第3話 もうひとりの神子 1
いつだって心の底から笑っていて欲しかったのに、
助けたいのに、
俺はただ、無理して人形のように笑う彼女に胸を貸すしかできなかった。
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ベルガさんが亡くなって半月ほどの時間が過ぎた。
私はジェイドからこの世界の医術についていろいろなことを改めて聞いた。
神殿で行う治療のみが神の加護を得ることができ、今私がして言うことは本来は見つかると流刑になったり最悪死罪にあたる可能性があること。
本当はベルガさんが亡くなった時点で私には何らかの処罰が下る可能性が大きかったこと。もし、ばれてしまったときには、メディ神の神子であることを公言する必要があること。
神子であることを公言することのメリット、デメリットを事細かに教えてもらった。
公言してしまう最大のメリットは、私が行う医療行為が神の加護をうけているという認識になること。それによって、民も私の治療を積極的に受けてくれるようになるし、また神殿や国からの罰則もなくなる。
デメリットは最悪神殿か城の中に閉じ込められ、一生出られなくなる可能性が高いこと。なんでも、代々の神子は神殿から出されることはないらしい。
また、神子を隠していたことでジェイドとグレイスが死罪になる可能性もあるらしい。
医療なんてしないで、こっそりしておくのが一番だとも思った。
でも、私は医療をしたい。ジェイドたちも格段、反対はしなかった。
『ジェイド、できそうかなぁ?』
『ケビンに頼んだが、なかなか難しそうだなぁ……課題は進まず、ってとこだな』
私が作成を頼んだのは、レントゲンの機械。
画像診断ができるように、と考えた結果だ。
できることなら、非破壊検査ができるものが手から出るほど欲しい。
血液検査ももっと細やかに迅速に行えるようにしたいが、こちらの世界での公衆衛生状況を考えたときに、血液検査で管理が必要な疾患より、治療の難しい結核なども発見でき、外傷に対応もできるこちらが優先だと、私とジェイドは判断した。
X線の発生の機械と、フィルム。
フィルムの感光板に関しては比較的すぐに作れ、問題はなかった。
問題というよりも重要なのはX線発生装置だ。
ターゲット金属の調達とフィラメントはジェイドとケビン様のコネでなんとか行えたが、この時代には電線もなければ発電所もなかった。発電機をケビン様お抱えの魔術を使える技術者と相談して1週間ほどで簡易的なもの作ったはいいのだが、なかなか安定的に作ることが難しい。
また、X線を発生させるととても熱が出てきてしまうため、それを冷却する必要もでてくる。
そして、技術者や患者を不必要に被曝させないための防護服の作成も必要でどれもこれもあまり芳しい結果を得ることができていない。
半月そこらで成果を出す、というのは難しいとはわかっていても、現代に行けば普通に医療現場に転がっているもの。それが使えないのはもどかしい。
『あーもう、挫けそう…』
『挫けるな、お前だけが頼りなんだ』
『そう、なんだけどねぇ…』
『それにしても、このレントゲン、は、本当に体の中が見れるのだな。驚いた』
『モノクロだし、コツがいるけどね』
私とジェイドは試験的に一度、足と胸部のレントゲンをとった。
私の足のレントゲンは電力が安定していなかったためきれいに取れなかったが、ジェイドのは二つともきれいに撮れた。ジェイドははじめてみたレントゲン写真に驚きながらも感動していたのを覚えている。その後のX線発生管の熱を下げるのが非常に大変だったが。
だから、今は電力の安定化とX線発生管の冷却が一番の課題だ。
それのために、毎日のようにケビン様の屋敷に通っている。
『裕樹がいればなぁ…』
ジェイドの屋敷についた後、私は小さな声で幼馴染の名前を呼ぶ。
いつもいつも頼りにしていた、幼馴染。
裕樹は私より頭が良く、工学を専攻にしていた。
工学の中でも設計でもプログラミングでもなく、回路とかを作る方を学んでいたはずだ。医用工学の教科もとっていたといっていた記憶がある。卒業の単位には必要ないのに病態とか薬理とかの医療系の講義もとっていたけれど。
こっちに飛ばされたときの本を見て勉強しただけの私なんかよりもずっとそっちの造詣は深い。
「裕樹…」
もう一度、声に出してつぶやいたら、余計に彼に会いたくなった。
前回の空きを考えたらありえないほど早いですね、えへへ;;
それにしても、出てこなかった、名前だけしか…。。。裕樹くん…!
次こそ、出たらいいなぁ。
レントゲンについて、細かいところは目をつぶってください。あはは;
ちなみにX線に限らず、被曝の可能性がある治療や検査はいくつかあります。(PETとか)
放射線について少し話が出たので。
昨今、放射線に対して多くの誤解や誤解に至らないまでの誇大なメディアの放送、ネットの流言が多いですが、自分で考えて取捨選択してほしいと思っています。
ちなみに、私はあんまり心配してない派です…静岡なので距離があるっていうのもありますが、積極的に関東のお野菜も購入してます。
けど、放射線が怖くて海水浴にもいけないし、飛行機にもあんま乗りたくないなぁって考えるくらいにはおびえてはいます(笑)
とりあえず、メルトダウンした地域には数十年、数百年住めなくなる云々はあんま信じてません。チェルノブイリ周辺に住めないのは、あれ、コンクリートで固めただけでまだぜんぜん中で暴走してるんですもん(汗)しっかり反応をとめさえすればすめると思いますよ。今の体制だとそれに数十年かかるかもしれないですが(汗)。
すめないんだったら、広島と長崎にはまだ人が住めないor住めなかったという論理になる…。。。原爆が落ちてるからこっちのほうが住めない期間は格別に長いはずなのに;
っていうかあとがき長くてすみません;;;;;