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月の王国  作者: 有終文
第一部 翡翠
5/19

第1話 はじまりの生活 4

その夜の、そのあとのことは、良く覚えていない。


翌日になって、目が覚めたはずなのに、私は何だったのだろうと意識ははっきりしない。

朝はグレイスの手伝いもあったのだけれど、それもわすれて頭の中が色々なことが巡っていた。


私は心のどこかで、ここの世界にとばされたことは“あの人達から助けてくれるため”だと思っていた。

だからこそ、……ジェイドとグレイスを信頼して、安心して、一緒に暮らしていたのかも知れない。


「……く、…ははっ…ははは…っ」


口から自然と自嘲が零れた。

利用されるためだと。

そのためと聞いた方が、何故かしっくりと来る。

人間、損得も何もない愛情などあるはず無いのだ。

そんなもの、あったとしても、自分なんかに注がれるはずがない。


けれど、グレイスも、ジェイドも、無償の優しさで接してくれていると思っていた。

あの、半年間が何だったんだろう。幸せだったあの、半年間。

余計なことなど何一つ考えなくても良かった。それだけでも幸せだったのに。


私はまた、地面に頭を押しつけるような生活が始まるのだろうか。


そう思うと、足下から崩れてしまうような気がした。


『……ミオ?』


時間になっても、食卓に来なかった私を心配してなのだろう。

グレイスがおそるおそる私の部屋に入ってくる。

寝間着には着替えてはいたので、グレイスが入ってきてもいいように一応上着を羽織り、ベッドから離れた。


『どうぞ』

『朝食ができたのだけれど、食べられる?』


いつもはみんなで食卓を囲うのに、グレイスが二人分のスープとパンをお盆にもってきているのには少し驚いた。

ここで食べる気なんだろうか。

何も言わないでいると、グレイスはテーブルの上に食事を置いて座り、にこりと笑って開いてる方に私が座るように促した。

グレイスのその様は一枚の絵画のようで、うっとりと見つめてしまう。


『ミオ?』

『わかった、頂くね』


隣に座って、パンをスープに付けてふやかしているときに、グレイスが溜息をつく。


『昨日の、クリス様の言い方は、ないよね』

『でも、事実なのでしょう?』

『違うよ。……僕も、ジェイド様も、そんなつもりでミオと一緒にこの半年、いたわけじゃないよ』


ぽつりと、言う。

グレイスはどちらかというと、いい意味で少年のようなところが多い。

身のこなしや姿形からして、生粋の貴族なのだろうけれど、何かを隠したりや騙したりするようなところがなく、まっすぐ自分の心を向けてくれる。言葉が通じなくても、それはどこかで感じていた。

何より、まっすぐ見つめる目に曇りがない。


『確かに、ミオはメディ神の神子だよ。だけど、ミオはミオでしょ?』

『だけど…』

『ミオ、僕さ、ミオのこと、家族だと思ってたんだけど、……違うかな』

『……!』

『僕の家、結構複雑で、……五つ下の妹がいるんだけど、もう逢えなくて。その妹のように、ミオのこと、可愛がってたんだけど』


まあ、ミオは同い年なんだけどね。


むけてくれる笑顔に偽りなど見えない。

なんで、私は、あんな人たちとこの人を、一瞬でも同じように見たんだろう。


『ミオ、泣かないで』

『グレイス、ごめんね…ごめん、なさい』


感情が高まって零れてきた涙。

辛くて辛くて泣いたことはたくさんあったけれど、こんなに嬉しくて、…申し訳なくて、泣いたのはいつぶりだろう。


『ミオも薄情だよね、昨日のクリス様の一言で、僕たちのことなんだと思ったんだか』


少しおどけた感じでいう、グレイスの声。


『大丈夫、ミオ。お兄ちゃんを信じなさいって』

『グレイスがお兄ちゃん?ふふ。だったらジェイドがお父さん?』

『誰が、父だ。せめて俺も兄にしておいてくれよ』

『ジェ、イド…』


そこには優しい顔をした、ジェイドがたっていた。


中途半端なところできれる回が続いてすみません…。

あと2話ほどで下準備は終わるはず、なのです…。

お気に入り登録ありがとうございます。

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