8・・カナの正体
双子の弟君は親切だった。
洋子の居ない寂しさを紛らわせてくれた。
彼が居なければ学校に通っていられなかったはずである。
すっかり変わってしまった洋子たちは思い出したようにしか登校してこない。
出てくると決まって私に突っかかり嫌がらせをする。
「私が悪い?私が何かした?」聞いてみたかったが
黙って耐えた。
それがまた彼女たちを苛付かせたようだった。
決まったレールから外れていく彼女たちを馬鹿にしていたわけでは無いが
彼女たちには そう見えるようで
彼女たちと行動をともに出来ない私に腹を立てていた。
私はやはりいい子ちゃんでしかないのだ。
彼女たちと仲を取り戻すことは出来ない。
初めからその努力を諦めていた。
そんなある日洋子が話しかけてきた。
「あやはカナだけ居ればいいの?」
私が黙っていると
「いつまでカナ!カナ!って言ってるつもりなの?」
と続けて聞いた。
そして言った。
「カナが どんな奴だか知ってるの?」
「え?」
私が洋子の顔を覗き込んで聞いたが洋子は何も言わず行ってしまった。
「え?カナがなんかしたの?」
そう繰り返して気が付いた。
カナって何組だっけ?
そういえば部室に現れるだけで クラスのことは知らない。
カナの苗字も知らない。
学年も知らない。
彼女のことを何も知らないことに驚いてしまった。
カナは何処?
最近 カナの顔を見てなかった。
急いで部室に顔を出したがカナは居なかった。
双子の弟君に洋子に言われたことを言ってみた。
弟君はその話を黙って聞いたまま何かを考えているようだった。
「弟君もカナのクラス知らないの?」
私が聞いたが彼は黙ったままだった。
そして
「カナは居ないんだよ!」
寂しそうな目で私を覗き込みながら そう呟いた。