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銃の歴史5・マスケット銃の威力とは?


 マスケット銃は基本的に銃身に旋条痕を持たないことから貫通力が今の銃器に比べて低いと思われていますが、実際問題、そんなことありません。


 というのもマスケット銃の構造によく似た武装が現在でも使われているからです。


 散弾銃用の大物狙い向けの弾、スラッグ弾。それがマスケット銃に似た威力を持つ物です。


 ではスラッグ弾とはどんなものかと言いますと狩猟用では熊、それもグリズリーなどの大型物を狙うのに使われ、1粒弾とも言われます。


 基本、散弾銃は鳥撃ちやクレー射撃用に数百発分の粒を込めたバードショット、FPSなどの世界で有名な8発分の弾を一気に発射するハンティング向けのダブルオーバック弾などが有名ですが、このスラッグ弾はぶつかった衝撃力をそのまま武器にしてしまうため、ドアの鍵のそばを至近距離でぶち込んで蝶番を壊すこともしてしまう、そんなマスターキーなんていう銃器にも使われる弾です。


 ではマスケット銃はそれほどの威力はあるのかというと、正しい火薬の量で撃った場合、射程距離100から50メートル以内であれば、ほぼ西洋の板金甲冑でも日本の甲冑でも撃ちぬくという状態でした。


 これを対処しようとしたのが西洋では胸甲騎兵と呼ばれるもので、日本では遮蔽物を使っての陣地戦闘となりました。


 それまでの戦いでの騎士は基本的に騎馬に跨がり馬上槍を使い、突撃する全身甲冑という状態でした。

 基本的に銃の発展、クロスボウの発明と改良までは、その戦術は驚異的な戦術となり得ました。

 馬による高速移動、馬体重そのものを武器とする蹂躙、馬上槍をもっての突撃、生半可な攻撃を防ぐ重厚な装甲。対騎士を想定したパイク兵、及びクロスボウの登場までは同じ騎士同士でなければ勝てない戦いでした。


 しかし、銃の発展は威力へと強化されていきます。威力に関して進化が進んだのは銃身、その長さです。

 ピストルと呼ばれるものでは防げた装甲も銃身を伸ばし、長銃身にしたものでは効率よく火薬の爆発力が伝わり、効率のよい衝撃力として装甲を撃ちぬくという状態になりました。


 ではドンドン装甲を厚くすればいいのではないかと言われますが、通常、騎士甲冑は鎖帷子を含んで30キロ、全身にバランスよく配置されているため、前転や起き上がりなどの行動も取りやすいものです。

 しかし当時人気があった馬上槍試合などの専用甲冑では落馬さえしなければ良いとなり、それこそ起き上がれないほどの重装甲仕様の物があったそうです。

 

 動きがマトモに取れない装甲なんぞ重りでしかない。かと言って被弾して死ぬのはゴメンとばかりに1つの考えへと進みました。それが防弾チョッキの元祖というべき胸甲騎兵の登場です。


 重量を増やしてでも防御力は欲しい、しかし重量を増やすと銃撃を連続して食らう。巨大な盾で防ぎきれないなら腕とかのあたっても死なない場所、頭などの当たりにくいところの防御を捨てて装甲の範囲を狭くして、当たりやすく、なおかつ対処しきれないと致死性の高い胸を護る分厚い装甲、胸甲が作られました。


 これは第一次大戦末期まで使われましたが、結局は効率の悪い武装として考えられてしまい、現在ではプレートキャリアといわれる武装や弾薬などを収めたポーチを取り付けた上にセラミックなどの強化素材で作られたプレートを収めた多機能ベストを装備することが多くなっています。それでもベストの素材は防弾チョッキなどにも使われる頑丈なケブラー、アラミドなどの高性能繊維を経用して使っていますので貫通だけは防いでも衝撃力は防げず、骨折などはするが弾を体内に食らうよりマシという考えの物です。


 

 日本の場合だといわゆる竹を束ねた物で弾を受け止めるとかいうシーンがありますが、実際、銃の衝撃力を柔らかく防いでいき、貫通を阻止するという考えが効果的でした。


 さて、このように東西どちらも装甲は撃ちぬかれる甲冑でしたが、防ぎきったという例もあります。


 1つは実戦での例ですが、銃口の場所、当たる際の角度、火薬の量、距離などが偶然にも鎧を撃ち抜かない程度に設定されていれば貫通せず、防ぎきるという偶然の事案も起きたりします。


 もう1つは試し胴と呼ばれるものです。泰平の世となり、武士は戦うよりも教養を身につけた官僚としての技能が求められる時代、当然、武具である甲冑は生産数が少なくなります。

 逆に刀に関して言えば、武士の魂という風に解釈され、柄、鞘、鍔、刀身とそれぞれの職人が丹精込めて作った物が人気になります。刀身は人斬りのものだが、鞘、柄、鍔などに精密な細工を施すという飾り立てる一面もありました。

 しかし、防具である甲冑は実際に使わないことが多いため、職人の技は鉄砲を防ぐというデモンストレーションとして試し打ちしたことが多々あったそうです。

 その際、小細工の1つとして火薬の量を少なめにした弱装弾を使用したり、衝撃力を抑えるために弾を小さな物にしたりする細工をしたという記録があります。


 どちらにしても東西ともに結果として近代化によって銃は防ぐのではなく、回避するもの。伏せるが基本の匍匐前進という状況に陥り、第一次大戦では歩兵の動く壁という意味合いでの軽戦車が活躍したりしました。

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