11・・封印
「あ・・・」
その時大事なことを思い出してしまった。
真っ暗な部屋でTV画面から出る光りは青白く綺麗だった。
その光りを背にしたカナは まるで今TVから出て来たみたいだった。
「思い出しちゃったんだね。」そう言いながら
寂しそうにうつむくカナはさっきまでの意地悪なカナとは別人のようで
なんだか私は落ち着かなかった。
「あや・・私がどうして現れたのか解ってるの?」カナが聞いた。
そうひとこと言ったカナの姿がTVの光りと同化して体が透けたように見えた。
「カナ!」っと声をかけようとした その瞬間。
カナが消えた。
TVから流れる砂嵐の音だけが響く部屋の中で私は一人 ぼ〜っと立ち尽くしていた。
大事なことをまた忘れていた。
それは忘れちゃいけないことだが私は忘れて居たかった。
「カナ・・・」と一人呟いてその場に座り込んでしまった。
知らないうちに眠ってしまったようだった。
あの状態でよく眠ることが出来たもんだ。
TVから流れるアナウンサーの声で気が付いた。
あたりを見合わしたがもちろんカナは居なかった。
そう〜居るわけが居ないのだ。
私は立ち上がりクローゼットの扉を開けた。
クローゼットの奥に座っている箱を取り出した。
これを取り出すのはあれ以来 始めてである。
あの日 私はカナをこの世から抹殺してしまった。
そして 秘密を隠すようにこの箱の中に埋めたのだ。
私は取り出した箱の蓋をそっと開けてみた。
中に入っていたのは 真っ赤なワンピースである。
取り出したワンピースは 箱から出されて嬉しかったのか
何処からか流れてきた風に吹かれて踊っているようだった。
「カナ!」私は居ない彼女の名前を呼んでみた。