詩『カエルちゃん』
『カエルちゃん』13/03/05
「カッパ、カッパ〜」からかわれて友人たちの追っ駆けっこが始まる。
「うるせぇ、」
「カッパにカッパって言って何が悪い」
「てめぇ、」
窓際から二列目の後の方、僕のカエルちゃんは女同士で何か作っている。
教室の窓いっぱいに溢れる秋の日差しを受ける姿が、逆光になって僕の脳裏に焼き付く。
からかっていた奴が教室に戻って来て、
「カエル、カエル」
と、彼女をからかい始めた。
僕も立ち上がって近づいていく。
彼女は、からかわれても嬉しそうに怒って見せながら、奴を叩いている。
「カエルちゃん」
僕も加わって笑って見せる。
「もう、」
奴に見せる顔を模倣しているようだ。
授業中、ノートに鉛筆で似顔絵を描いた。
手のひらのカエルちゃんが、僕に優しく微笑んでいた。だから、
彼女をハサミで正確に切り取って、擦りきれた財布の中に
閉じ込めた。