表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/49

決戦



セリは、道路を真っ直ぐ歩いていく。



やがて、セリの眼前には人混みが視界に入った。





人々の動揺と響めきが、セリの耳に不快にこびり付く。



中央広場は、人々がひしめき合い奥進めるようなスペースはない。



『これだけの人がいては、進めそうにありませんね……』



レヴィンはそう言った。



ならば、どうすれば良いかなど決まっている事なのに。



セリは、前方一直線に影を伸ばした。



影は、その上にいた民衆を瞬時に飲み込み、広場の中心部まで真っ直ぐ広がる道が出来上がった。



食いこぼした血痕が赤いカーペットのように一直線に敷かれていた。


それは、まるでセリを歓迎するかのように、中央にある燃え尽きた組み木まで案内していた。




『一つ邪険な事を聞きますが……どんな気分ですか?』



「……なんとも」




ここにいる人間は、カルディナに暴言や暴行を加えていた加害者だ。



そんな奴らが何十億人死のうが心は痛まない。



『満点の返答です』



レヴィンは楽しそうな声色で言う。




周辺にいた民衆達は、理解が追いつかない状況にパニック状態に陥った。



我先にその場から離れようと、人の下に人が下敷きになる。


それが何層にも重なり、何百人もが圧迫死していく。




「「焦るな!!」」



その時、聞き慣れた不愉快な声が周辺に響き渡った。



その声の主は、あのストレイル本人だった。



恐らく、音声拡散魔法を使っているのだろう。広場中にその声が鮮明に広がった。




「「ここにはこの俺がいる。今すぐその元凶にとどめを刺す!」」



そう不愉快な声の持ち主――ストレイルはそう宣言した。




それを聞いた、民衆達は動きを止める。




「そ、そうだ……俺らには神人がいる! ストレイル様がいるんだ!」


「そ、そうよ。ストレイル様が、あの化け物を殺してくれるわ!!」




民衆達は、徐々に歓声を上げる。その歓声は伝播して少しずつ大きくなっていく。



「あぁ……うるさい。うるさいなぁ」



不愉快だ。それ以上その男の名前を聞くと頭が、おかしくなってしまいそうだ。





その、聞き難い歓声の中をセリは進んでいく。



「くそ魔女っ、死ねぇ!!」



何を勘違いしてか、民衆の中から一人の男が飛び出して襲い掛かってくる。



「邪魔」


「ううっ……ぐはあぁぁ!!!?」



だが、男は影に瞬時に飲み込んでしまう。



それ以降、セリに襲いかかってくる愚者はもう居なかった。






広場の中央に到達すると、セリは最も見たくもなかったものを見てしまった。




それは、変わり果てた師匠にして母――カルディナの慣れ果てた姿だった。

 



その姿を見て、思わない様にしようと心に決めていたはずだった。



筈だったのに。



「……うっ……お、母さまっ……なっ、な、んで……」



それを見てしまったセリは、何かが崩壊するに涙が溢れてくる。



「なんで、なん、で……なん、で……なんで、なんで!」



カルディナとの楽しかった記憶――今までの生活の全てが鮮明に脳裏に焼き付いてくる。



このまま泣き喚いて、泣き崩れて、どうにかなってしまいたい。


しかしら今の自分にはそれすらできない。




「なんで生きてんだよ。気持ち悪いなぁ」



その時だった。



正面から、罵声を浴びせてくる男がいた。



そう、ストレイルだ。




「お前は、お前は絶対に殺す! 私から、お母さまから全部奪ったお前達だけは……!!」



涙を拭ったセリは、これ以上ない殺意をストレイルに向ける。



「神人の俺を殺せると!? 笑わせるな、出来損ない。お前がなんであろうと、足元にも及ばないんだよ!!」



ストレイルは、そう言うと背後に無数の魔法陣が出現する。



「跡形もなく消してやる。塵も残さねぇ!!」



そう邪悪な笑みを浮かべるストレイルを前に、セリは影でカルディナだった消し炭を取り込んだ。



「お母さまは、誰にももう……奪わせない」



カルディナをもう誰にも奪われたくない。


セリは、そう思いながらもカルディナをその身に取り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ