第2話 手から零れるもの 3
「ごめんなさい……ごめん、なさい。つらかったですよね、ごめんなさい」
ミオは、白いベルガの手をつかんで泣きながら謝り続けた。
食事をしているときのことだった。フィネが食事をしようとし、ベルガが「骨折は直ったから久しぶりにテーブルで食べたい」と補助の杖をつきながら歩き出したら、急に胸を押さえて苦しみだしたのだと急いで帰ってきたのだ。
ミオは思い当たる何かがあったのか、道具を持って走ってベルガの屋敷に向かった。けれど、もう、ベルガの手は冷たく、事切れていた。ミオは急いで心肺蘇生を図ったが、だめだった。
「ベルガはどうして急に?…腎臓が原因なのか?」
俺は、酷かもしれないが原因を追究した。下手をしたら、面倒なことになるかもしれなかったから、他の人には話せないかもしれないが、本当のことを知っておきたかった。
「いいえ。解剖する術も何もないから確定できないけど、フィネから聞いた症状と状況から考えて、腎臓とは直接は関係はない」
「じゃあ、なんだ?」
「……ベルガさん、マッサージはしていたんだけど、本格的に足を動かしたのは久しぶりだった……そのせいよ。気にかはけていたんだけど、もっと注意していればよかった。私がいたら、間に合ったかもしれないのに」
「よくわからないんだが」
ミオはベルガのカルテを広げて、空きスペースに線を何本か描き、説明を始めた。
「これが、足の静脈ね。寝たままだと、圧迫されて血液が鬱滞することによって、血栓ができるの。動いたショックでそれがとれれば……どこに行く?」
「心臓か?」
「そう。それで、心臓が最初に血液を送る場所はどこ?」
「肺……だから、呼吸困難を起こしたのか?」
「私たちがもし、血栓ができたとしたんだったら、胸が少し痛くなるぐらいですむの。でも、ベルガさんは高齢で心臓もあまりよくなかったし、血管ももろくなっていたし、腎が悪くて水をとるのも控え気味だった。私が来るときはできるだけ動かすように心がけてはいたけれど……もっと注意すべきだったのよ」
彼女は涙をこぼして、俺に懺悔をした。
俺も、似たような経験は山ほどある。少しの油断で、少しのおごりで、人は死んでいく。
人を救うということは、並大抵なものではない。それは、驚くほど難しい。
神の祝福を得ていたころの俺はそれをひどく痛感していた。
……神子であるミオですら、そうなのだな、と思った。俺と何も変わりない。
少し、意外というよりも、当たり前なのかと思える自分が、そこにいた。
「ミオ様!」
「フィネ……ごめんなさい……!」
フィネが現れると、ミオはフィネに向かって謝りはじめる。
「いいえ、ミオ様がいらっしゃらなければ、私もここに通うことはできませんでしたし、そうなっていましたら、ベルガ様は笑うこともなく余生を過ごされていたと思います。ベルガ様に笑顔が戻ったのは、ミオ様のおかげです」
「でも、…でも」
「ベルガ様にかわって御礼申し上げます。ありがとうございました」
ミオがフィネの手に縋るように泣くのをみていると、戸口がなにやら騒がしくなってきた。
誰かがきたのか?これは、面倒なことになりそうだ。
「申し訳ありません、ミオ様。少し、玄関を見てきます」
フィネが断って玄関へ足を向けると、この場に似合わないような罵倒があたり一面に響く。
その声に俺もミオも玄関の方へ向かうと、そこには……見たくない顔がいた。
投稿の期間が長くなってしまいました。
反省してます…;;次で手からこぼれるものは終わりになります。
で、一番最初の話の伏線を、
もってきたい、このごろ。
11日の震災、私は妹と一緒に東京におりましたが、何もなく、普通の生活がおくれました。
東北大に通う、高校時代の同級生は、命からがら無事でした。
茨城が実家の友達の家族も無事でした。
よかった…と思うもつかの間、津波の映像を見て、心がつぶれそうでした。
今はヘルツが違うところにいますので、節電しても、東北や関東の方のためにならないのですが、東京にいる妹にはできる範囲でいいから節電して欲しいと頼みました。
病院などがとても心配です。
私が体験したところの話では、東京の大部分は物資の面で被災したという(電気の面では苦労していますが)ところは少ないと思います。
必要以上の物資の買占めなどは控えていただければ、と思います。