門番と守備兵の会話
番外的②?
先輩門番アデルと最初2人に文句を言った守備兵ウェイの会話。
「あれ?アデルさん!お疲れ様です!」
「ウェイか」
「なんだか疲れてます?今日は昼番ですか?」
「分かるか?今日は、あの2人と昼番だった」
「あ~…。食堂とかで何度か2人の会話を聞いていたんですけど…。…あの2人と会話になるんですか?」
「…聞くな。あの2人のボケなんだか本気なんだか分からない会話にツッコミを入れていいものなのか、真剣にとるべきなのか、まったく分からないんだよ」
「あの2人の会話は、聞くだけで疲れますね。色々な意味で…」
「さっきも、森に行きたいと言い出してな」
「森に?でも、たしか門番は…」
「そう。守備兵たちと違って門番は北門の許可証を貰えない。順番待ちになりがちな許可証を門番が持っていたら、何らかのコネじゃないかと思う奴がいるからな。貰えないことは、知らなかったみたいだが…」
「それは何というか…。何故行きたいと言ってきたのです?」
「……剣の材料にドラゴンを狩りに行くつもりだったらしい…」
「…………は?…ドラ…?は??!」
「…本気で言っているようにしか見えなかったが、一瞬冗談かとも…」
「いやいや、ちょっと待ってください!森に住んでいない普通のドラゴンでも何十人かの上級冒険者パーティーが集まって、やっと一匹倒せるかどうかの強さなんですよ?それを、2人で?…しかも、森のドラゴンですよ?その強さは、百人集まっても勝てるか分からないくらいのものですよ?いくらなんでも…」
「…本気か冗談なのか、判断に困る」
「…冗談ですよね?」
「いや、本気だよ~?」
「いくらなんでも無理だろう?」
「無茶もいい所ですよ」
「そんなに強いの?」
「強いなんてもんじゃないだろ?以前の戦闘で、一匹のドラゴンに百人近い冒険者が敗走したらしいぞ?死者もかなりの数が出たとか…」
「森のドラゴンは普通よりは大きいですし、口から火を噴くそうですよ?」
「へ~、旅芸人みたいだね」
「いやいや、なにといっしょにしてるんだよ?!」
「あ~、俺も見たことありますよ。口から火を噴く芸に…ん?」
「「……」」
「僕も王都で一回見たことがあるよ~」
「…なんでいるんだよ?!相棒はどうした?!」
「それがね~。宿舎のくそまずい食事に飽きてきたから、どこか外食したいんだけど、どこかいい店知らない?って誰かに聞こうと思って…。テンコは入り口で待ってると思うよ?足がまだ完治してないから、優しい僕が来てあげたってわけ!」
「うわっ!!馬鹿ッ!!食堂でなに言ってんだ?!」
「…声が大きすぎる!(厨房の奴らに睨まれてる!!)」
「いいから、早く店!」
「(このやろう!!)…『小熊は熊』って店は?肉料理がうまいぞ。ここから東通りの…」
「なにそれ!!?小熊なのに熊?!小熊って言ってる時点で熊なのは分かりきっているのに、なにその無駄な説明!!」
「……それ、頼むから店の人に言うなよ?!」
「なんで?」
「店名に突っ込まれるのが嫌いな店主なんだよ」
「ぶっ!!突っ込まれるのが嫌いなくせになんでそんな変な店名にしたの?!変な人―――!!じゃあ、そこに行ってみるよ!」
「……へんな人か…」
「……あいつにだけは言われたくないでしょうね…」
「そうだな…。あいつに言われたら、なんだかいろいろ終わりな気がするな…」
「…と言うか、北門の隊長が新人を育てる!とか意気込んでませんでしたか?いつからアデルさんが教育係に?」
「…俺の報告を聞いた隊長が…副隊長の俺に押し付けやがったんだよ」
「…それはなんというか…」
「俺の胃に穴が空いたら、隊長を呪ってやる…」
「……がんばってくださいね(俺、門番じゃなくてよかった!!)」