第3話 もうひとりの神子 4
「ああ、それならこうすればいい」
険悪な空気に耐えきれなかった私がケビン様のところに裕樹も連れて行くと、裕樹はやすやすと私たちが詰まっていたところに改良を加えていく。
ケビン様が質問をするので解説をつけてくれはするのだけれど、いかんせん私と接触しないと言葉が通じない。
でも、接触をすると途端にジェイドの機嫌が悪くなる。
…どないせーつーねん。
ついつい関西弁になってしまうくらい、困っていた。
裕樹があれもこれもとすいすい改良していくのを見て、思い出した。
そーだ、こいつは歩く都市伝説とも言われた男だった。
教科書どころか書籍になっている事柄なら、一度読んだだけで理解し、諳んじることができる、天才ばかり集まるうちの大学の中でも別格だ。
ちなみに、卒業後に某海外大学に進学することも決まっているらしい。
らしい、っていうのは、直接聞いたわけじゃなくて、うわさで聞いただけだからだ。卒業後の進路なんてあんまり話さなかったし、恋人でもないのに将来を聞いても仕方がなかったっていうのもある。
とりあえず、目の前のことをどうにかしようとして、とりあえず、背中に手を置いてみた。絵柄的には面白いが、これが一番ジェイドの機嫌の悪さがマシな気がした。
「美緒、今日はこのくらいにしないか? 俺、疲れたんだけど」
「そうね、お疲れ様。というか、怪我もしてるのに連れ出してごめん」
「そうだよ。俺、今日、刺されてたんだよ……いろいろあって忘れてたけど」
「いやいや、そこ、忘れちゃダメでしょ」
外を見ると日が暮れそうだ。
『ジェイド、今日はこのくらいにしたいみたいなんだけど、大丈夫?』
『構わない……が、その男は俺の屋敷に来るのか?』
『え、ダメなの?』
『ダメではないが…』
『寝床は診療所の一角でいいと思うし、ダメなら私の部屋を使ってもらって私が診療所の方で寝てもいいし』
『部屋はまだ余ってるからそういうことはしなくていい!』
『じゃあ、何が問題?』
『いや…とくに、ない』
歯切れの悪さが気にはなったけれど格段問題はなさそうなので裕樹も連れて屋敷に戻る。
帰るとグレイスとフィネがちゃんと裕樹の分も食事を用意してくれていて、全員で食卓について夕食を食べた。
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「裕樹、いくつか、聞きたいことがあるんだけど」
夜半過ぎ、未だ寝ようとしない裕樹を見つけた私は声をかける。
別にこの言語をジェイドたちが理解しないことをわかっているのだから別に他の人がいても問題はなかったのだけれど。
「いいよ、俺も聞きたいことがある」
「裕樹はどうしてこっちに?……それで裕樹がここにいるってことは、美香はどうしたの?」
「地震のあと、俺は気づいたらここにいた。ここにきて、まだ、日が4回ほど昇ったくらいか」
「…美香は?」
「美香とは、地震の前の日に別れたよ。ちゃんと別れたつもりだったけど、美香がお前に逆上するとは思わなかった」
美香と裕樹は私の中で理想のカップルだった。別れたなんて、思いもつかなかった。
「……なんで、別れたのか、きいても、いい?」
「俺が美香をちゃんと好きになれなかったから。それでもいいって言っていた美香がそれ以上を求めてきた時点でもう先が見えた」
「でも…!」
「俺はお前が美香と付き合ってほしいって言ったから付き合ってたけど、別に美香のこと、恋愛対象として好きじゃなかったんだよ。友達としては好きだったけどね」
そんな…。
裕樹は確かに昔から私のお願いは何でも聞いてくれた。
まさか、美香との付き合いまでそれだったなんて。
「…なあ、俺も聞きたいことがあるんだけど」
「……いいよ」
裕樹に聞いたことを考えてたらショックで頭が立ちいかないから。
「お前はこっちにきてどれくらいたつ?それで、お前だけ言葉が通じるのは?」
「私は、8か月くらい…言葉は、くそ生意気な魔法使いに魔法をかけてもらったから」
「……魔法とかそんなんあるんだ……、どういう仕組みなんだろうな」
「そーいうとこ、興味持つのが裕樹らしいよね。裕樹にふれたときには言葉が通じるのはなんでかわかんないけど」
「まあ、いっそのこと、言葉ならってもいいけどな。長丁場になりそうなら」
「裕樹なら、すぐだよ」
裕樹の語学力は馬鹿にしてはいけない。英語はもちろんのこと、フランス語、スペイン語、ドイツ語も理解でき、その上ポルトガル語、ロシア語まで日常会話レベルなら使える。
すべて、遊びと称した勉強のたまものだが。
「それはそんなんでいいんだけど、一番聞きたいこと、聞いてもいい?」
「いいよ」
「お前はここで何をしてる? ……それで、ジェイドたちは何者なわけ?」
「歩く都市伝説」は某大でまことしやかに伝えられる妹の彼氏のあだ名です。
会ったことないけど、歩く都市伝説、いつか会ってみたいわぁ。
一部ノンフィクションですが、大半フィクションですのでうのみにしないで。
ちなみに、最低点が片手酒飲みながら書いたレポートの85点とか冗談じゃねぇと叫びたくなるうわさしか聞かないんです、歩く都市伝説(笑)妹に聞いたら事実だったし。
そういうイメージ=裕樹、です。
某大には姉も妹も妹も通ってるんですが、まあ、変態と天才の紙一重な感じは彼女らの知人を垣間見ただけで伝わってくるんですが、歩く都市伝説はその中でも格別な気がします…。
秀才と天才の違いを見せつけられる気がする…。。。
裕樹の役割というか、話の立ち位置を迷ってます。
どうしよう…まだ、ここらへんでは関係しない、後の方の話なんですけど。
最後に、どないせいっつーねんをどーせいっつーねんと最後まで迷った…(笑)
意味はどうすればいいの?を自虐的に突っ込んでる感じのニュアンスでとっていただければと思います!
(三重出身なのであんまきれいじゃないですけど、関西弁混ざるんです;)