お前も私もアナタだけ
「男なんてたくさんいるんだから」
そんな慰めを求めてはいなかった。彼以上に愛せる人が現れるなんて思っていないし、彼以上に愛してくれる人がいるとも思えない。私の中には彼しかいなかった。真面目な話からばかげた話まで、親友のような恋人がこの先また現れるものなのだろうか。
「みかにはわからないよ」
そういうと、彼女は、めんどくさそうに甘くしたコーヒーを一口飲んだ。彼女は、恋人を切らしたことはないし、それも短期間で変わっていく。彼女に私の感情なんて理解できるはずもないし、彼女に相談したいわけでもない。しかし、親友である彼女が、私を励まそうとして彼とよく来ていたカフェに呼び出してきたのは、なんとも言えず嫌味としかとることができない。
「合コン行く?」
困った末に、彼女が出した答えはそんなことだ。私は、つまらないと思いながらオレンジジュースを一口飲んだ。ゆっくり、オレンジの酸味を感じながら。そして、首を横に振るだけにとどめた。
「みかは、どうして次に進めるの?」
そう聞くと、彼女はにっこりと笑った。そこに笑顔は感じることができなかったが、彼女は笑ったのだ。
「ほんとの恋を探してるの、かな」
本当の恋。そこは愛ではないのかと思うだけで言うことはしないが、、彼女の考えは理解することができない。彼女は何を求めて彷徨っているのだろうか。などと考え始めると、彼のことなどどうでも良くなってしまう。彼のことは、好きだったし、愛していた。今でも愛している。彼以外の人をこれ以上に愛せる自信がない。
「まみは、彼のどこが好きだったの?」
彼女からの不意の質問に、私は即答することができなかった。顔も、性格も好きだった。彼が私以外を選ぶことなんて考えることをしてこなくて、彼と比べる相手はいない。彼がすべてである私にとって彼の嫌いな部分が見つからない。
「本当の恋って何?」
思わず彼女に聞いてしまった。
「それを探しているの」
彼女にしては、やけに真面目な顔をするなと感じた。その雰囲気に惹かれてしまう。彼女はなんて美しいんだろうと改めて思った。私と違って、大人っぽくて、なにもかもが私とは違う。引き立て役にちょうどいい私。ふと外を見ると、既に日は沈んでおり、ガラスは鏡のようになっていた。ガラスに映る彼女の顔と私の顔。ちょうど良いバランスだと思った。クラスのみんなも、きっと感じている。彼女の引き立て役でしかない私。でも、彼女の横にいつでもいられるのは私。彼という居場所はなくなってしまったけれど、私は、彼女の横だけは、彼女からだけは、何があっても離れないと誓っている。
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