはちょっと笑うと、洞窟の先をじっと見始めたの。


 『……少しずつ、外に出ていく意思の構成魔力が増えているな。集落を襲いに行くのだろう』

 『おじさん、すごいね! やっぱり集落で一番強い人だね!』

 『そう言ってくれるのは嬉しいけど、捕まって魔法にかけられてしまった時点で自慢できることじゃないさ』


 おじさんはそう言うと、少しずつ進んでいって誰もいないことを確認すると私を手招きしてきたから、私はおじさんと一緒に進んでいくの。


 『まさか、夜の一族じゃない者が意思の魔法を使うとは思わなかったからな。だけど、君の話を聞いて理解したよ。あれは、霧の魔物が何人もの夜の一族に取り付いて特製や能力を得て成長した者なのだな』

 『うん、アーノルドおじさん達が、そういう成長の仕方をしてもおかしくないって言ってたよ』

 『私は、その魔物の成長具合を見る実験台にされたというわけだ』


 今は、おじさんの認識阻害の魔法を使いながら進んでいっているけれど、パットンが蛇の魔物にはこの魔法があまり効かないって言っていたから用心しながら進んでいるの。

 その間もこうやって小さな声でお話しながら進んでいるんだけれど、それは、まだ私が飲んだお薬が効いているみたいでおじさんの念話の魔法を私の原初の魔法が抵抗しちゃってるからなんだ。


 『私の魔法を弾くということは、相当強い抵抗力を君は現在持っているということだ。凄いな』


 って、おじさんは感心していたけれど、副作用が自分が正しいって強く思っちゃうと人の話しを聞かなくなっちゃうことだから、余りよくない気がするの。

 だから、私はいまできるだけいろいろなことを強く思わないようにって、強く思ってるの。


 あれ? あれ? 強く思わないように強く思っちゃったら、強く思っちゃってることを強く思わないようにできていないっていうこと?


 うーん…………わかんなくなってきちゃった。


 頭がこんがらがってきちゃったから、これ以上はこのことは考えないようにしようっと。


 そんなことを私が思っている間も、私とおじさんは少しずつあちこちに広がっている洞窟をうろうろとしているんだけど、ただうろうろしてるんじゃないんだよ!


 『こっちに行こう。亜人種のような、意思の構成魔力を感じる』


 夜の一族のおじさんは、パットンよりも長い距離まで意思の構成魔力はわからないみたいだけれど、その構成魔力が魔獣のものなのか、亜人種のものなのかとかの違いがある程度わかるみたい。


 『それって、意思の構成魔力を読み取るのとは違うの?』

 『それは、相手の考えを読む魔法だな。簡単に言うと、質……だな。獣や魔獣等よりも森の民や夜の一族が放出している構成魔力の方が質が高いんだ』

 『あ、そっかぁ。素材が違うと構成魔力の質が変わるのと一緒かぁ』

 『言っていることは正しいんだが、物騒に聞こえるな』


 私のつぶやきに、おじさんは困ったような顔をしながら進んでいくんだけれど、少し広い場所が見える場所まで行くと、そこで一度止まったの。


 『おじさんどうしたの?』

 『あそこの穴から、亜人種とは別の意思の構成魔力を持ったものがやってくる。少し静かにして様子を見よう…………って、聞こえて……………………くくっ』


 おじさんの言葉を聞いて私は黙って頷くの。

 だけど、おじさんは私が聞こえていないと思ったのか、確認のためにこっちを見て目があった私が何も言わないで頷いているのを見て小さく笑ったの!


 だっておじさん静かにしろって言ったじゃんか!


 笑うなんてひどいと思ってちょっと怒った私の頭を軽くくしゃくしゃって撫でて、おじさんはまた前を見るの。


 そんなんじゃ騙されないもん! 私はもう子供じゃないんだからね!


 そう思ったけれど声を出して怒れないし、そんなことをしている場合じゃないのもわかるから、私もおじさんの後ろに隠れて前を確認するの。


 そうすると、いくつかある通路の穴のひとつから、お猿の魔物が数匹と蛇の魔物が一匹現れて、こっちにやってきたの。

 暗いし、隠れてるし、魔法もかけているから、お猿の魔獣は全然こっちに気づいていないけれど、蛇の魔物は時々何かを探してるようにキョロキョロしている気がするの。

 もしかしたら気づいちゃってるのかなぁ…………。


 どうしようって聞こうと思っておじさんを見ると、おじさんはじっと魔獣達を見ているの。

 薄暗い中見え隠れする真剣な表情を見て、話しかけないほうがいい気がした私は、おじさんと同じようにじっと魔獣の方を見ることにしたの。


 そうして少しすると、さっきまでキーキー鳴きながらこっちに動いていた魔獣達が突然大声で鳴きながら蛇の魔物を攻撃しはじめたの。

 全部の魔獣がそうしたわけじゃないけれど、たくさんの魔獣が突然暴れ出したから私は凄く驚いたんだけれど、きっとこれは集落で目のあったお友達が突然魔獣の所に走り寄って行ったときのように、おじさんが魔獣に魔法をかけたんだって分かったの。


 そうして、蛇の魔物を倒した猿の魔獣達は驚いて逃げ出した別の魔獣を追っていったり、別の穴の方に向かって走り出したりしはじめたの。

 そうして少しすると、ここには私たちと蛇の魔物の死骸だけが残ったの。


 『魔法がかかった魔獣達には、逃げて言った猿を追って襲いかかるようにという指示を与えた奴と、出口に向かって走って行き、途中で蛇の魔物を見つけたら攻撃するようにという指示を与えた。おそらくいい感じに囮になるはずだ。いまのうちに進もう』


 おじさんはそう言って歩きだそうとしたんだけれど、ふらふらっとして歩くのが大変そうだったから倒れないように支えたあげるの。


 『おじさん、大丈夫?』

 『まだ、本調子ではないな。いつもなら、あれくらいの数ならば問題なく魔法にかけられるんだが…………』

 『無理しちゃだめだよ。少し休む?』

 『いや、魔法にかかった魔獣達が暴れている今がチャンスだ。休んでいる場合じゃないな』

 『じゃあ、元気になるように、これを飲んで!』


 私は腰袋から疲れを取るお薬を二つ取り出すと、おじさんに選んでもらうの。


 『私もれんきんじゅつのお仕事で凄く疲れちゃったときに飲む、よく効くお薬だよ。凄くすっぱいのと、ヌメヌメして気持ち悪いのと、どっちが良い?』

 『…………その二択しかないのか? ちなみに、私が寝ているときはどっちを飲ませたんだ?』

 『うん、今はこの二つしかないの。さっきは、ヌメヌメしてる方だよ』

 『…………だから、起きたときに飲みすぎた時のような胸やけがしたのか…………すっぱい方で頼む。その方がシャキッとしそうだ』

 『はい、どうぞ。飲みながら進もうね』

 『ああ、分かった…………………………かっ』

 『すっぱい? つらかったらお薬全部飲んだらそこにお水入れてあげるからね』

 『…………目が覚めるな、これは………………スマンが、たのむ』

 『うん!』


 こうして私たちはおじさんが感じている多分亜人種のものだと思う意思の構成魔力を感じるところへ向けてまた歩き出すことにしたんだ!


 アーノルドおじさん、私も頑張るから早く助けに来てね!

 

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