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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
2章 辺境の集落と新しいメンバー、である。
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素材管理と、魔法の実験である


 我輩の名はアーノルド。帝国唯一無二の錬金術師である。






 アリッサ嬢が合流して数日経ったのである。


 兄君………デルク坊は解毒薬の飲用を終了しているのである。

 アリッサ嬢の作る料理をたくさん食べるようになり、思った以上に早く体力が上がってきているようで、最近は家の外に出ていくことが多くなったようである。


 「アリッサ姉ちゃん、早く行こうぜ!」


 待ちきれないといった感じでデルク坊はアリッサ嬢を急かすのである。

 それを見たアリッサ嬢は苦笑いでを浮かべながら兄君を諌めるのである。


 「はいはい。そんなに慌てないの。そんなに元気なら、今日はあたしの分まで持って行ってもらおうかねぇ」

 「げ! まだ病み上がりのおれに、そんなに重いもの持たせるなよ!」

 「病み上がりなら、そんなに元気に飛び跳ねられないよ。さぁ、いくよ。デルっち」

 「……うぇーい……」


 アリッサ嬢は、そんな兄君を食材集めに付き合わせることで、体力作りを行っているようである。


 そんなアリッサ嬢が、出掛ける前に我輩に話しかけてくるのである。


 「しかし参ったね。家の外に出たら会話が通じないんだもんね」

 「そうであるな。この家には、翻訳の魔法がかけられているようであるので、森の民とも会話が成り立つのである」


 なので、今回は前もって幾つか取り決めをしておいてから出掛けるようにしたようである。


 「大森林って食材が豊富だよね。以前は食べられるか分からなかったやつも、デルっちがいると教えてくれるしね。助かるよ」


 兄君と食材集めに行くのは、アリッサ嬢にとっても良いことであるようである。







 アリッサ嬢達が食材の確保に出掛けたあと、サーシャ嬢と我輩は工房へ行き、錬金術の勉強に勤しんでいるのである。


 ダンも工房にいるのであるが、最近は素材図鑑だけではなく、各種手引き書を見ていることも増えてきたのである。


 「ダンも錬金術に興味が湧いたのであるか?」

 「いや、錬金術にっていうよりは、錬金術で出来るもの。だな」


 ダンは本を読んだまま、我輩の質問に答えるのである。

 なるほど、そういう興味の持ち方もあるのである。


 「成果物に興味があるのであるか」

 「おう、先に副作用を知っておけば、覚悟もできるだろ? それに……」


 そこまで言って、ダンは急に黙り混むのである。


 「何であるか?」

 「うんにゃ、何にも」


 ダンのやつめ、ろくでもないことを考えていたのであるな。

 悪い顔をしているのである。


 「おじさん。ダンおじちゃん、悪い顔してるよ?」

 「あの男の顔が悪いのは元々である」

 「おい、意味が変わってんじゃねえか」


 と、戯れはそこまでにして話を戻すのである。


 「それにしても、ダンは実験役の鑑であるなぁ」

 「急に話戻すんじゃねえよ。……誰のせいでそうなったと思うんだよ。まぁ、それはさておいて、どういう着想でこれを作ろうと思ったのか。とかは興味あるし、道具の効果を知って、実際にどう使えば良いかなとか考えるのは好きだぜ」


 そういうダンの言葉を聞き、意外とダンは学者に向いているのではないかと思ったのである。

 

 サーシャ嬢は最近、解毒薬のほかに傷薬を作れるようになったのである。


 やはり、普段から回復魔法を使用している分、【回復】の構成は容易だったようなのである。

 なので、他の物の作製に取り掛かっていこうと思ったのであるが。


 「素材が足りないのである」


 状態保存の魔法がかけられている倉庫内ではあるが、さすがに数百年保存が効いている素材はあまり多くなく、必要素材が穴開き状態になってしまったのである。

 そこで我輩達三人は倉庫内の整理を兼ねて、使えそうな素材を素材図鑑を見ながら確認することにしたのである。


 「せんせぇ、これは使えそうですか?」

 「……劣化具合が酷いであるな。廃棄である」

 「はぁーい」

 「センセェ、これは使えそうですかぁ?」

 「悪ふざけは大概にするのである。……それは、状態がいいであるな。残すのである」

 「了解だ」


 大分広い倉庫内であるのであるが、よく見てみると置いてあるものの近くに、名前が貼ってあったり掛けられてあったりして、わかりやすいようになっていたので、比較的作業は楽である。

 いくらかごちゃごちゃしているのは、以前試薬を探したときに多少荒らしてしまったからであろう。


 ノヴァ殿は、とても几帳面な性格だったのであるなと思ったのである。


 暫く倉庫内で作業をしていると、アリッサ嬢と兄君も戻ってきたので、昼食を全員で取った後、今度は全員で倉庫の整理と確認作業を再開するのである。

 アリッサ嬢は、以前研究室でも同じことをしていたので、知らない素材などに興味を持ちながら、楽しそうに作業をしていたのであるが、


 「飽きた……」

 「お兄ちゃん、早いよ……」


 兄君は、作業が始まって早々飽きてしまったのである。


 まぁ、遊びたい盛りなので仕方がないことかもしれないのであるが、


 「デルクはウォレス枠か」

 「あー。なんか波長合いそうだねぇ」


 ダンとアリッサ嬢はそんな兄君を見て、同じく堪え性のなかったウォレスのことを思い出しているようである。


 確かにそう思ってみると、そんなような気もしてくるのである。


 こうして、倉庫の確認作業は進められていったのである。






 「とりあえず素材の方は終わったか」

 「おじさん、これ全部お釜の中に入れちゃうの?」

 「そうであるな。使えない物は、分解処分してしまうのである」


 夕飯前に素材の確認作業が終了し、たので、使えない素材は全て釜に投入したのち、魔法陣の外へと放出して処分するのである。


 この方法は、初級手引き書に書いてある不要な素材の処理方法である。


 ちなみに、


 「ここに入れるだけでゴミがどんどん減っていくんだから、楽だよなぁ」

 「あ!お兄ちゃん!そんなにいろんな種類の素材をどんどん入れていっちゃダメ!」

 「へ?」

 「やべぇ!皆、伏せろ!」


 ドオォォン!!


 むやみやたらに素材を放り込むと、構成魔力同士が反応して暴走し、爆発しやすくなるので注意である。


 この作業で、幾つか判明したことがあるのである。


 「この素材から分解された魔力から、【回復】の魔力を感じるよ。なんかいっぱい感じるけど、あまり使いやすい感じがしない……」

 「それは、たしか大トカゲの尻尾であるな。魔力の質が悪いのは、素材が劣化しているからであるな。しかし、こんなものにそんな魔力があったのであるなぁ」


 我輩が感心したように呟くと、ダンも何かを思い出したように話し出すのである。


 「素材図鑑にも、傷薬の材料にする地方もあるから試してみたところ、構成魔力を確認できたって確か書いてあったな」

 「へぇー、サーちゃん凄いんだね。リリーだってはっきりと構成魔力を確認できなかったのに」

 「えへへ……」


 アリッサ嬢に誉められ、サーシャ嬢は、嬉しそうに笑うのである。

 リリー嬢を含め、一部の人間は純魔力以外の構成魔力を制御はできないものの微かに感じることのできる者もいるようである。

 おそらくそれは、本人に流れる血と、その強さに関係しているのかもしれないのである。


 なので、


 「おれ、全くわかんねぇ」

 「安心するのである。我輩もである」

 「人間のセンセイは分かるけど、なんでお前も分かんねぇんだよ」

 「おれ、森の民だけど獣人の血が強く出ちゃってるみたいで、ほかの奴らより速いし体力もあるんだけど、どんなに集中しても純魔力しか感じられないから、魔法陣を動かす以外魔法が使えないんだ」

 「森の民側にも、そういうものがあるのであるか」


 と、いう、高い魔力制御能力持っていても構成魔力そのものを感じることの出来ないをデルク坊のような森の民も現れるのであろう。

 それ故に、ノヴァ殿は錬金術という魔法技術を開発しようと思ったのかもしれないのである。


 サーシャ嬢は、自分が知っている魔力であれば、釜中にある魔力の種類とおおよその品質と量が分かるようである。

 サーシャ嬢が現在確認できる魔力は【回復】【水】【解毒】である。【解毒】と【水】は、解毒薬の調合を繰り返しているうちに、感じられるようになったと言っていたのである。

 それ以降、作成する解毒薬の品質が向上しているので、構成魔力を感じられるようになった事が関係していると思うのである。


 そして、感じられる構成魔力が増えたサーシャ嬢は、以前使えなかった解毒と水の魔法が使えるようになったようなのである。


 そこで、


 構成魔力がわかるのならば、錬金術の要領で特定の魔法薬はできないのであろうか? 


 と、ふと疑問が湧いた我輩は


 「今できるものを一つの魔法として使えるのであるか?」


 と、尋ねてみたのである。


 「えっと、解毒と回復とお水の魔法を一つにしてお薬を作れば良いの?」

 「そんな感じである」


 意図を理解したサーシャ嬢に実験を頼み、我輩は薬瓶を作業台に用意するのである。


 「ここに頼むのである」

 「うん!」 


 そう言うと、サーシャ嬢は魔法を使うべく、集中し始めたのである。サーシャ嬢の髪や服が、そよ風に吹かれるようにゆらゆら揺れているのである。


 「……魔力がすげぇ集まってる」

 「そうなのかい?」

 「おれは、何の魔力が集まってるかはまではわかんねぇけど、たくさんの魔力がサーシャの周りにあるのはわかる」


 そう言っていた兄君の言葉が本当のように、次第にサーシャ嬢の周りの光の渦が出来上がっていくのである。

 これは魔法発動前に起きる現象である。

 人間の場合、ここで集中を乱されると霧散したり暴発するので、きっと、サーシャ嬢も同じであろう。


 暫くその状態が続いて、一瞬光ったかと思うと薬瓶には青緑色がかった薬液が入っていたのである。


 「すげぇ! サーシャ! すげぇ!」

 「魔法薬が出来たよ……マジか……」

 「すごいね! サーちゃ……サーちゃん!?」


 魔法の発動を終えたアリッサ嬢は、ふらふらと足元がおぼつかず、近くにいた我輩に倒れ込んできたのである。


 「大丈夫であるか? サーシャ嬢」

 「おじさん、すごく疲れたよぉ……」

 「……無理をさせて申し訳ないのである」


 サーシャ嬢は疲労困憊である。息が荒く、額から脂汗が出ていて、顔も青ざめている。

 相当負担がかかったのであろう。


 「いいよぉ…………おじさんの……おねがいだもん…………でも、ちょっとおやすみ……したいなぁ…………」

 「わかったのである。アリッサ嬢、頼むのである」

 「はいよ、さぁ、サーちゃん。運んでってあげるね」

 「ごめんねぇ……アリッサ……おねぇちゃん……」


 アリッサ嬢が、サーシャ嬢を抱えて部屋まで運んでいくのであった。


 何事もなければよいのであるが…………。



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