3・・洋子はいつも元気
「あや!あやの!!遅刻するよ!」母の声で目が覚めた。
今日は早く登校する約束をしていたことを思い出した。
「まずい!洋子に怒られちゃう!」
私は急いで身支度を済ませて家を出た。
なのにバス停に洋子が居ない。
「なんだよ〜急いで来たのに・・・」
私は仕方が無いので一人でバスに乗った。
バスは定時に発車した。
その発車したバスが急に停止したのだ。
「えぇ?」
思わず前を見てびっくりした。
発車したバスを止めたのは洋子だった。
バスの前に飛び出し止めたのである。
よく轢かれなかったものだ。
そんなやつが隣に座るなんて・・・
仲間と思われたくないな。
なんて考えたけど お構い無しに洋子は隣に座った。
「いやぁ〜バスに送れるところだったけどギリギリセーフ〜」
バスに乗ることだけを考えた行動だった。
「恥ずかしいやつだな!恥ずかしくないの?」
バスを降りてから怒った。
「バスに乗ってから恥ずかしくなったの」と
洋子は答えた。
「あ!」
洋子が走り出した。
学校の横のスーパーで朝市を開催していた。
その会場に向かって走り出したのだった。
戻った洋子はグローブのような大きさのバナナを抱えていた。
「このバナナ美味しそうでしょう?」
洋子は満足げだった。
「そんなに大量のバナナ どうするの?」と私は心配したが
「大丈夫だよ!教室に行けば1本いくらで売れるってば!」
洋子は暢気だった。
確かにバナナは売れた。
朝市で山済みにされて売られていたバナナを
みんなも横目で見ながら登校していたのだが
行動に出たのは洋子だけだった。
このバナナは美味しかった。
私 「ねぇ〜信じられる?洋子がバスを止めたんだよ!」
めぐみ「嫌だ!あや・・その時一緒にいたの?」
私 「そうだよ〜信じられないでしょう?」
浩美 「一緒に居なくて良かった〜」
洋子 「だって・・バスに乗ることしか考えてなかったんだもん」
私 「バナナじゃ許せないよ!」
めぐみ「そうだよ〜なんか別のものもオゴッテやりなよ!」
浩美 「それって結構 恥ずかしいよ!」
洋子 「仕方が無いな〜何が欲しい?」
私 「そうだな・・まずは・・ジュース!」
洋子 「えぇ〜ほかにもねだるの?」
洋子が財布から1000円札を取り出した。
その1000円を持って私はジュースを買いに購買へ行った。
私が部室を出るとカナが付いてきてくれた。
「よく轢かれなかったよね!」カナが言った。
「うん。突然飛び出したから危なかったんだよ」
と私が答えると
「・・・・・・・・」
カナがボソっと言った。
「轢かれちゃえばいいのに・・」
そう聞こえた気がした。
「え?」私は聞き返したがカナは聞こえなかったのか
黙ってジュースを選び出した。
ジュースを5本買って私たちは戻った。
「ほれ!どれがいい?洋子はこれでしょう!?」
洋子はガラス瓶に入ったジュースと決まっている。
缶は嫌いなのだ。
口にあたった感触が嫌だと言う。
洋子 「カナの分はあやが飲みな!」
私 「えぇ?わざわざ買ってきたのにカナは帰ったの?」
さっきまで居たはずのカナが居なかった。
帰ったのにも私は気がつかなかった。
カナは私とだけ仲が良かった。
他の人たちと関わるのを好まないようだった。
私が他の子たちと遊んでいるとすぐに帰ってしまうのである。
まぁ〜いいか・・私の分にしよう〜♪
儲けた気分だった。
その夜 洋子から電話が来て明日は一台前のバスに乗る言う。
隣のクラスの男の子から電話が来て
「明日 話がある」と言われたんだそうだ。
告白だな・・私は思った。
その子はなかなかいい男である。
だが可哀想なことに洋子は別の子が好きなのだ。
「話の結果は明日 学校に行ってからね!」って事で電話を切った。
遊びに来たカナは
「彼はあやに告白する気なのかもよ!?」なんて言う。
「洋子に頼む気なのかもしれない」なんて言うのだ。
「そんな回りくどいことなんてしないでしょう?って私は思うよ!」
っと答えたものの
「もしかしたら?」なんて密かに期待をした。
期待の膨らむ朝が来た。