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第4話 最初の犠牲者

デブリ帯通過から五日。

 表面上は落ち着きを取り戻したかに見えたが、船団の空気は張り詰めていた。


 廊下に響くひそひそ声。

「太平洋船団に裏切り者がいるらしい」

「冷却系を壊したのも、やつらの仕業だ」

「このまま一緒に航行して大丈夫なのか?」


 名指しされたのは、今も医療区画で治療を受けている田嶋だった。

 彼は事故当時に重傷を負い、監禁同然の隔離室で横たわっている。

 だが、その「無実」を信じる者は少なかった。


「……誰も彼を見ようとしない」

 艦橋に戻った蓮は、独りごちた。

 真壁は工具を弄びながら、苦い笑みを浮かべる。

「人は一度疑いを持てば、証拠がなくてもそれを信じ込む。宇宙に出ても変わらんさ」


爆発事故


 その日の夜、艦尾区画で突如爆発が起きた。

 警報が鳴り響き、赤色灯が艦内を染める。

 蓮と真壁が駆けつけた時には、既に隔壁が閉じられ、白い冷却ガスが漂っていた。


「負傷者三名! ……一人は……」

 隊員が言葉を詰まらせ、視線を落とす。

 瓦礫の下で、若い作業員が動かなくなっていた。

 先発団の航路において、初めての犠牲者が出た瞬間だった。


 沈痛な空気が漂う中、真壁が端末を睨みつける。

「アクセスログを確認した。……また田嶋のIDが使われてる」


「馬鹿な、あいつは医療区画から出ていない!」

 蓮は叫んだ。だが事実として、ログには確かに田嶋の名が刻まれている。


疑念の連鎖


 翌日の船団会議。

 マリーナ(大洋連合代表)は声を荒げた。

「もう限界だ! 太平洋船団は内部の管理すらできていない。これ以上、我々の命を危険に晒すのか?」


 エリザ(連邦アーク代表)も追随する。

「航路調整の主導権は我々が引き取るべきだ。太平洋船団に任せるのは無謀だ」


 非難の矛先を一身に受ける太平洋船団。

 蓮は必死に反論する。

「待ってくれ! 田嶋は動けない状態だった。誰かが意図的に彼のIDを利用しているんだ!」


 しかし、証拠はない。

 会議場の空気は冷えきり、オオトリ船団長でさえ沈黙を守るしかなかった。


遺体の検査


 犠牲者の遺体は医療班に送られた。

 検査に立ち会った真壁は、顕微鏡映像を見て息を呑む。

「これは……」


 遺体の体内から、ごく微細な金属片が発見された。

 粒子は地球の技術では合成不可能な比率で構成されており、しかも破片は神経組織に沿って埋め込まれていた。


 医療班の主任が蒼ざめながら言う。

「爆発の衝撃だけでは説明できません。……これは“仕込まれていた”痕跡です」


 真壁は深く息を吐き、蓮にだけ聞こえる声で囁いた。

「……地球のものじゃない。外から来てる」


広がる恐怖


 蓮は艦橋に戻り、窓外の星々を見上げた。

 宇宙は静かだ。だがその静けさが、かえって恐ろしい。

 船団の中には内部工作員が潜んでいる。

 そして、外の虚空には“未知の影”が手を伸ばしてきている。


「……最初の犠牲者は、警告だったのかもしれない」


 蓮の呟きは、誰にも届かないまま星の闇に消えていった。


✦ 第4話「最初の犠牲者」 完


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