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超能力者から学ぶゾンビの倒し方  作者: 風切ツバメ
第1章: 夜明け頃
6/22

<6>

  その後僕らは、よく見ると『カビゴン』と大きく印刷されたエプロンを着ていた遺体に、手を合わせ片づけた。

 

「ミツル、サンキューな。助かったよ」

「いや、壮太が時間を稼いでくれたからだよ。僕は最初怖くて、うまく動けなかったし」

「それでもだよ。結果的に油断していた俺の命を救ってくれたのはお前だ。ありがとな」

「う、うん、どういたしまして」


 やっぱり壮太はイケメンだと思った。


「私だけなんにもできてないわ」


 美紅が一人、うなだれて落ち込んでいた。


 ドアをきっちり閉めて、僕たちは各々欲しい物を身に着けたりリュックに入れたりと物色し始めた。まず真っ先に僕が向かったのが防具コーナー。そこで10分ほど物色した結果僕がまず選んだのがこれだ。



   《 トカレフ対応防弾・防刃ベスト KA-CWU

                     230000円   》


 

 手首まで袖があるタイプで、ウインドブレーカーのような外見だ。その実性能は、防弾、防刃、突き刺し耐性、そのほかにもいろいろな機能を持っている。値段もここにある中で最高クラスだ。これならばアイツらの噛みつきや引っ掻きも、少しは防げるかもしれない。

 僕はウキウキ気分で革ジャンを脱いでそれを着ると、また物色を始めた。次に選んだのがこれ。



   《 スペクトラ防刃グローブ

                       11000円   》 



 堅くて手が動かしにくそうなものばかりが並んでいる中で、これだけ柔らかそうなよれよれの見た目で、独自の光沢も気に入ったため装着。万が一の時に二人を素早くつかむために手袋は動かしやすくなければならない。他にも



   《 スペクトラ防刃ロングTシャツ

                       49800円   》


 

 とか



   《 ケブラーTシャツ  

                       12600円   》


 

 など。他にも防刃パーカーや防刃機能が少しついた目出し帽、フットカバーやヘルメットまで、使えそうなものを片っ端からリュックサックに放り込んでそのコーナーを後にする。

 次に目を引いたのはナイフコーナー。ガラスのショーケースに並べられているので、とりあえず紙切れを四枚ほど取り出して、すべて金具部分に転移させて、ふたをずらして開ける。悩んだ末、選んだのがこれだ。



   《 スローイングナイフ6本セット

                       31198円   》 


 これはテレポート攻撃用だ、相手の動きを止めたいときに使える。6本が1ケースに入るようになっているので、それを腰に巻く。ナイフは左腰のほうに寄せておいた。予備に何本かリュックサックに入れておく。

 

 ふと顔を上げると、レジの先の壁に一本のナイフが飾ってあるのが見えた。近づいてよく見てみると、とてもかっこいい。

 柄の部分には白樫と思われる木材を使っていて、高級感を漂わせている。刃の波紋も不規則かつ見事で、白銀色によく映えて綺麗であり鍛造品だと推測できる。刃渡りは30センチくらいなので狩猟用だろう。そしてわざわざ飾ってある事を鑑みるに、おそらくここの店主が職人に依頼して作らせたカスタムナイフだと分かる。


 素直に、綺麗だと、そう思った。その後直ぐに欲しいという欲望がわいてきて、気が付くと紙を取り出してガラス蓋を外していた。僕はホクホク顔で一緒に飾ってあったケースとともに右腰に装着するとレジを後にした。


「おーい、ミツル、こんなものもあったぞ!」 

 

 そう言って壮太が持ってきたのは、大きめの重そうな緑色の何か。取ってやコードが何本か絡み合っていて複雑な形をしている。側面には自転車のようなペダルがあり、『災害時の備えに!』と書いてあるシール貼ってあるのが見える。これって


「自家発電機か!」

「そうなんだよ。この店そういう品物もたくさんあるみたいでさ」

「それはいいね! そこら辺全部、もらっていこう!」

「おう!」


 僕は壮太と災害時用コーナーに走った




 ***




 結局30分ほど漁ってから、各々欲しいものを手に入れて退散した。そこから必要になりそうなものを取るために何度か往復した後、今は家に戻って各人で装備の確認をしている。


 まぁ、装備の確認という名の遊びな気がしないでもないけど。普段なら手の届かなかった物をたくさん用意して、どのように装備するのが一番効率的か、どれを装備するのがかっこいいか、なんてことを考えるのは案外楽しい。全部盗品だからか、なんとなく自分が盗賊になったような感じがする。


 さてそんなことは置いといて、悩みに悩んだ結果僕の装備はこんなことになった。


 まず視界が狭くなるのは困るからヘルメットはなし。上半身はまず素肌にノースリーブの普通のシャツを身に着け、その上にスペクトラ防刃ロングTシャツを着て、手首から先はスペクトラ防刃グローブで覆う。

 下半身には変わらずジーンズをはき、弁慶の泣き所に衝撃吸収機能も付いている防刃フットカバーを装着。これなら弱点を守れる上に、逆に相手を蹴ることもできる。

 最後に腰に狩猟用ナイフとスローイングナイフを括り付けて、上にトカレフ対応防弾・防刃ベストを羽織れば完成だ。

 もちろん防弾・防刃ベストとジーンズのポケットには、剥がせるタイプのメモ帳を入れておくことも忘れない。このベストのおかげで、うまい具合にナイフが見えなくなっているところも工夫した。


 防御力は最高。テレポートさせる武器も、間合いに入られた時の咄嗟の武器もある。しかし問題が二つ。重さと暑さだ。それはおいおい必要に応じて変えていこうと思う。


「二人とも僕は用意できたよ!」

「俺もだ」

「私ももうすぐできるわ!」

 

 三人で隠れて着替えて、一斉に見せよう、と言い出したのは美紅だったか。そんなこんなでみんな違うところで着替えて、周りが着替え終わるのを待っている。二人がどんな格好で出てくるか、楽しみだ。




 ***




「「「せーの」」」


 という三人の声が響くと同時に、僕たちはリビングに出てきた。それからお互いの姿を見て笑う。


「ぶっ、クク、あははは! 充、何よそれ! このあっついっていうのに、おもいっきり不審者じゃない!」

「しょーがないじゃん、この格好が一番防御力高いんだから」

「それにしてもっ、充の童顔にそれは! あはは、もう面白すぎよ!」

「童顔は関係ないよ!」

「何よ、気にしてるの? やったわ、充のコンプレックスはっけ~ん!」


 確かに僕はよく中学生に間違われるけど、面と向かって言われたのは初めてだった。ちょっとショック。


「別にコンプレックスなんかじゃ」

「でも私は好きよ」


 ないよ、と否定しようとしたところで、予想外の言葉で遮られ、思考が一瞬停止した。渋谷さんはであった頃と同じようにまっすぐ僕の目を見ている。しかしその表情は昨日とはずいぶん違うように見えた。

 その目と言葉によって顔が徐々に熱を持っていくのが自分でもわかった。


「っ、そう、ど、どうもありがとう」

「その顔」

「あっそう」

「あ、充今何か勘違いしたでしょ!」

「してないよ? 美紅こそほっぺたちょっと赤いけど大丈夫、風邪?」

「これは化粧よ! そうね、いい機会だからちょっと落としてくるわ。これからはもうこんなことする必要もないし」


 そう言うが早く、洗面所にドタドタと走って行ってしまった。


「仲いいな、お前ら」

「そうかな、こっちとしては結構疲れるんだけど」

「はは、まぁ、俺としてはあんまり二人の世界に入らないで欲しいというかな」

「いやいや、二人の世界なんかに入ってないよ」

「そうかぁ?」

「そうだよ。それはそうと壮太も結構アレな格好してるね」


 僕はかなり強引に話を変えた。しかし壮太はニヤッと笑って、待ってましたとばかりに笑顔を作った。


「そうだろ、なんか選んでたら楽しくなってきてな! さっきの戦いで俺の役目も大体わかったし、それで選んで気づいたらこんなことになってた!」

 

 そういうと僕の前で一周まわって見せた。よく見てみると流石壮太、と言わんばかりにオシャレで僕たちの役割分担をよくわかった格好だった。


 まず上半身にはSATなどがかぶっていそうなヘルメットをかぶり、白いTシャツに黒いジャケットを羽織っている。おそらく二つともケプラー製の防刃のものだろう。手袋は僕のような刺突などに対応していないものではなく、もっと分厚い防御力の高いものだ。下半身は薄茶色のカーゴズボンを身に着け、僕同様フットカバーを付けている。

 

 そして一番目立つのが右手に持っている大ぶりの斧とこれまた大きく頑丈そうな黒い盾だ。斧は僕では到底片手では振れないほど大きく両刃のもので、鈍色に光っていて如何にもな感じだ。盾は長方形の縦長で上に覗き窓がある。おそらく防刃はもちろん防弾機能も付いているだろう。


「それで市街地歩いてたら目立つだろうね」

「だな。でも今多分脅威はアイツらだけじゃないだろうからな、こんな装備になっちまったよ」

「そう、だね」


 その通りだ。それが分かっているから、僕も壮太も防弾機能の付いたものを選んだ。その事実に何だか気分が沈み、お互いに黙ってしまう。


「ああ、そういや、充、さっきアイツと戦ってた時に、すっごい目見開いてたけど、あれは何でなんだ?」


 壮太は話をそらした。でも壮太が聞いてきたことは重要な事で、そろそろ説明しなければならないと思っていたことだった。


「丁度よかった、そろそろ説明しようと思ってたんだよ。えっとね、僕の超能力には重大な欠点があるんだ」


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