私、頑張る!
私の名前はサーシャ! アーノルドおじさんや、ひいおばあちゃんみたいなれんきんじゅつしを目指して頑張ってるんだ!
目が覚めた私は、全然知らない場所にいることに少し驚いちゃったけれど、自分がなんでここにいるのか思い出して、とりあえず周りを調べることにしたんだ。
『…………ここ、どこだろう……穴リスさん達のお家みたいな所…………?』
ぼんやり見える周りを見て足元の土や石を触って、私は少し前にできた新しいお友達の穴リスの獣人さんたちの巣穴を思い出したけれど、あんなに綺麗な感じじゃないから、きっと似たようなところなんだと思うことにしたんだ。
『コルク……ちゃんと案内してくれるよね…………』
少し不安になった私は、集落で捕まる前のことを少し思い出していくの。
あの日の夜、おじさん達と一緒に意思の魔法から自分の意思を守るためのお薬を作って、試しに飲んでみたの。
「このお薬って、どんなお薬なの?」
「自分の中にある【意思】の構成魔力を強めて原書の魔法の効果を高めるのである。いわゆる、より強い意思を持つということであるな」
おじさんの答えに、運動する前におじさんが飲んでいた力を強くする薬と同じようなものなんだろうなぁと何となく思ったんだ。
あのお薬も【意思】の構成魔力を使うお薬で、おじさんは副作用だって言っていたけれど、お薬を飲んで面白くなったおじさんとお外で遊ぶのがとても楽しいお薬だったなあと思い出すの。
「副作用で、頑固になりそうな薬ですね…………」
「おねえちゃん、がんこってなに?」
「えっとねぇ……自分がこれって強く思っちゃったら変えられないっていう事かな」
そうしておじさんのお話を聞いてミレイおねえちゃんとしたお話も思い出したんだ。
……あぁ、だからかぁ…………
そうして、次の日まだお薬が強く残っていた私は、子供のふりをしてるお猿の魔獣を連れてやってきた人達を見て、私が捕まってコルクに案内してもらえばおじさん達だったらすぐに助けてくれるって思っちゃって、急いで部屋の荷物袋から腰袋に入れられるだけのお薬と結界石とお人形を持っていったんだ。
そうしたら、お家にいたお友達がふらふらとお外に出ようとしてるから止めようとしたんだけど、全然お話を聞かなかったから、多分魔法にかけられてるんだって思った私は、ちょうど良いって思ってお外に出るのを待ってから結界を張ったの。
お薬の効果が少し切れてきたのか、落ち着いて考えると自分のためにお友達を利用したんだって事に気づいて、凄く反省しているの。
それで、お猿の魔獣に捕まったときにおじさん達に私がいるところに案内する事と、お友達に張った結界をおじさん達が来るまで張ったままにしておくようにコルクに結界石を持たせてお願いして、その時は大丈夫って思って安心していつのまにか眠っちゃったんだけれど、こうやって落ち着いてきて暗い洞窟にいると心も同じように暗くなってきちゃった。
だからなのかなぁ、つい、
『おじさん……お薬、強すぎだよぉ…………。なんで、これで良いって思っちゃったんだろう…………』
って、口に出して言っちゃったの。
だけど、そんな私を安心するようにコルクが大丈夫って言っているような気がして私は安心したの。
おじさんが、
「ノルドとは何か意識がつながっているようで、お互いに何を思っているのか離れていても何となくわかるのである」
って、言っていたけれど、きっとこういうことなんだろうなぁって私は思ったの。
でも、ぼんやりとしかわからないから、いつかどんなに遠く離れていてもお話ができるお人形を作れるようにしようって私は思ったんだ。
そうすれば、お人形を使っていろいろできるようになって便利だもんね!
もう、反省も寄り道も終わり!
今はできることをしなきゃ!
ちょっと、おじさんのようにやらないといけない事と違うことを考えちゃってた私は、おじさんに似てきたなぁって嬉しいような困ったような事を思いながら、自分のほかに誰かいないのか探してみる事にしたの。
さっきまで、暗いところで目があまり慣れてなかったけれど、目が慣れてきて少し良く見えるようになると、少し離れたところに人が一人倒れているのが見えたの。
『誰だろう…………わかんない…………』
腰袋から紙人形を取り出して、ゆっくりとその人のところへと私は近づくことにしたの。
もしも、人に取り憑く恐い魔物がいたら紙人形に反応するはずなんだけれど、もうその人にすぐ近くまで言っても全然反応をしないことから、その可能性はないっていうことが分かって私は紙人形を袋に戻して、その人が誰なのかをよく見る事にしたの。
『……この人は、集落にやってきた夜の一族のおじさんだ……』
魔獣と集落のお友達に意思の魔法をかけていたその夜の一族のおじさんは、苦しそうに眠っているの。
それは、お日様が上ってきて力が弱くなってきたのに無理して魔法をいっぱい使ったからだと私は思ったの。
『魔物じゃ無かったら、きっと魔法だよね…………』
小さくそう口に出した私は、腰袋からお薬の入っている小さな瓶を取り出したの。
旅の時とかに持ち歩くときに容器は小さな方がいいって、おじさんがお薬を圧縮して小さな瓶に入れるようになったの。
私は魔法を使う時の明かりを利用してお薬の色を確認して[心戻し・改]と[体力回復薬]を取り出しておじさんに飲ませることにしたの。
これで、おじさんが元気になったら一緒にお手伝いしてもらおうと思うんだ!
…………まだ、お薬残ってるからこう思ってるのかなぁってちょっと不安……。
『おじさん、もう大丈夫なの?』
『あぁ、きみが飲ませてくれた薬のおかげで状態はだいぶ良いよ。それに、魔法の影響も無くなったよ。君は不思議な薬を持っているんだね』
『うん! 私、れんきんじゅつしだもん』
いま、私は目を覚ました夜の一族のおじさんとお話をしているところなの。
もしかしたらお薬が効いていないかもしれないと思っていたんだけれど、多分大丈夫な感じだと思ったから、少しずつお話をしているところなの。
おじさんが動くのが大変だって言って横になっているから、多分今はお日様が上っている時間なんだなぁと思うけれど、おじさんは無理してたから時間はやっぱりよくわからないや。
でも、コルクが少しずつこっちに近づいている感じがあるから、もしかしたらおじさん達がこっちにやって来ているかもしれない。
だから私はおじさんを、そしてお薬の力を信じてお願いをすることにしたの。
『おじさん、動けるようになったら私のお手伝いをしてほしいの』
『ここから逃げだそうとでも言うのかい? だったら私も一緒に連れていってほしいが…………』
おじさんの質問に私は首を横に振って返事をするの。
『ううん、他に捕まってる子供や、大人の人を助けるお手伝いをしてほしいの』
私は、自分の持っている道具の効果と夜の一族のおじさんに手伝ってほしい役割を説明していく。
私の中ではできることだと思うけれど、それもお薬が効いているからかもしれない。
だけど、夜の一族のおじさんは、そんな私の話を何も言わずに全部聞いた後、
『面白いな。本当に君の仲間が助けに来てくれるならば多少の無理をするだけの意味はあるだろう』
そう言って笑ってくれたの。
『おじさん、私一人の考えだとダメだから、おじさんもどうしたらいいか考えて。一緒にがんばろう』
『分かった、今はあまり動くことができないから、どうしたら良いか一緒に考えてみよう』
そうして私とおじさんは、おじさんが動けるようになるまでの間、このあとどうすれば良いかを一緒に考えることにしたの。
おじさんは、きっと私がやっちゃったことは良くなかったから後でいっぱい怒ると思うけれど、やっちゃったものは仕方ないよね。
おじさんも、よくそうやってダンお兄ちゃんやアリッサお姉ちゃんに怒られてるもん。
だから、怒られちゃうのは仕方ないから、その分捕まった人たちを助けるようにがんばろう!
だって、私は帝国に住む人たちを幸せにするために頑張るれんきんじゅつしだもん!
たぶん、これでいいよね?
その私の疑問には、コルクからは返事が全然なかったけれど、……私、頑張るよ!




