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ネッ友  作者: 亞不可
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躍る

 つまらない。小学校のころから、自分の人生というものがつまらなかった。

 クラスのレク、つまらない。

 合唱コンクール、つまらない。

 運動会、つまらない。

 つまらない。けど、親に言うと「変わった子だ」と言われる。

 俺は、生きるのが下手なのか?そう思うたびに生きるということが怖くなってくる。

 このまま、このまま何に対しても楽しいと思えなければ、俺は一生を孤独で過ごすのだろうか?

 そう思っていた高校入学。

 何も考えず決めた学校なため面接で苦戦したのは苦い思い出。

 入学式が終わり、誰とも話さず親と合流した俺は車に乗り込み家へと帰宅する。

「ほんと、あんたの人生ってつまらないわね」

 帰宅して早々、母さんに言われた。

 俺以外の人は友達と言える人と仲良く写真を撮ったり抱き合ったりしていて、そんなことできる友達がいない俺を恥じているんだろう。俺が友達を作らないせいで、母さんにはママ友なんて人は居ないみたいだし。

 悪かったな、つまらない人生で。

 悪かったな、生きるのが下手で。


 俺には合わなかったんだ。この狭い箱庭が。


「康介、ちょっといいか?」

 リビングのソファーでくつろいでいると、父さんに声をかけられた。

「…なに?」

「入学祝、何が欲しい?」

「入学祝?」

 突然何を聞きだすかと思えば。

 …欲しいものなんて、考えたこともない。

 スマホだって、高校生になると必要になるからと父さんが中学卒業と同時に買ってくれた。だが、特に触ることもなく連絡用として所持するだけだった。

 だから、突然欲しいものを問われても何も答えられない。

「と、くに…欲しいものはない」

「そうかぁ……じゃあ、今度の土曜日どこか出かけるか」

「…は?」

 父さんは昔から俺に甘いところがある。いや、甘いというかしつこいというか…。

 俺が何かに飽きても「そっかそっか」と流し、「次興味を持てる物があったらいいな」と応援してくる。

 多分、俺が当たって砕けてでも何かに挑戦しようとするのは、この人の応援のおかげでもあるだろう。

「出かけるって、どこに?」

「そりゃぁ、ショッピングモールだろ」

「…何買うんだよ」

「お前が気に入りそうなものだ」

「俺が気に入るものねぇ」

 そんなものがあればいいのだが。

 そんなこんなで時の流れは早く。日々ぼーっと生きていればいつの間にか土曜日になっていた。この数日、俺は友達を作れずにただ一人で過ごしていた。

 父さんの車に乗り込み車に揺られながら目的地へと向かう。その間に親子会話は一切なかった。

 ショッピングモールに着けば、俺は父さんの後ろをついて行き適当に歩いて行く。

 まず最初に足を運んだのは服だった。父さんは色んな服を俺に見せてきたが、俺は服に興味はなかった。次に行ったのはスポーツ店。野球だったりサッカーボールだったりと色々と進めてきたが、それにも俺は興味を示さなかった。

 次は書店、その次はCDショップなど色んな所へ連れて行かれたが、俺はどれにも興味を示さなかった。

 ここまで首を横に振って何だが、これでも父さんには申し訳ないと思っている。父さんだって、息子と何か楽しい話をしたいだろうに、俺がこんな性格だから、家の中でも一日中一度も話さないことなんてあるほど、俺は父親と話す話題が何もない。

 努力はしてきたつもりだが、全て水の泡になっている。

 これ以上、俺のことで父さんを振り回すのは良くない。早々に切り上げ家へ帰ろう。そう思っていた。

「そうだ、ゲームはどうだ?」

「…ゲーム?」

「最近はPCでもゲームができるみたいだし、お前の部屋は広いからデカいもんがいきなり入ってもスペースに余裕ができるな!」

 なんか、話が進められている気がする。なんの合いの手も出せず家電店へと足を運んだ。

 パソコンが売られているところへ行くと、大小さまざまなモニターや色とりどりのキーボード、そのほかにもマイクや机、椅子が売られていた。

「おぉ!かっこいいな!今どきはこんな感じでゲームをするのか!」

 俺よりもテンションが高い父さんは椅子に座りキーボードをカタカタ鳴らしている。

「何かお探しですか?」

「あ…」

 PCエリアで立ち止まっていると店員さんに声をかけられた。どうするか、どうせゲームも俺の興味を引かないだろうし、話を進められて買わされても金の無駄に…。

「実は息子の入学祝を買いに来たんですが、気に入りそうなものがなくて」

 父さん?

「それでしたら、こちらのゲーミングパソコンはどうでしょう?高画質で容量が多く、一番多く売られているんですよ!」

「ほぉ、これもかっこいいな!」

 父さん、あんたがやりたいだけだろ…。

「息子様は普段どんなゲームをやられていますか?」

「あ、えっと…」

 この十五年の内にゲームなんてボードゲームやトランプしかやったことない!

「あぁ…な、なにも、触れてきませんでした」

「でしたら、ゲームの体験コーナーがありますので良かったらゲームに触れてみます?」

「え?」

 そんなことができるのか?

「それはいい!是非触れさせてもらいたい!」

 相変わらず父さんは俺の有無を聞かずに店員さんへとついて行く。俺がいないと話は進まないため渋々俺もついて行く。

「こちら、最近人気のゲーム、“WORLD・CREATE”です!」

 あー、なんか最近テレビの広告でよく見かけるあのゲームか。最近と言っても結構前から学校で話題に上がっていたが、まぁ再熱でもしたのだろう。

「こちらのゲームでは、モンスターと戦うだけでなく、自分の好きなように建築ができるゲームなんです!」

 建築。つまり作るのか。工作が苦手な俺は建築とやらは向いていないだろう。

「よかったら一度体験してみてください!」

「ほら康介、体験してみろ!」

「……」

 父さんの押しに負け、俺はまたも渋々謎に座り心地の良い椅子に座る。

「まず、Wきーを押して前へ進んでみましょう」

 言われた通りWキーを押すとキャラクターは前へと進んだ。後ろで「おぉ!」と感嘆の声をあげている父さんの声が聞こえる。

「次にSPACEキーを押してジャンプをしてみましょう」

 言われた通りに押すとキャラクターはジャンプした。後ろで「おぉぉぉ!」と再び感嘆の声をあげる父さんの声が聞こえた。

 そのあとも左右の移動や物の置き方などを教えてもらい、いざ一人で操作することとなった。

「がんばれー、康介!」

 まるで高校受験を受けに行く息子を応援する父だな。最近までそうだったが。

 なんとなく操作をし、物を置いたり敵を倒したり交易をしてみたり。できそうなことはすべてやった。

 やってみた感想としては思ったより夢中にプレイできた。と思う。

「どうだった?楽しいか?」

「ま、まぁ楽しかった…と思う」

「楽しいか!康介一時間もしてたもんな!」

「あぁ、そう…一時間も?」

 一時、え?一時間???あの俺が一時間ゲームに没頭していたのか?

「実は息子は何かを長続きさせたことが無くてですね」

 親子の会話にキョトンとしていた店員さんに事の経緯を話す父さん。聞いた店員さんは納得したのかにっこにこで俺を見つめる。

「でしたら、初心者様に合うお値段が安くゲーム環境が良いゲームパソコンを紹介しますね!こちらへどうぞ!」

 と言い俺たちを再びゲーミングパソコンが沢山ある床をへと連れて行き分けもわからん説明をする。だが、俺とは違い父さんは店員さんから告げられる言葉が分かるのか「なるほど」「んー、こっちの方が質がいいのかぁ」などと相打ちを打ちながら俺の意見も聞かずに画面がデカいモニター、光るキーボード、マウス、ゲーミングPC、ゲーミングデスク、ゲーミングチェア、ヘッドホン、マイク、配線…をお買い上げした。

 これら全て合わせていくらしたかなんて考えたくもない。というか、俺が飽きてやらなくなるなんてこと考え無かったのかよ!

 そう悪態をつくが、実際のところ“WORLD・CREATE”は案外面白かった。

 買った諸々は後日家へ運んできてくれるそう。なので俺らは遅い昼食を食べてから帰路へ着いた。

 その間の車の中は行きと変わらず静かだったが、心なしか空気が少しだけ柔らかかった。




「ゲーム?買ったの?」

 夕食中、父さんが今日買った物を何も隠さずに母さんに全て話した。おいおいそれでいいのかよと思ったが、案外母さんは「ふーん」と言ったきりで父さんと俺を叱りもしなかった。

「店員さんに色々聞いたが、あのゲームはマルチプレイっていうのが出来て、あったこともないネットの人と一緒に遊ぶことも出来るらしいぞ!」

「それって、危ないんじゃないの?」

「大丈夫だろ!何かあったら俺が守る」

「何かあってからじゃ遅いわよ!いい?知らない人と勝手にゲームなんてしないで頂戴」

「わかってる…」

 さっきまで興味なさそうだったのに、すぐにうるさくなった。

 俺は少しだけ母さんが苦手だ。

 いつも小言を言い、俺のせいにしたり、しつこく聞いてくるし。何かあればすぐに態度を変えるところが、俺は嫌いだった。

「ごちそうさま」

 二人よりも早く食事を終えた俺は食器を片づけて部屋へと向かった。

 向かう途中も母さんが何か小言を言っていたが、今日はもう聞きたくなかった。

 部屋へ入ると俺はベッドへと倒れ込んだ。

 今日はいつも以上に疲れた。慣れない場所へ行くのは俺にはハードルが高い。明日、足は使い物にならないだろう。

「…“WORLD・CREATE”か」

 ベッドから立ち上がった俺は鞄に入れっぱなしのスマホを取り出し再びベッドへと寝っ転がる。

 スマホを起動すると、俺はゴーゴルアプリを開いた。そして、検索に“WORLD・CREATE”と入力して調べる。

 検索結果には、“WORLD・CREATE”のじっきょう?動画だったり、攻略方法だったりが出てきた。

 なんとなく、動画を押してみると別のサイトへと飛ばされ、動画が流れた。

 人とは違う、これは…機械音か?がしゃべっており、字幕を見なければ聞き取りづらい。だが、数分見ていると、これはさっき父さんが言っていたマルチプレイというものだと分かった。

「楽しそうだな」

 動画が終わると、自然と口からはその一文が発せられた。

 実際にあっていないのに、どうしてこの人達が楽しそうだと感じるのだろう。

 ゲームって、誰かとやるともっと楽しいのか?俺でも、こんな俺でも、楽しめることが出来るのだろうか?

 嗚呼、来るのが待ち遠しい。

 心躍るとは、こういうことか。

『WORLD・CREATE』

 自由な世界で敵を倒したりオリジナルなものを作ったり、時にはマルチプレイで友達とワールドを探索できる。

 

 知っている人はあのゲームを思い浮かべてください。

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