15・・お花畑
苦痛は感じなかった。
むしろ安堵感で満足な気さえした。
フッと意識が遠のき
「これで終わりだ。」
そう感じたのを微かに覚えている。
次の瞬間
世に言う<お花畑>に私は居た。
いや!
お花畑を上から見つめていた。
そこには真っ赤なワンピースを着た女の子がいた。
隣はベビーカーに乗った赤ちゃん。
女の子は赤ちゃんに語りかけていた。
「一人で帰ってね。」
そう言うとベビーカーをそこに残したまま川を渡り始めた。
「バイバイ!」
女の子は渡りながら何度も振り返って手を振っていた。
渡り終わるとしばらく川向こうのベビーカーを眺めていたが
意を決したような表情をしたかと思ったら駆け出した。
一度立ち止まり涙を拭いたようにみえたが
振り返らず先を急ぎ走り出した。
女の子は あっという間に見えなくなった。
赤ちゃんも気になったが私は女の子を追ってみた。
女の子はすぐに見つかった。
いや・・見つかったというより女の子は待っていたようだった。
女の子は空を見上げていた。
「やっぱり来てくれた!」
そういうと笑った。
喜んでいるように見えた。
「私は 行かなきゃいけないので赤ちゃんをお願いします。」
そう言った女の子が 下を向いて何かを呟いたように感じたが
私には聞き取れなかった。
彼女に頼まれてしまった私は赤ちゃんの元へ急いだ。
一人残された赤ちゃんは泣きもせず笑っていた。
赤ちゃんの顔を覗き込んでみた時 妙な安堵を感じた。
と・・・・・
「え?」
私の視界から赤ちゃんが消えてしまった。
私の視界に広がるのは花畑だけだった。
赤ちゃんは 何処へ行ってしまったのだろう〜!?
川向こうの女の子が「あやちゃん・・・」
そう呟いてたことに気づいていればよかったのだが
その時 私は気づくことは出来なかった。