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追憶と義姉
包丁をはじめて握ったのは、5歳の頃だった。これで人を殺して、自分を殺すことができると知っていたものだから、私にはひどく魅力的にみえた。
はじめまして、おうかちゃん。
ひどく柔らかい声。
はじめて、聞いた声。
優しい甘い声。
それだけで充分に、義姉を愛する理由になりえた。自分と対して変わらない幼い容姿。ただ純粋に、いもうと、という存在へ歓迎してくれた。
「おうかちゃん、わたし、おうかちゃんのおねぇちゃんだよ」
「はい」
「おねぇちゃんはねえ、いもうとをだいじに
して、いっしょうまもるんだよ」
ぎゅっ、と握りしめてくれた手は暖かい。
私は殺すなら義姉と自分、と決めた。
愛しているから。