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第4話:聖女の微笑、闇の教会を照らす

 王城での“改革”から数日。町や城下の民は、私の存在を讃え、歓喜の声をあげていた。

 しかし、まだ完全に正されていないのは――教会の幹部たちだ。


 教会の上層部は、自らの利益のために民を操り、情報を隠し、時には罪なき人々を犠牲にしてきた。

 魔王としての知識が教える――彼らの悪事は深く、巧妙だ。


 神殿の光の中、私は静かに呟いた。


「さて……聖女の力で、彼らの心も浄化してあげましょうか」


 騎士のレオンと共に、教会へ向かう道すがら、私は計画を練る。

 表向きは慈悲深い聖女としての訪問。だが、裏では魔王の裁きの準備が整っている。


 教会の大聖堂。豪華なステンドグラスが差し込む光の中、幹部たちは私の訪問に緊張していた。


「聖女様……ようこそ」

 ひそひそと囁く声。だがその目は、何かを隠そうと必死だ。


 私は微笑む。掌から淡い光を放ち、彼らの目の前で静かに歩みを進める。


「民の苦しみを、知っていますか?」


 その問いに、幹部たちは沈黙する。

 彼らの心の奥底に潜む嘘と悪意を、私の魔王の力が映し出す――光となって、聖堂の空間に浮かび上がる。


 横領、贅沢、無実の罪をでっちあげた記録……すべてが可視化され、幹部たちは声も出せず震える。


「……どうして……私たちの罪が……」

 一人の司祭が俯く。汗が頬を伝い、必死に言い訳を探す。だが光は嘘を見抜く。


「民を苦しめる者には、裁きが必要です」

 私は静かに言った。微笑みは慈悲に満ち、だが目は冷徹だ。


 光が幹部たちを包み込み、彼らの罪が白日の下にさらされる。

 その瞬間、彼らは恐怖に声を震わせ、涙を流す。民の前に姿を晒す覚悟があるかと問うと、答えは当然――ない。


「……聖女様……許してください……!」


 私は手を下ろし、光を消す。

 だが、許しは与えない。慈悲深い微笑みで民を癒す一方、裏では罪を裁き、権力を正しい者へと移す。


 教会の幹部たちが民衆に罪を告白し、財産や権力を返還する様子を、外から見守る民の歓喜。

 彼らは理解していない――この“聖女の奇跡”は、魔王の策略そのものだということを。


 神殿に戻る夜道、レオンが静かに尋ねる。


「聖女様……その冷徹さ、怖くないんですか?」


 私は夜空を見上げ、微笑む。


「怖くないわ。悪は放置できない。でも、無駄に滅ぼすのはつまらない。

 だから、私のやり方で、世界を作り変えるの」


 掌の光が微かに揺れ、銀髪が夜風にたなびく。

 外からは聖女、内側には魔王――

 今日もまた、世界の形を変える一歩を踏み出した。

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