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黒白の門番  作者: RIN
1/8

登場は事件の最中

新作です!よろしくお付き合いくださいませ。


最強の門番登場!

 これは、とある国、とある街の2人の門番のものがたり。


 そしてこれは、彼らが、とある街にやって来た最初のおはなし…。







「今回、こちらに配属された、リアークで~す」


「テンコ…」


 一人の男は明るく陽気に。もう一人の男は暗くぶっきらぼうに。

 しかし、場違いとしか言えないその自己紹介は、その場にいた者を呆気に取らせるには十分すぎるものでした。


 第一印象は、白と黒。

 白い髪の明るい男と黒い髪の無口な男。対照的な2人だと誰しもが思いました。


 そして、その場にいた門番の誰もが次に思ったのは…。



 のんびり自己紹介してないで…手を貸せ―――!!でした。


 


 彼らがいるのは、この国では王都の隣に位置し、第三の都市と言われるハルファンドの城塞都市。その都市に四つある門のうち、森に一番近く、通行人もほとんどが森に行く冒険者しかいないようなさびれた門でした。


 彼らの眼前には城の周りの深い堀、緑が広がる草原、そしてはるか向こうに見える森があるのみです。森は…言ってみれば人跡未踏の地です。魔物や魔族が跋扈し、ドラゴンが上空を飛び、魔王が支配する場所でもあります。

 いわば、ここは人類最前線。


 そんな森に一番近い場所になぜ門なんか、と言われるのはもっともなことです。しかし、この城塞都市ができた後に魔王が生まれ、森ができたため、仕方ないと言えば仕方のないことでしょう。

 門を無くすための改修工事をしようものなら、その隙に街に攻撃を受けるのですから、どうしようもありません。


 そんな事情があり、ここの門番は強い者が選ばれることが常でした。


 そして、先日森の魔物との戦闘によって負傷した2名に代わり、新しい門番が2人、配属されることになっており、しかも、まだ軍に入って半年の新人に異例の抜擢でした。


 新しい門番は、何年も来ておらず、数少ない森の門兵は誰しもが新人に僅かながらに期待していたのです。


 楽しみにしていた新人は、昼に門の詰所にあいさつに来ることになっています。しかし、その前に、門でトラブルがあり、詰所には現在、誰もいません。恐らく、誰もいない詰所を見て、門には誰かいると判断して、こちらに来たのでしょう。


 トラブルの原因は、門に来た冒険者にありました。冒険者はギルドで森に行く許可証を発行してもらわなければなりません。その許可証は、なかなか発行されないものでした。その許可証がなければ、森に通じる唯一の門から出ることはできません。


 許可証がないのに門を出ようとした数名の冒険者といざこざを通り過ぎて、戦闘が始まってしまった…。そんな混乱の最中、暢気にやってきて、のんびり自己紹介を始めた2人…。


 一瞬、門の兵もいざこざを起こした冒険者でさえも呆気にとられていました。ちなみに、周りでみていた野次馬でさえも、茫然としています。


 

「あれ?何かトラブルかな~?ね、テンコ!」


「…」


 何がおもしろいのかけらけらと笑う白い髪の青年リアークと静かに頷く黒い髪の青年テンコ。


「でも、今日は挨拶だけって言われてるし、帰ろっか?みんな忙しそうだし…。さっき町長にあいさつしたし…次はギルド長にあいさつかな」


 予定表なのか、服の胸元から紙を出して、確認してから、リアークはくるりと振り返り帰ろうとします。


「ちょっ!おい!!手伝えよ!!」


 思わず、門番の一人が怒鳴るとリアークはケタケタ笑います。


「あ!お疲れさまで~す!がんばってね~」


 手を振ってさっさと元来た道を引き返していく2人を門番たちも冒険者も野次馬も誰もが茫然と見ていました。


 その後、気を削がれた冒険者たちは、冷静になり大人しく投降したのでした。






 そして、その日の夜、宿舎の食堂――


「…なぜ、昼の乱闘時に、引き返した?あの場は、手伝うべきだろう?臆したのか?」


 誰もが思っていましたが、言えなかったことを、まだ若いウェイという青年が苛立ち混じりに声にしました。


 食堂はほどほどに兵がいましたが、誰もが、今日配属された2人を意識していました。


 街にいる警備兵や守備兵、門兵も同じ宿舎でしたが、2人の話はすでにほぼ全員に伝わっており、守備兵のウェイはそれを聞いて、大層腹を立てていました。


 門を守るはずの兵士が、戦闘を無視して帰る、などと、真面目すぎるウェイには理解できません。


 食事を食べていた2人は、正面に座って、睨んでいるウェイをちらりと見て、食事を再開させました。


「!!おい!!」


 無視された形になったウェイは思わず怒鳴ります。


「うっるさいなぁ!食事中は静かにって教わらなかったの?」


 リアークはにこにこ笑いながら話します。


「てめっ!!」


 がたんと立ち上がるウェイにリアークは馬鹿にしたかのように笑いかけます。


「あの場での対処はあれが一番!増援が手を出したら、奴らはやけになっちゃうでしょ?人員を増やせば、焦って何をするか分からないもん。だから、あれは最善。ただでさえ野次馬が集まっちゃって、後には引けなくなった彼らに、投降するチャンスを与えてやった僕の優しさがわからないかな~?」


 さらっと言われた理由にウェイは何も言い返せません。ですが、にこにこ笑うリアークに腹は立つのでしょう。


「だ、だが…!あんなに人の見ている前で、門兵が職務を放棄するなど…」


「…任命式は明日だ」


 それまで黙って黙々と食事をしていた黒い髪の青年、テンコがぼそりと言います。


「は?」


 何のことだと尋ねようとします。


「そうそう!任命式は明日の朝でしょ?僕らはまだ正式に門兵じゃないんだよね!いわゆる研修兵ってやつ?だから、今日のあれは、職務にはならないんだよね~」


 笑うリアーク。


 確かに、任命式も終わっていないような新兵に、森に向かうほどの実力の冒険者を抑えるのを手伝えというのは、かなりの無茶です。

 自分たちの発言がいかに無理を言っているものかを自覚したのか、ウェイは黙るしかありませんでした。


 ですが、腹の立つことに変わりはありません。特に、さっきからリアークの人を馬鹿にしたような態度とテンコの目の前のことに無視を決め込んだ態度。まぁ、つまりは2人の態度そのものに、むかむかしていたのです。


「…任命式が終われば、逃げないんだな?」


 不機嫌そうに聞くと、リアークは興味なさそうに一言だけ返します。


「…職務中・・・ならね…」


 ならいい、そう言って、ウェイはいらいらしつつその場を後にします。


 その言葉の意味を正しく理解することなく…。





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