消耗品
私はキャンプ場の管理人。
此処は海にも山にも近いが周囲に民家が無く穴場のキャンプ場、欠点を言えばスマホの電波が届かないって事ぐらい、だからそれでも良いって言う、県外の懇意にしているスポーツ店やアウトドアショップから紹介してもらった人たちだけを受け入れている。
全国の大学や高校が夏休みに入った所為か、キャンプ場でテントを張っているグループのほとんど全員が青春を謳歌している大学生や高校生の若者たち、違うのは社会人なりたてらしいグループが一組だけ。
その張られているテントを1つ1つ訪ねて、キャンプ場でのルールを説明して回る。
ルールと言っても、トイレは綺麗に使うとかゴミは分別して所定の場所に出すとかと、他のキャンプ場のルールと同じようなもの。
違うのは民家から離れているから少しぐらい騒いでも大丈夫だよって事ぐらい。
フム、今日キャンプ場を利用するのは約30人の若者か。
夜になり私は早々と就寝する。
夜中、キャンプ場の方から「たすけてー!」って悲鳴が響いて来たけどそんなの何時もの事。
気にすることも無く眠り続け、朝、朝日が昇る前にキャンプ場に行く。
キャンプ場にキャンプ場を利用していた若者たちの姿は皆無。
キャンプ場に隣接する駐車場に県外のスポーツ店やアウトドアショップのライトバンやワゴン車が次々と停車し、降りて来た男たちが貸し出していたテントや利用していた者たちの私物を集め車に載せて行く。
キャンプ場にいた若者たちは全員、我が祖国、大日本皇国国防軍に強制徴兵された。
我が祖国は此の世界とは少し離れた並行世界にある。
第二次世界大戦に勝利した我が祖国は今、ドイツ帝国と最終世界大戦の真っ最中。
消耗品の兵士は幾らいても足りない。
だから我々は足りない兵士を並行世界の異世界から動員しているのだ。
15〜6歳から24〜5歳の若者を徴兵しているのは、幾ら消耗品とは言え前線に出した途端に戦死されたら困るから。
これぐらいの若者たちなら俊敏でそれなりに体力があるから、此の年代より上の者たちより生き残る可能性が高いのだ。
私はテントや私物を回収し若者たちが乗って来た車と共に駐車場から出ていく、県外のスポーツ店やアウトドアショップのライトバンやワゴン車の群れに手を振り、キャンプ場と駐車場の門を閉めた。