表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

第1話:目覚めの聖女、裏に魔王あり

 目を開けた瞬間、天井の白い光が眩しくて、私は反射的に手で顔を覆った。


 静かな祈りの声が響く。どうやらここは神殿――聖なる場所らしい。


「聖女様が……目を覚まされた!」


 わあ、と歓声が広がる。見知らぬ人々が私を取り囲み、口々に“聖女”と呼ぶ。手を差し伸べて私を迎えようとする者もいる。


 私はゆっくりと身を起こし、微笑んでみせた。


「……聖女?」


 その言葉に胸の奥がざわめいた。


――愚かだな。私は聖女なんかじゃない。


 千年前、世界を恐怖で支配した“魔王”――その記憶と力が、確かにこの胸の奥に眠っている。

 今の私にとって、癒す力も戦う力も、ただの手段に過ぎない。だが、人々が望むなら、少し演じてやってもいい。


「――はい。私は……聖女です」


 その瞬間、掌から柔らかい光が溢れ、病に苦しむ人々の身体を包んだ。

 痛みが消え、血色が戻り、驚きと歓喜の声が神殿内に広がる。


 ――面白い。人々は私を崇め、私はそれを利用できる。


 その時、近くにいた神官の一人が、目を丸くして私を見つめた。


「聖女様……その力……まさか、奇跡を……!」


 私は小さく笑った。魔王の知識が頭をよぎる。癒しの力だけでなく、戦術、政治、情報操作――何でもできる。


 ――滅ぼすより、作り変えたほうが面白い。

 腐敗した貴族や教会、偽善に満ちた正義を、私の手で塗り替えてやろう。


「……まずは、この神殿での“お披露目”かしら」


 神官たちは慌てて私の周りに立ち、計画や儀式の手順を説明しようとした。

 私は聞きながら、目を細め、頭の中で次の一手を練った。


――この神殿を拠点に、情報網を整え、まずは小さな町の腐敗を正す。

 それができたら、次は王城、そして……国全体。


 人々は知らない。私の正体も、千年前の魔王の力も。


 私はただ、微笑みながら光を振りまき、人々を癒す“聖女”。

 だが裏では、冷酷に計算された“魔王の策略”が回っている。


 目の前で、老人の病が完全に癒え、涙を流して喜ぶのを見た。

 私の胸にも、ほんの少しの喜びが湧いた。


――ふふ。滅ぼすのは簡単だった。

 でも、作り変えるのはもっと楽しい。


 神殿の外には、すでに騎士や使者たちが私を迎える準備をしている。

 彼らは私の表の姿しか知らない。無自覚チートな聖女の力に、驚き、崇めるだけだ。


 ――ふふ、今日から世界は私の手のひらの上。


 手のひらに残る光を見つめ、私は小さく呟く。


「私にできないことなんて……ないんだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ