12・・カナが死んだ日
カナは私。
もう一人の私。
そのことに気が付いたときカナは死んだ。
私がやりたかったことを実行してくれたのはカナだった。
グズグズしている私のレールから邪魔なものを排除していたのはカナだった。
カナは私の負の部分。
嫌な事は全てカナに押し付けてきた。
そんなカナを私は捨て忘れていた。
毎日の生活に終われ思い出すことも無かった。
あの弟君と一緒に真っ赤なワンピースを来た自分の写真を見た日。
あの日私は あの部屋を飛び出し自宅へ戻った。
戻った私を迎えてくれたのはカナだった。
カナの顔は脅えてた。
いつもの自信たっぷりなカナの顔とは違った。
いや・・・いつもカナは脅えた顔だったのかもしれない。
私が嫌なことばかり押し付けていたのだ。
「あんたなんか要らない!」私は叫んだ。
私を覗き込むカナの姿を突き飛ばした。
カナは壁にぶつかり そのまま崩れ動かなくなった。
そのカナを台所から持ち出した包丁で刺した。
何度も何度も刺した。
私は泣きながら刺した。
その手を止めたのは追ってきた弟君だった。
「あや・・もういいよ!カナは もう居ない」
その声で私は手を止めた。
私が包丁で刺していたのは真っ赤なワンピースだった。
カナの姿など無かった。
確かにそこにカナが居たはずだったが姿は無かった。
「初めからカナは居ないんだよ」弟君が声をかけた。
私は黙って弟君の顔を見つめ頷いた。
真っ赤なワンピースは箱に入れてクローゼットに入れた。
なぜだか捨てる気にはなれなかったのだ。
私はカナを忘れたくなかったのかもしれない。
そのときはそのことに気が付かなかった。