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月の王国  作者: 有終文
第一部 翡翠
1/19

プロローグ

最初から少し、暴力表現があります。気をつけてください。




私は、けっして必要とされなかったんだろう。

だから、胸が痛むんだ。


「あんたなんかいなければよかったんだ」


親友とおもっていた女からそんな言葉が零れれば、

私の心臓は哀れなくらいに大きくはねた。


「あんたさえ、いなければ!」


彼女がただ、一時の激情に飲まれていることも心のどこかで分かっていた。

彼女が、ただ、勘違いしていることも。

けれど、私の心は凍り、何も考えられない。

動けないうちに窓際に寄せられてしまう。


「この、売女め!」


彼女は私の首に手をかける。

苦しい、と思うと、怒っているはずの彼女の顔が何故か哀しく叫んでいるように見えた。

そう思うと、声も出なくなっていた。

息ができずに、苦しさのあまりに何も考えられなくなっていく。


そのときに不意に、予想もできない揺れが建物を襲った。

地震のようだった。


肩からかけていた石のように重い鞄が窓ガラスにあたり、窓に大きな穴が開く。

開いたと思うと、私はバランスを崩して、そこから落ちていた。


「美緒」


親友の声が、聞こえた気がした。

先ほどまでの哀しい顔ではなく、優しいいつもの、顔だった。


「真木ー?!」


遠くでは、別の声がする。低い声。

それが誰の物か判別する前に、私の意識はゆっくりと暗闇に落ちていく。


「美緒ーーーー!!!」


私は親友の声を最後に、意識を手放した。


***********************


起きてみれば、見知らぬベッドで私は横たわっていた。

辺りは、ただの白い壁に囲まれた空間だった。


「x*..?」


何かの音に気付いて、音の方を向けば、そこには男の人がいる。

その男は、金色の髪に碧色の瞳、そしてそれらを引き立てる白い肌をしていた。

美しい顔つきもしていたし、体も少し男性にしては華奢な印象ではあるが引き締まった体をしていた。

何の音か、とおもったのは、その人が発している言葉らしい。

言葉なのか、と思って思い返してみると、ハミングで紡がれる歌のように軽やかで耳障りの良い言葉。


「$+*@&……!」


何を言っているのか、さっぱり分からないから余計なのかも知れない。

そのとても聞き心地のいい声が楽器のような何かに思えてしまう。

目を閉じて、その声に耳を澄ませば、いつの間にか入ってきた別の男性に頭を撫でられていた。


「ジェイド」


彼は私に聞き取れるように、ゆっくりと私に向かっていった。

それが、この世界で初めて私が覚えた単語だった。



初めまして、有終文ともつき あやと申します。

ファンタジーにはしていますが、題材は結構身近な物からも抽出してネタ作りしていく予定です。

拙い小説ではございますが、よろしければしばらくの間、おつきあい下さい。

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