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ハーフエルフ



「こ、殺さないでください……」



そのハーフエルフらしき少女は、怯えた声色でそう言った。



この少女は、盗賊に攫われてきたのだろうか。


ハーフとは言えど、エルフの奴隷は相当な値段で取引されるはずだ。



今のセリの風貌は、傷まみれの身体に返り血を浴び、血に染まった剣を手に持っている。


どう考えてもまともには見えない。



こう怯えられるのも必然だろう。




『殺ってしまうんですか?』



「別に……そんなことはしない」




見るからに罪のない他人を殺してしまうのは、どうなのだろうか。


そもそも、セリには目の前の少女を殺す気は湧いてこなかった。





側から見れば、レヴィンとの会話は一人でぶつぶつ喋っている様に見える。


それも相まって、より一層狂人染みてセリが見えているだろう。





セリは、少女に向かって剣を振り下ろす。



「い、いやっ……!」



少女は恐怖のあまり目を瞑る。




だが、セリが斬ったのは少女を繋ぎ止めていた足の鎖だった。



「へ……?」



「別に、私は貴方に危害を加えるつもりはない」



セリは少女に声をかける。



「あ、あの……その、ありがとう、ございます……」


「別に感謝しなくても良い。そんな大層なことしてないし」



セリはそういい、馬車の荷台から来た方へと戻ろうとする。



「あ、あのっ」



その時だった。


背後から、少女が声をかけてくる。



「名前を教えて貰ってもよろしいですか?」



「……名前は、セリ」



セリは、そうとだけ答えた。






✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎






それから、少女はセリの跡を数歩離れながらも後を付いてきた。




焚き火の周りには、用意していたスープやパン、干し肉が用意されていた。


盗賊達が、これから食べようとしていたようで、全く手はつけられていない状況だった。



セリは、辺りに置かれていた雑多な椅子に座り、置かれていた食事に手をつける。




「んっ、美味しい」




何年ぶりのまともな食事だろうか。



監獄では、ろくなものは食べさせて貰えなかった。表情にはあまり出さないが、感動する程に美味しく感じた。




「……あの、盗賊達は……?」


「全員私が殺した……そんなことより一緒に食べよう」



一人だけ食事にありついて、もう片方がただ呆然と見ているだけと言うのは気が引ける。



セリは、近くに座るように催促すると、彼女も側の椅子に腰をかける。



「あっ、あの……な、名乗り遅れました。フィリアと言います」



どうやらこのハーフエルフの少女の名は、フィリアと言うそうだ。



「……フィリアはなんでこんな所で、盗賊に捕まっていたの?」



セリがそう問いかけると、フィリアと名乗った少女は、自分の今までの経緯を話してくれた。







フィリアは、人間の父とエルフの母の間に生まれた。



だが、エルフの母は事故で亡くなってしまい、父はやがて再婚。


邪魔になったフィリアは、高値で売れるハーフエルフと言うこともあり、奴隷商売り渡されてしまったそうだ。



しかし、商館に忍び込んだ盗賊達に攫われて今に至る――と言うわけらしい。





「と言うわけで、セ、セリさんが助けてくれなかったら、酷い目に遭ってました……そ、その、ありがとう……ございます」


「別に初めから助けようと思ってた訳じゃないし……」


「さ、セリさんは、なんでこ、こんな所で?」




フィリアは純粋な気持ちでセリに問いかけた。



セリ的には答えたく無かったのだが、自分もフィリアの経緯を聞いてしまったのだ。


これで自分は言わないと言うのは、筋違いだろう。




 


セリは自分のなり行きについて語った。



母が殺され、その相手に復讐するために今生きていると。



義理の母が神人であること、女神と契約し、自分も神人になったこと。


そして復讐するべき相手が他の神人全てであることは隠しながら説明した。




「す、すいません……言いにくいことを聞いてしまって」


「それは、私もだから気にしないで……私も変な事を聞いてごめん」




それから、暫くの静寂が続いた。


その静寂を切り裂いたのは、フィリアだった。




「あの、私……見ての通り行く場所も生きる術も持っていません。迷惑は承知なのですが、セリさんの側に居させてはもらえないですか?」



フィリアはそう言ってきた。



つまり、今後セリと行動を共にしたいと言う事なのだろうか。



「でも、私といたら危険な間に合うと思う」




セリが今後、敵対する相手は頂上の存在。引いては、人類全てを敵に回しかねない。



「でも近くの町まで送っててあげる。こんな酷い身体の私には無理だろうけど、貴方なら生きてく術なんて直ぐに見つかると思う」



しかし、意図せずとは言え、フィリアを助けてしまったのだ。


だったら、もう少しくらい手を差し伸べるべきだよう。



「そ、そうですよね……近くの町――ロ・ランブルですかね」



フィリアは少しだけ不安そうな表情を浮かべた。


確かにここから一番近いのは、ロ・ランブルと言う都市だった筈だ。


この都市は、そこそこに人口が多く、悪い噂も聞いたことは無い。



「……なにか、不安なことあるの?」


「い、いえ……な、何もありません。送り届けて貰えるだけでもありがたいです」



とは言ったものの、フィリアの表情には不安な色が伺えた。

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