第3話 もうひとりの神子 3
裕樹の怪我は出血の割には大したことはなく、止血さえしてしまえば終わりだった。
逆に私の取り乱しようの方が、グレイスに心配されていた。
ねえ裕樹。
なんでここにいるの。
どうして怪我なんてしたの。
美香はどうしたの。
聞きたいことはいっぱいあったんだけど、嗚咽の中で声になったのは、一つだけだった。
「裕樹、会いたかった…!」
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グレイスがすごく困っている。
私が年甲斐もなくわんわん泣いて縋り付いている様子は非常に目立った。
はた目から見ると修羅場のように見えると思って、グレイスが屋敷まで誘導しようとしても私は泣きついて離れられなかったし。
そもそも私が子供みたいに正体をなくしてまでなくところを見たことなかったグレイスはそれだけで驚いて冷静に判断できなかったらしい。
とりあえず、私を引き離して、なだめて泣き止ませてから、裕樹に話しかけると困ったことに、言葉が通じなかった。
私が胸にすがりついてる時には話せたのに、と思い、私と離れると裕樹は言葉を理解しないし、何を言っているのかわからなくなる…らしい。
推測なのは、私とは普通に会話できたから。
グレイスは、指輪の力が、裕樹と接触している間だけ、裕樹にも影響を及ぼしているという仮説を立てて、帰るときは私と裕樹は何年かぶりに手をつないでいた。
グレイスが困っているのは、別にこのことじゃない。
目の前の御仁の怒りだからだ。
なぜか、ジェイドが、かなり、怒っている。屋敷についたと同時にそれは目に入った。
……約束をすっぽかしたから?
でも、けが人や病人がいたら優先するっていう約束だし…
『その、男はだれだ?』
「美緒、この男は?」
私は、落ち着いてはいたけれど顔は真っ赤で目も腫れて泣いていたのは一目瞭然だし、ジェイドからしたら見知らぬ男と手をつないでいるし。
正直、再会の場面を見ていたグレイスにさえ、裕樹の正体は知らないだろうと思う。
そういう男の正体をいぶかしがるのは、家主として当然のことだろう。
一方、裕樹もジェイドのことも…紹介し忘れていたから、グレイスのことも知らない。
互いに自己紹介が必要だと踏んだ。
とりあえず、手をつないでいるのをあまり良しとしてなさそうだったから、手は放した。
『ジェイド、グレイス。彼は私の幼馴染の、裕樹。けして怪しいものじゃないわ、私が保証する』
『幼馴染?この男が?』
「裕樹。今、私がお世話になってる、ジェイドと、グレイス」
「お世話にって…男所帯の中にいるってお前!」
「今はちょっと席を外してるけど、フィネって女の子もいるから大丈夫」
「『 美緒 』」
ダブルサウンドってこういうこというの?
めんどくさーー!
私は聖徳太子じゃないのよ!と叫びたくなった。
子供の男どもの和解は次に持越し…?
明日は鬼講師がいないので、病院(ノット病人バット研究?)で更新しようかなぁ…と思ってるので第3話は6月中に終わりそうです。