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7,マイルーム

 

「ナツキ、甘い物買いたい」 


ノノはちょくちょく休憩中にマドレーヌやシュークリームを食べていた。

今日渡した分はもう食べてしまったんだろう。


「この前買ったマドレーヌももう無くなったのか?」


「なくなる前にもっとほしい。ストックしときたい」


「それは良いんだけど、シュークリームやマドレーヌはあんまり日持ちしないぞ。クッキーは未開封のままだったら結構もつけど」


「ぼくの収納魔法は時間の経過がゆっくりになる。ちょっとはだいじょうぶ」


「そっか。じゃあマドレーヌとクッキーとシュークリーム出すな」


マドレーヌ、クッキー、シュークリームを30個ずつ購入して渡す。

1つ5000ガルで買ってくれるから45万の収入だ。


「たくさん買ってくれてるけど、お金は大丈夫か?」


「使うことあんまりなかったからお金はもってる。でもちょっと減ってきた」


「……護衛代払おうか?買ってもらったお金で払うことになるけど」


永久機関だな。


「ううん、稼ぐ手段はあるからだいじょうぶ」


「そうか?なら良いんだけど」


【クリーン】で綺麗にして野営……ではなく、今日はこっちだ。

まず俺だけ試してみると言ってスキルを使った。

スキル【マイルーム】!


シュンッ、と一瞬で景色が切り替わり、次の瞬間には真っ白な部屋にいた。

床も壁も天井も白くて、広さは1人暮らしの大学生が住むワンルームって感じだ。

キッチンがついてるな。水もちゃんと出る。

他の扉の先はトイレとお風呂があった。

キッチン、トイレ、ダイニングテーブルと椅子、風呂。

玄関にあたる場所には扉があってそこから出られるようだ。


一通り確認したので外に出ると、ノノは俺が消えた場所をじーっと見ていた。


「おかえり」


「ただいま。中は安全そうだったぞ」


今度はノノの手を繋いで一緒に【マイルーム】へ飛んだ。

ぱちくりと目を瞬かせて辺りを見回している。


「ここがスキルの中?すごい」


ぐるっと見回して満足したようだ。

そろそろ飯にするか。

椅子に座って【異世界商店】をぽちる。

今日はから揚げ定食だな。

ファミレスってメニュー豊富で良いよな。


手を合わせていただきます。

ザクッ、じゅわっ

うまっ、くぅーから揚げ最高。

たっぷりのから揚げと白米とみそ汁もついて1000円。

お手頃価格で美味しくてお腹もいっぱいになるなんて最高だな。


「おいしい。ナツキの出す料理はぜんぶおいしい」


そういえば、俺は色々【インベントリ】から出してるけどノノからは何も質問が飛んでこないな。

何で熱々のままなのか、とか自分で作ってるのか、とか。

まぁ俺としては何も聞いて来ない方が都合が良いんだけどさ。


食べ終わったら【クリーン】で全身綺麗にして就寝……ああ、寝具が無いな。


「毛布ならもってる」


と言ってノノが出したのはぺらぺらの布だ。

日本で売ってる1000円以下の毛布の方が質が良いぞ。

【異世界商店】を開いて布団一式を探してぽちった。

安物だけど敷布団、かけ布団、枕がついてる一式を2セット。


「これで寝れば良い。この一式あげるから」


「良いの?ふかふか」


「お世話になってるからな。護衛代みたいなもんだ」


「……ありがと」


お、笑った。

甘い物食べてる時以外で笑ったの初めて見たな。

何故だかちょっとドキドキしつつも布団に潜り込んで眠りについた。


………

……


異世界生活5日目



翌朝。知らない天井だ。

ああそうか、【マイルーム】の中なんだっけ。

そうだ、忘れないうちに【ログインボーナス】を受け取っておこう。

どれどれ、今日のログボは……何だこれ、紙?

長方形の白い紙に数字が書いてある。

分からない時は一旦【インベントリ】にしまって簡易鑑定だな。


『経験値チケット 

 使用すると経験値を獲得する』


お、良い物だ。

ログボ結構当たりが多いな。

1日分忘れてたのが悔やまれる。


早速使ってみると、暖かい感覚が流れ込んで来る。

スキルオーブを使った時と同じような感覚だ。

どれどれ、ステータスをチェック……おお、レベルが3に上がってる。

昨日寝る前に確認した時は2のままだったからチケットで3になったんだな。


お、魔力量がFに上がってる!でも魔力ランクはGのままだから魔法はどっちにしろ低威力のものしか使えないな。

新しいスキルは……覚えてないか。

まぁ2で【マイルーム】を覚えたばっかだしな。

ステータスのチェックを終えて顔を上げると、ノノはまだ寝ていた。


久々に風呂でも入るか。

脱衣所で服を脱いで脱いだ服に【クリーン】。

あ、お湯は溜まってないからシャワーだな。

えーと、ああ、シャンプーやボディーソープ、タオルも完備されてる。至れり尽くせりだ。


熱いシャワーを浴びると眠気が残っていた頭がスッキリする。

あー、気持ち良い。

まだ予断は許せないけど、1日目よりは金銭的にも余裕が出て来た。

まぁお金はノノのおかげだけど。


元手もできたし、このお金で本格的に商売を始めるべきだろうか。

今俺は商業ギルドのランクがCだから、屋台や露店ぐらいしか店が出せないんだよな。

でも【マイルーム】のおかげで宿を取る必要がなくなったから、毎日少しずつの収入でも良くなった。

飯代さえ稼げれば死なないからな。

しかしいざという時の籠城、引きこもりとも言うが……それができるために1年分ぐらいの食費は稼いでおいた方が良いよな。


王都に戻ったらもう1度露店を巡って何を売りに出すか考えないとな。

……そういえば、自分のことに精一杯で忘れてたけどクラスメイトたちはどうなったんだろうか。

城で保護されてる友人たちは心配無いとして、一緒に追放された奴らの動向は気になるよな。

なんか1人初日で冒険者ギルドでやらかしてるし。


服を制服から着替えたのってそいつらと仲間だと思われないように、っていうのもあった。

そのせいで冒険者ギルドで絡まれたんだし。

でも日本人って結構目立つんだよな。

黒髪黒目っていうのがいない。

濃い青色とか紺色とかは見かけるんだけど、カラスみたいに真っ黒な髪の人って見かけないんだ。

日本人の黒髪の中でも茶髪寄りとか色々あるけど、俺は真っ黒なんだよ。


冒険者ギルドに寄ったら初日でやらかした奴が今どうしてるか聞いてみるか……いや、あんまり関わりたくないしやめておこう。

ふぅ、シャワー浴びたらサッパリした。

やっぱり石鹸で体を洗うとなんかスッキリするような気がするよな。

【クリーン】も便利なんだけど、余裕がある時は風呂に入りたい。


脱衣所から出ると、布団の上にノノが正座していた。


「起きたのか、おはよう」


「……おはよう。寝すごした、不覚」


なにやら悔しそうにしている。

俺より遅く起きたことが悔しいのだろうか。

ノノは前日寝ずの番をしてくれてるから仕方ないと思うんだけど……。


朝食はサンドイッチで軽く済ませる。

今日のノノの報酬は……うーん、俺あんまり甘い物に詳しくないんだよな。


「あ、プリンとかどうだ?」


プリンを購入してスプーンと一緒に渡してやる。


一口食べて……固まった。

結構フリーズの時間が長い。大丈夫だろうか。

と思ったらまた食べ始めた。


「これは……ぷるぷるでやさしい甘さ……とまらない……」


パクパク食べてあっという間になくなっていた。

大丈夫そうだな。残りの4つを渡しておく。


「だいじに食べる」


1個200円のプリンを大事にされても困るな。

今度もっとお高いプリンを食べさせてやろう。


身支度を整えて【マイルーム】から出て王都を目指して歩き出した。

日本ではインドア派だったからただ歩くだけっていうのも結構つらいんだよ俺。


………

……


昼も過ぎて昼食を食べ終わってまた歩き出した頃、前方の方でなにやらごちゃごちゃしているのが見えた。


「何だあれ、人か?」


「ん……人間と魔物がいる。魔物の方はオーガが1体、この辺じゃ見ない魔物」


「出現型か?」


「たぶん」


魔素から生まれて突然宙から現れる出現型の魔物は本来そこに生息していない魔物でも湧く可能性があるというのはこの前聞いたばかりだ。

極々稀だが、何の変哲もない平原にドラゴンが湧いたのを見たという目撃情報もあるらしい。

その時は近場に誰もいなかったから被害もなくドラゴンは飛び去って行ったそうだが、絡まれたらヤバイことぐらいは分かる。


「やられてるっぽい」


「え、助けないと!」


「わかった」


聖剣を召喚して走り出して……ぎょっとした。

ノノが地面から土の塊を連続して出してその上をサーフィンするみたいに滑って移動している。

っていうか走るより速い!あっという間にノノだけ先に着いてしまった。

そして俺が着く頃にはもう終わっていた。

なんだか気恥ずかしくてそっと聖剣を消した。


「くそっ、血が止まらない!」


「もうポーション無いよ……!」


「なんとか止血しろ!」


戦っていた人たちは俺たちに構っている暇はなさそうだ。

大怪我をして地面に転がっている女性1人と、それを囲んでいる男女3人。

控え目に見ても修羅場だ。

 


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