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6,レベリングとオークの村

 


異世界生活4日目



うーん、……あれ、もう朝か。

ノノは俺を起こさなかったんだな。

起き上がって伸びをすると、こちらをジッと見ていたノノと目が合った。


「お、おはよう」


「ん」


「……ずっと見てたのか?」


「ひまだったから」


「そ、そっか」


不思議な奴だ。

精霊だから人間とは感性が違うのかもしれない。

クリーンで綺麗にして、と。

まずは【ログインボーナス】から……あっ!昨日ログボ受け取るの忘れてた。

ちゃんと習慣づけないといけないな。

スキル発動!


ぽと、と手の中に何かが落ちる。

お……?これは!金貨じゃないか?


「ノノ、これって金貨だよな?」


「小金貨。それ1枚で10万ガル」


やったぜ、臨時収入だ。

【ログインボーナス】って現金も降って来るんだな。

朝飯はクリームパンとオレンジジュースだ。


「!おいしい……とってもあまくてとっても濃いミルクの味がする。これもすき」


「ノノって甘い物好きなのか?」


「だいすき」


なるほどな。

ハンバーグの時も美味しいって言ってたけど、クリームパンの時の方が幸せそうな顔をしている。


「それなら今日の報酬はこれでどうだ?シュークリームっていう中にクリームが入ってるお菓子だ」


ケーキ屋のプレミアムなカスタードシュー。

それを渡したらすぐに口に運んだ。躊躇無いな。

ぱぁぁ、と表情が明るくなるノノ。

もむもむと大事に食べている。


「おいしい、幸せ。ナツキの護衛やってて良かった」


シュークリームで大袈裟な奴だな、と思ったけど悪い気はしない。

追加の4つを渡しておいた。


「ノノって俺について来てるけど、自分の用事とか無いのか?」


「王都にいるともだちに会いに行ってた。けどもう会った帰りだったから、とくに用事ない」


「そうなのか。……いつまでついて来てくれるんだ?」


「おいしいものくれるならずっと。やることもないから」


つまり俺の金が続くまでってことか。

金稼がないとな。

ノノは1日1000円ぐらいの甘い物で満足してくれるから護衛代としては安上がりなんだけど。

朝飯を食べ終わったらいざ森へ。


「森は見通しが悪いから不意打ちに注意。ビッグラビットやワームじゃなくてゴブリンやオークが生息している。キラービーに刺されたら毒になる」


森の魔物の注意事項を聞きながら森を歩く。

おっと、早速お出ましだ。

気を引き締めて聖剣を振るうと、オークも真っ二つになった。

うえ、ビックラビットやワームよりもグロい。


衝撃波を使うまでもなく、聖剣を振るうだけでこの辺りの魔物も真っ二つになるのでそう苦戦することはなかった。

索敵に失敗して俺に攻撃が届きそうになっても、ノノがすかさず精霊術で倒してくれたので怪我1つしていない。

ノノは土の精霊らしく土の槍を射出して敵を射抜いたり、土壁を出して攻撃を防いだりしていた。

うーん、やっぱ魔法とか精霊術とかっていうのはカッコイイな。

俺もレベルが上がったら魔力ランク上がったりしないだろうか?


昼頃になると切株に座って休憩だ。

剣を振るうだけでも何時間もやってたら流石に疲れる。

昼飯はハンバーガー。

これもノノは美味しいと言って食べていた。


「そろそろレベルあがってない?」


「え、もう?」


そういえば結構オーク系を倒したな。

ビッグラビットやワームを倒すよりは経験値量が多かったら良いんだけど。

ステータスを確認する。


「あ、レベル上がってる。2になった!」


「よかった」


1から2に上がっただけだけど、無性に嬉しい。

魔力ランクと魔力量は上がってないけど……新しいスキルが増えていた。



【マイルーム】……亜空間にある自分専用の部屋へ転移する。出る場所は入った場所になる。連れて行く対象に触れた状態で連れて行きたいと念じれば他の人も連れて行くことができる。



おお!これは……良いスキルだ。

宿代が必要無いってことだよな?

緊急時の避難にも使えるかもしれない。

咄嗟に発動できるかは別として。


「新しいスキルが増えたんだ。【マイルーム】って言って……」


「待った。ふつうは自分のスキルを詳しく他人に話したりしない。親しい人とか仕事上必要なときだけ」


「え、でもノノは俺の護衛だろ?護衛するにあたって護衛対象のスキルって把握しといた方が良くないか?」


「……それもそう。おしえて」


とは言いつつも【異世界商店】とか【ジョブチェンジ】を話すつもりはないんだけど。

でもノノは良い奴だし、別に教えても良い気もするけどな。

って言っても2、3日ぐらいしか一緒に過ごしてないけど。

俺は【マイルーム】の詳細をノノに教えた。


「聞いたことないスキル。とてもべんりだね。守り切れなかったときとかは隠れてね」


「もちろん。あ、ノノが危なくなった時は引っ張り込むからな」


「ぼくはだいじょうぶ。この体が壊れても憑依してる本体はきえないから、死ぬことはない」


「それでも痛いのは嫌だろ?それにいくらその体が作り物だって言っても壊れたら後味悪いしさ」


「そう?ならもしもの時はたのむ」


「任せろ」


雑談も挟みつつ狩り、昼間の部。

ノノが道を覚えているので森の中で迷うことはないのでズンズン進む。

順調に魔物を倒していたのだけど、ノノがふと言った。


「オークの数が多い。オークの村があるかも」


「オークの村?」


「オークが家を建てて繁殖をくりかえしてたくさん産まれる。たくさん棲みつく」


「……それって危険なんじゃないか?」


「王都に近いしあぶない、できれば更地にしておくべき。でも規模によってはぼくだけじゃ厳しい。ふつうはAランク冒険者のパーティが派遣される」


ふむ。

放置すると危険だけど2人……っていうかノノだけで殲滅するのは厳しいのか。

俺は頭を捻る。うーん……。


「……思ったんだけど、別に倒すことにこだわらなくて良いんだよな。村とオークが消えれば良いってだけで」


「?どこかに誘導してもどんどん増えて近くの村や町を襲う」


1つの方法を思いついた。

【インベントリ】、魔物入るんじゃね?

いや、試してないけどさ。


考えていると、タイミング良くキラービーが寄って来たのですかさずキラービーに向かって収納と念じた。

すると、フッと消えるキラービー。

ノノが驚いている。


「魔物がきえた……?」


「俺の収納スキルに収納したんだ」


「……収納スキルには生き物は入らない」


「俺のには入るんだよ」


「すごい、けどそれは言わないほうが良い」


「うん、分かってる。ノノにしか言ってないよ」


【インベントリ】には解体機能がついてるので、中に入っている生きたままのキラービーを解体すると素材と魔石になった。

うわ、できちゃったよ。

生きたままの生き物を入れて解体してゴミ箱フォルダに入れてしまえば完全に殺人を隠蔽できる……恐ろしいな。

いや、今はそれは良い。


【インベントリ】を色々試したことがあるが、目視できている範囲なら手をかざさなくても収納できる。

あとは有効範囲と容量だけど……。


「試したいことがあるんだ、オークの村の近くまで行けないか?できれば目視できる場所に行きたい」


「ん……危険だけど、わかった。規模も確認しに行かなきゃいけないし、行こう」


ノノを先頭にゆっくり警戒しながら先に進む。

ノノは魔力を感知できるから、オークが密集している場所が分かるそうだ。

ふと前を歩いているノノが手で制した。


「やっぱり村ができてる」


茂みから顔を覗かせると、ぽっかりと木々が消えている広場に木でできた掘っ立て小屋が建っているのが見えた。

村は結構広くて、オークがたくさんうろうろしている。


「これ以上は行けない。引き返そう」


「ちょっと待ってくれ、1つだけ試させてほしい」


できるだけたくさんを視界に入れて……その奥にある家やオークも認識する感じで……収納!

パッ、と。

目の前に広がっていたオークの村が一瞬にして消えた。

オークの村があった場所は今はもう何も無い。ただの更地だ。

よしっ、上手くいったぞ。

そう思ってノノを見ると、目を見開いて固まっていた。


「これで解決だろ?」


「……とってもびっくりしてる。あり得ないことだらけ」


ノノは1つ1つ何がおかしいのか説明してくれた。

まず生き物が入ること。普通は生き物は入らない。

次に手が届く範囲じゃない遠くの物を収納できること。普通は触れる距離にある物じゃないと収納できない。

最後に収納スキルの容量。村丸ごと収納できる容量なんて非常識。


【インベントリ】を確認すると、普通のオークだけでも100体はいた。

ハイオークが60体、オークアーチャーが50体、マジックオークが30体、オークロードが3体、オークキングが1体いた。

それをノノに伝えると、息を呑んでいた。


「これが王都になだれこんでたら大変なことになってた。いくら王都は冒険者の数が多いって言っても、オークキングに対抗するにはAランク冒険者パーティがいくつも必要。それでも犠牲はさけられないし、できればSランク冒険者がほしいところ。でもSランク冒険者はいまは王都にはいなかったはず。戦ってるうちに他のオークがひとを襲う。たくさん犠牲がでるところだった」


そう言われて初めてあれは大変なことだったんだと理解した。

それと同時に今俺の【インベントリ】の中にはそれだけの被害を出せるだけの戦力があるのだと思うと背筋が凍る。

王都のど真ん中でこの全てのオークたちを放ってしまえば相当な被害を出せるのだ。

絶対にしないけどさ。俺も無傷では済まないし。


オークの生き残りを殲滅するために周囲を探索して、陽が暮れる頃に森から出た。

王都に帰るのは明日だ。




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