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花火と義妹
「おねぇさまっ! すごくすごくすごく可愛いですわ!」
「そ、そう?……ありがとう、桜花ちゃん。 桜花ちゃんも、可愛いよ?」
黒に紅い花の浴衣を着た瑛子は、白に桜の浴衣を着た桜花にへらりと笑う。頬を赤くして、喜ぶ桜花はとても可愛らしい。
「おねぇさま、花火大会には不埒なやろーばかりですわ! わたくしが守ってさしあげます!」
「うんうん、ありがとうね? 桜花ちゃん。 でも夏ちゃんもいるから大丈夫だよ」
はしゃいでいた桜花はぴたりと止まった。ううああと少し唸る。
「そうでしたわ……ねぇ、おねぇさま? やっぱり、ふたりで行きましょう」
「だ、だめだよ……だって夏ちゃんも」
綺麗な黒い瞳が、じとりと瑛子をみつめた。思わず後ずさる義姉に、桜花はにぱっと笑った。
「いいんですの。 おねぇさま、おねぇさまはちゃあんとわたくしを想ってくださるから」
花火がぱんっと鳴った。
祭りの始まりを知らせる花火だ。