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第2話:聖女の微笑、魔王の裁き

 神殿を出ると、町の人々が待ち構えていた。彼らは私の姿を見るやいなや、ひざまずき、口々に「聖女様!」と叫ぶ。

 自然と笑みがこぼれる。これもすべて、私の計画の一部だ。


 ――まずは小さな町から始めよう。腐敗した貴族や教会の影響を最小限にして、人々に希望を取り戻す。


 そのとき、町の中央広場で騒ぎが起きた。

 「また税金を不当に取られた!」

 「町の井戸も汚染されているのに、誰も手を打たない!」


 人々の叫びに耳を澄ませ、私は手を翳した。掌から淡い光が漏れ、街角の老人や子供たちを包む。


「大丈夫、もう安心して」


 病や怪我だけでなく、日常の不幸にも光は届く。人々の表情が明るく変わり、歓声があがる。

 しかし、裏で私は別のことを考えていた。


――この町を牛耳る貴族、そして教会の腐敗役人。奴らには、私の“別の力”を見せてやる。


 まず、税を横領していた町長の屋敷へ向かう。

 表向きは穏やかに笑みを浮かべ、聖女として町長に接触する。


「町の人々の苦しみ、少しはご存知でしょうね?」


 町長は汗をかき、言葉を詰まらせる。

 私は手を軽く翳すだけで、心の中の嘘と悪意が可視化される。――魔王の力で“悪意の証拠”を映し出すのだ。


「これは……どういう……」


 町長の胸中に、横領や不正行為の記憶が鮮明に映る。目を見開く町長。

 私は微笑みながら囁いた。


「これを、町の人々に見せましょうか?」


 その瞬間、町長の屋敷前に集まった群衆の視界に、横領の証拠と彼の悪行の全貌が映し出される。

 人々は怒りと悲しみに震え、町長の言い訳はすべて消え去った。


「聖女様……!」


 だが私は、冷静に見守るだけ。言葉は不要だ。

 光で人々を癒し、悪を映し出す――それだけで、世界は自然に正される。


 町長は震えながら、すべてを認め、謝罪した。

 そして町の運営は、正しい手順で人々に返されることになった。


――簡単すぎる。滅ぼすより、ずっと楽しい。


 その日、町では「聖女の奇跡」として私の名前が広まった。

 しかし、騎士や使者たちはまだ、私の本当の力に気づいていない。

 彼らにとって私は、ただの癒しの少女――無自覚チートな聖女なのだ。


 日が暮れる頃、私は神殿に戻り、手のひらの光を消す。

 鏡に映る自分の顔を見て、静かに微笑む。


「ふふ……今日は小手調べ。明日はもっと、大きな腐敗を……断罪してあげる」


 その目には、魔王としての冷徹な光が宿っていた。

 外からは慈悲深き聖女、内側には千年前の魔王――

 世界を変える少女の物語は、ここから本格的に動き出す。

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