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月の王国  作者: 有終文
第一部 翡翠
4/19

第1話 はじまりの生活 3

ジェイドの家はとても広い。その全てをグレイス一人で世話をしている形になっている。

けれど私が自由を許されていたのは、私に与えられた部屋と台所、浴室くらいなもので、それらもあまり離れてはいない。

玄関に近づくのは、ジェイドやグレイスが外出するときの見送り程度で他は近寄ることもしなかった。


言葉が通じないのに、人に会う可能性をわざわざ自分から高める必要もないと思っていたのも理由の一つ。

けれどそれだけじゃなく、もともと…人というのが恐ろしい、というのもあった。

ジェイドとグレイスには、なぜか親以上に信頼を寄せられる何かがあったから怖いと思うこともなかったのだが、クリスというこの男に関しては違った。

何を腹に抱えているのか分からず、それが空恐ろしいのだ。

飄々としているのに、常に笑顔でいるのに、心からは笑っていないように思えた。


久しぶりに、ジェイドとグレイス以外の人間にあったということもあって、ただの人見知りとして、二人が感じてくれるのが幸いだった。

私は、部屋に入っても極力クリスに近寄らず、グレイスの後ろに隠れては、退室の機会をうかがっていた。

普段ならすぐに解放してくれるはずのジェイドが今日に限っては引き留めようとする。


『ミオ、話したかったことがあるんだ』


ジェイドは、退室したそうな私を呼んで隣の椅子に座らせ、クリスから受け取っていた紙を広げて私に見えるように机の上に置いた。

それには12の人や物が描いてあり、ジェイドはその中の一人の女性を指差した。


『通じていたが分からねぇが、俺やグレイスは、この、メディ神を信仰している。……メディ神が何の神か、ミオは分かるか?』

『医学の神様』


良く分かったなぁと小声で言いながら、ジェイドは私の頭を撫でる。


『まあ、正確には少し違う。メディ神は、薬と毒を司る女神だな』

『うん』

『メディ神を祀っている神殿の神官に、お告げが聞こえた』

『我が神子が、降り立つってね』


ジェイドの言葉を継ぐように、腹に何か抱えたような笑顔を崩さないまま、クリスは言った。

神子?それはなんなのだろうと、考える。


『神子には二つの意味がある。一つは、神に祝福されたもの。もう一つは、化身として神の力を借りるもの』

『両者ともに、とてもめでたくありがたいものなんだが、後者は桁が違う。神の力をそのまま借りることができるんだからな』


何が言いたいんだろう、と考えを巡らせて、話の流れを考えると、ぞっとする考えが思いつく。


『まさか』

『多分、その、まさかだね』


クリスが一層ニコニコとした顔をして、私の方を見る。顔は笑っているはずなのに、目が笑っていないような、そんな気がした。


『ミオ、君はメディ神の、神子だ』

『嘘?!』


元の世界から、どうやってかは知らないけれど、この世界にやってきた。

そのときに何かを、神に託されたとか言うそんなシチュエーションに遭遇した記憶などはない。

私自身には、その声は聞こえたことはないし、神様の化身など、考えたこともない、……何かの間違いだ。


『残念ながら、証拠ならある』

『え』

『ミオが倒れていて看病した際、……背中に、メディ神の御標があったことをグレイスとジェイドが確認したそうだよ』


クリスは真ん中の机に広げてある絵図の、女性の背に描かれている図形を指して笑む。

背中など、本人にどうやって見て確認すればいいのか分からない。

合わせ鏡があれば見えるのかも知れないが、用もなくそんなことをしない。


『化身の神子としての証は、体の何処に刻まれる……背中なり腕なりどこかに』

『本来なら、化身の神子は神殿に奉納され、神の御許に一番近いところで祈りとその身を捧げることとなっているんだよ』

『通例ならば、な。けれど、今回は事情が特殊なんだ』

『今回は、メディ神だけでなくもう一柱の神も、化身の神子を呼んでいるんだけれど、

 そのデル神とメディ神は、この度、神子を奉納されることを望んであらせない』


二人が重ねるように畳みかけるように私に話しかける。


『人の世で、自分たちの力がどのように生きるのか。使われるのか。純粋に興味があるそうなんだよ』


……興味……?

良く分からずに目をパチクリとしていると、クリスは小馬鹿にしたような目で私を見てくる。


『つまり、君は僕たちの切り札なのさ』



中途半端なところできれました;;

あと、3話ほどで前置きが終わって、書きたかったところに着手出来るのかなぁと言う感じです…。


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