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8,冒険者たちとの邂逅

 

地面に倒れている女性は腹部が大きく切り裂かれているけど、中身は出てないから深くはなさそうだ。

あ、そういえば……確かログボでポーション出たよな?

ここで使わないでいつ使うんだって感じだ。


「あの、俺ポーション持ってます。良かったら使って下さい」


「本当か!?助かる!」


リーダーっぽい紺色の髪の男性がポーションを受け取って女性の腹部にかけた。

ぽぅ、と患部が光って傷が塞がっていく。

良かった、Bランクだと骨折レベルは治せないからもし中身が出てたら治せなかったと思う。


「これは……Bランク以上のポーションか」


ぽつりと呟いた声が聞こえた。

地面に倒れている女性の意識は戻らないが、傷は塞がったので安静にしていれば大丈夫だろう。


「あのままだと確実に全滅していた、助けてくれて本当にありがとう。ポーションの代金は王都に戻ったら必ず支払う。でもまさかノームに助けられるとはな」


ノノは彼らに対しては無関心でオーガを収納していた。

チラッとしか見てないけど、オーガは3メートルはある巨体でめっちゃ強そうだったな。


「ノームが人助けすることが珍しいのか?」


「そりゃあそうだろう。精霊は気まぐれだし、エルフ相手ならまだしも基本的には人間には無関心だ」


そうだろうか?

結構俺のことを気にかけてくれるし、オークの村の件もそうだ。

無関心なら王都が襲われる心配もしないんじゃないだろうか。


「ぼくは人間にやさしいノーム。精霊にもいろいろいる」


「そうだよな」


「そういうこともあるのか」


男性は納得したようだ。

落ち着いた彼らから自己紹介を受けた。

彼らはCランク冒険者パーティ『レッドラビット』。

王都に向けて帰還している最中、すぐ傍にオーガが湧いてしまった。

なんとか逃げようとしたが追いつかれてしまう。

このまま逃げたら王都にオーガを連れていくことになるためにやむなく戦闘を開始したが、本来オーガはBランクのパーティが戦うランクの魔物。

Cランクパーティの彼らには荷が重く、じり貧で攻撃を受けることしかできなかった。


魔法職の女性の魔力が尽きてしまったところにオーガのヘイトが向かい、攻撃を受けそうになったところを剣士の女性が庇った。そのせいでお腹に大きな傷を負ってしまったのだと言う。

もうダメだ、やられる!と思ったところで颯爽とノノが登場。

土の槍が次々と降り注ぎ、オーガの体を貫いて倒した。


ということらしい。

紺色の髪の男性はリーダーのアルノ。剣士。

未だ意識が戻らない緑色の髪の女性は剣士のイノ。

栗色のロングヘアの魔法職の女性はウルカ。

赤髪の男性は斥候のエノン。


俺たちも自己紹介を終えて、一緒に王都に戻ることになった。

彼らはここでオーガが湧いたことを冒険者ギルドに報告しなければならないらしい。

意識が戻らないイノはリーダーのアルノが背負って歩く。

周囲の警戒は俺たちの役目だ。

とは言っても俺はまだ出現型が湧く時の魔素の歪みというものが分からないのだけれど。


人1人背負っているから少し歩みは遅くなったけど、どうにか門が閉まる前に王都に戻ることができた。

もう陽が暮れかけているが、彼らはイノを宿に送ってから冒険者ギルドに報告に行くそうだ。

明日の朝冒険者ギルドで会う約束をして、宿に向かう『レッドラビット』の面々を見送った。


「オークは明日にするか?」


「オークをどうするの?」


あ、オークを売りに行く話はしてなかったか。


「オークの村を収納しただろ?あれ売ろうと思って」


そう言うと、ノノは難しい顔をした。


「売るならすこしだけにした方が良い。大量に売ったら、オークの村があったことがバレる。そうしたらどうやってあの規模のオークの村をたった2人で殲滅したのか問われる。ナツキのスキルのことは隠した方が良い」


「あー、そうか……」


「森まで行ったって言えば1日で5体ぐらいは狩れるから、出すならそのくらい」


「分かった。明日の朝1で売りに行こう」


今からギルドに行くと混んでるだろうしな。


「……あの、ナツキは今日はあの部屋で寝る?」


「ん?そうだな、宿は金がかかるし」


「ぼくもいっしょに寝ていい?」


「あー、別に良いよ」


護衛してくれてるんだし、一緒の部屋で寝るぐらい別に良いよな。

ノノの宿を引き払ってから飯を食いに行くことにした。

今日は王都で人気だと言う食堂に行くことにしよう。


食堂の中に入ると、夜ご飯を食べに来ている客がたくさんいた。

客層としては家族連れが多く、酒を飲んでる人はあまりいない。


「はいはいてきとうに座ってー!」


空いてる席に座ると、目まぐるしくくるくる動いているウェイトレスが注文を聞きに来る。


「今日はモウモウの肉の煮込みかペカーバードのステーキよ。どっちにする?」


「じゃあ煮込みで」


「ぼくも」


「はーい!ちょっと待っててね!」


モウモウもペカーバードも聞いたことないけど、魔物なんだろうな。

運ばれて来たのは煮込みと山盛りのパンと野菜の付け合わせ。

モウモウの煮込みは香辛料の入ったスープで煮込まれていて柔らかくて美味しかった。

パンは黒いギッシリしたパンだけど、煮込みの汁につけて食べると中々美味い。

野菜の付け合わせは軽くソテーしてあって良い感じだった。


「人気だって言うのも納得の味だったな」


「ナツキの食べさせてくれたごはんの方がぼくは好き。からあげ」


帰路につきながら話す。

ノノはすっかり【異世界商店】で購入できる食事の虜だな。

ちょっと路地裏に入って誰も見ていないことを確認。

ノノと一緒に【マイルーム】に入った。


「ノノも風呂入るか?」


浴槽にお湯を溜めながら尋ねる。


「おふろ?貴族が入るものだよ」


「この部屋にはあるんだよ。俺は前は毎日入ってたぞ」


「ナツキは貴族だったの?」


「いや、平民だけどさ。さ、脱げ脱げ」


さっさと脱がせて服に【クリーン】。

洗濯する必要が無いのは楽だよな。

シャンプーやボディーソープの使い方を説明して裸の付き合いを楽しんだ。

ノノの肌は滑らかな質感ですべすべしていてタオルで肌を洗うと傷つきそうだな。

体は作り物って言ってたけど、どうやってこれ作ってるんだろう。


半ば強引に風呂に入れたのは理由がある。

ノノの性別を確かめるためだ。

チラッと見てみたけど男である証はちゃんとついてた。

細かいところまで作り込んでるな。職人のこだわりを感じる。

っていうかこれで女の子だったらどうしようかと思った。

セクハラじゃ済まされないぞ。


………

……


異世界生活6日目


今日の【ログインボーナス】はっと。

ん?これ……スマホだ。俺のじゃないけど。

【インベントリ】に入れて簡易鑑定。


『スマホ(異世界仕様)。

 地球のネットに繋がるスマホ。魔力充電式』


おお、ネットが見られるようになるのはありがたいな。

俺が持ち込んだスマホはもちろんネットが繋がらなかったし、もう充電も切れて時間も見れなくなってたんだよな。

でもネットに繋がったからって何ができるんだろう。

料理レシピ調べるぐらいしか役立てないかもしれない。


スマホを立ち上げてみると、何故か俺のスマホに入れていたアプリが全部入っていた。

あー、痒いところに手が届く。

魔力の変換効率が良いのか、俺の少ない魔力でも充電することができた。


朝飯食って身支度を整えて冒険者ギルドに向かう。

『レッドラビット』の面々と会う約束をしているし、ついでにオークを売りに行く。


「ポーションの代金を払うって言ってたけど……よく考えたらそのまま払わずに逃げられる可能性もあるんだよな」


「だいじょうぶ。精霊を欺いたら大変なことになる。精霊は約束は必ずまもるし守らせる」


「精霊が味方って心強いな」


朝の早い時間は避けたために冒険者ギルドの中は人が少ない。

併設されている酒場の方に座っていたリーダーのアルノと斥候のエノンはすぐに見つかった。


「よう、昨日ぶりだな」


「おはよっす」


手を上げて挨拶してくれる2人。


「おはよう」


「ん」


こちらも手を上げて挨拶し返した。

対面に座って果実水を注文する。


「改めて昨日は本当にありがとう。俺たち全員生きているのは君たちのおかげだ」


机に手をついて頭を下げられる。

なんかむず痒い感じがするな。


「助けてもらったお礼と譲ってもらったポーションの代金を用意した。足りなかったら言ってくれ」


そう言ってジャラッと硬貨の入った袋を差し出された。

ザッと数えてみたけど、だいたい75万ぐらい入ってる。

あのポーションはBランクの最高品質だからあれだけで100万はするはずなんだけど……すぐ使ってたから品質までは彼らは知らないんだよな。

最低品質なら50万だったはずだし、そもそもあのポーションはログボでもらったやつだから元手はタダ。

それプラス助けたお礼っていうことならこの金額で妥当だろう。


「この金額で良いよ、ありがとう」


「良かった。いや、実は4人の貯金をかき集めたんだ。足りなかったらどうしようかと」


むしろ元手タダの物が75万に化けたと思えば悪くない。

いや、オーガを倒したのはノノだから半分ぐらいはノノの分か。

後で分けておこう。


今は宿でウルカがイノの看病をしているらしい。

表面上の傷は塞がったけど失った血までは戻らないそうだ。


彼らの身の上話を聞いたり少し雑談を挟んで、彼らは宿に戻って行った。

今日はゆっくり体を休めるそうだ。

 


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