VS冒険者-3
「食ったとはどう言う意味だ!?」
ラグランはセリに問いかける。
「そのまんまの意味……別に深く説明する義理はない」
正確には、影で取り込んだのだが、同じ様な意味だろう。
恐らく影を使わなくても、物理的な捕食でも同じ様に取り込む事が可能な筈だ。
「意味が理解できないが……尚更、生かしておけない存在って事はわかった」
ラグランは、アサラトに別に情があるわけでも何でもないが、この様な正体不明な敵対存在を放置しておくわけにはいかない。
「火球!」
その時、グリアから火炎の塊が射出される。
セリはそれを咄嗟に影で塞ごうとする。
「聖域流布!」
しかし、それと同時にリユスの神聖魔法で影は、照らされた闇のように消えてしまう。
「くっ……!」
セリは咄嗟に、バックステップで火炎を避けようとする。
だが、燃え盛る火は避けきれず、身体の一部が焼ける。
「回復」
セリは咄嗟に回復魔法で熱傷を修復させる。
だが、その隙ににレットとラグランが同時に距離詰めてくる。
「四撃!」
ラグランの双剣が八つの斬撃を放ってくる。
「四撃っ!!」
セリは、アサラトから模倣した全く同じ剣技を発動し、斬撃と斬撃を衝突し合わせ相殺する。
だが、ラグランの方が手数が多かった為か、相殺しそこなった斬撃が、セリを襲う。
「うっ……!」
セリは何とか避けようとするが、二発の斬撃が、セリの横腹を抉り、頬を掠めた。
「閃斬」
レットがそれに続くように、剣技を発動させる。
レットの身体は、一時的に体重が無くなるように軽くなり、凄まじい速度でセリを斬りつける。
その速さは、魔法で身体能力を大幅に増加させたセリですら、見切るのは難しく心臓当たりをを剣で貫かれてしまう。
「いっ……! よ、よくも……」
セリは反撃しようとするが、レットは剣を即座に抜いて後方に下がる。
「雷撃」
その瞬間、グリアの雷属性の魔法を放たれる。
セリの頭上から、滝の様な電撃が降り注ぐ。
「っ……!」
セリは凄まじい衝撃と共に、視界が真っ白になる。
セリは、気づけば地面に倒れ伏せていた。
「うっ……いや、なん……」
上手く言葉が発せない。
苦しい、息ができない。
辺りは自身の焼ける匂いと、地面いっぱい赤い血が広がっていた。
何故だ。
まだ、復讐も始まっていないのにまた死んでしまうのだろうか。
悔しい――折角生き返って復習する機会を得たのにこの様だ。
もう、身体のダメージが大きすぎてそもそも回復魔法も使えない。
影も神聖魔法の前に無効化されてしまう。
どうしようもない。
「冒険者で言えば、一級以上特級未満と言ったところだろう。少なくとも一体一では勝ちようはないが、四人の連携の前では敵ではないな」
グリアは、そう言い捨てた。
「では、とどめです。岩弾」
そう言ってきたのは、リユスだ。
彼女が魔法を詠唱すると、石の塊が弾丸の様に射出され、倒れ伏せていたセリの頭部に直撃する。
セリはそれにより意識が無くなった。
と言うよりは、頭を潰されて死んでしまった。
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「はぁ……死んでしまうとは情けないですね」
次に目を覚ますと、そこは例の真っ白の何もない空間だった。
「死んだの……?」
「えぇ、心臓を潰され、頭も潰されたみたいです」
まだ何も果たせていないのに、終わってしまったのだろうか。
「どうにか、もう一回蘇れないの?」
「うーん、私にはもう一度復活させれる程の力残ってません」
「そんな、まだ何も始まってないのに……!」
そうだ。まだ何も成し遂げていないのだ。
カルディナを取り返す事も、神人達に復讐をする事も全て。
「ひとつだけ方法はあります」
レヴィンはそう微笑を浮かべた。
「貴方の魂の一部を消費し、貴方を復活させれます」
「できるなら何でもいい。やって」
セリは即答だった。
「あら、全く悩みませんでしたね。つまるところ、復活したとして相当寿命は縮まりますよ? 恐らく十年は軽く」
「このまま死んだら、元も子もないじゃない?」
「まぁそうですが……では、話は変わりますが、このまま消えてしまった方が楽ですよ。今更聞くのも遅いですが、この地獄の道を突き進むつもりですか?」
「私は幸せになりたいわけでも、救われたい訳でもない。ただあいつらが許せないだけ……あいつらを殺す為なら、自分をどこまでも苦しめられる覚悟はある」
セリはそう言い切った。
それを聞いていたレヴィンは、楽しげな或いは嬉々とした表情を浮かべる。
「そうです、そうこなくては面白くありません。私の人生の最後にもっと面白い物を見してください」
レヴィンは、そう言いセリの額に手をかざす。
「では、貴方の魂を消費してもう一度甦らせます。相手は貴方が死んだと油断しているので、その隙を突くのが最善でしょう」
「わかった。そうする……」
次の瞬間、セリの視界が再び暗転した。