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【彰視点】─転生初日、2日目─

 


──彰視点──召喚初日──



いつものように教室で授業を受けていると、突然地面が光って異世界に召喚された。

色々説明されたけどどうにも信用できない。

突然異世界に許可も得ずに拉致したってわけだろ?

それなのに魔王を倒せとか助けてくれとか、都合が良すぎる。

友達と固まってたんだけど、俺は勇者とやらのジョブになって王様に連れて行かれてしまった。


「そなたたちは我らの希望だ!今はレベルは低いだろうが、魔物を倒せばレベルも上がって身体能力が向上して新たなスキルも覚える。今日のところはゆっくり休んで、明日から訓練を開始するので頑張ってほしい」


俺たちは1人1つずつやたらと広い部屋をもらった。

メイドさんも3人もついて部屋の中で待機しているので落ち着かない。


「あの、友達に会いたいんだけど」


とメイドさんに言うと、他の友達たちと会うことができた。

けれど1人足りない。


「夏樹は?」


「それが俺たちと一緒じゃないんだよな。ジョブがわけわかんないのだったから……」


「もしかしたら追放されたのかも。やべぇな」


なんてこった。

ラノベとかでよくある展開じゃないか。

右も左も分からない異世界で追放だなんて普通に考えたらそう長くは生き延びられない。

夏樹を保護してやらないと!


俺は勇者なんだから少しは城の人も話を聞いてくれるんじゃないかと思ったけど、城の人たちは追放された友達を保護したいと言っても聞く耳もたなかった。

勇者でもない戦う力も無い役立たずのことを思う必要は無いのですよ、とか言って。

頭に血が昇って宰相とかいう奴に食ってかかったけど、勇者様はまだ混乱しているのでしょうとか言って部屋に閉じ込められてしまった。


1人の部屋で考える。

落ち着け、下手に暴れても押さえこまれて終わる。

今のまま外に飛び出しても連れ戻されてまた部屋に閉じ込められるだろう。

しばらく従順なフリをしておいて、町を見て回りたいと言って夏樹を探そう。

その前にいくらかお金をもらっておいて、夏樹に渡すんだ。

ある程度のお金があればしばらくの間生きられるだろう。


夕食は部屋から出してもらってみんなと食べることができた。

白いパンに分厚いステーキに香辛料のたっぷり入った辛すぎるスープ。

それと野菜の酢漬けに塩味のサラダにデザートはりんごのような果物がカットされて出て来た。


俺たち勇者はお姫様たちからキラキラした瞳で話しかけられているが、どうにも陥落させようとしているように見えてならない。

他の勇者はお姫様の腰に手を回したりして良い気分になっていたようだが、俺は馴染めなかった。

っていうかお姫様の体に触れるなんて不敬じゃないのか。

王様の顔がピクピクしてるぞ。


貴族しか入れないと言う風呂に入れてもらって、広すぎる部屋のベッドで考えるのは今頃お腹を空かせて寒空の下で震えているかもしれない夏樹のことだった。


………

……


翌朝。

メイドさんに着替えさせられ訓練が始まった。

俺たちはまず体力が無いので体力作りからということで外の訓練場を走らされた。

戦闘ジョブたちも一緒になってぐるぐる走り、へとへとになって疲れるまで止まらせてくれなかった。


それが終わると延々と素振りだ。

腕と足が棒のようになってもう動かない。

昼になったらようやく訓練が終わり、昼飯になったけどそんなに食べられなかった。


「あの、せっかく異世界に来たので町を見てまわりたいんですけど」


と言えば、すんなりと外出許可が出た。

けれどメイドさんが後ろについて、貴族街からは出ないようにとのことだった。

貴族街は貴族たちの屋敷が建ち並び、貴族しか入らないような高級なお店が並んでいる。

一応隅々まで探したけど、夏樹は見つからなかった。

貴族街からも追い出されているのかもしれない。


昼からは勉強の時間だった。

ジョブやスキルのことや魔法のこと、お金のことなどこの世界で生きるにあたって必要なことを頭に詰め込む。

せっかく学校から解放されたのにこっちでもやることは勉強か。

まぁテストが無い分マシかなぁ。


友達と集まって夏樹が見つからないことを共有。

彼らも外に出て夏樹を探してくれるそうだ。


「しばらく宿に泊まれるだけの金はもらってるらしいし、もしかしたら案外満喫してるかもしれないぜ?」


ということは聞けたが、心配なのは変わらない。


夕刻頃に試しに魔物と戦ってみることになった。

兵士が捕まえた危険の少ない魔物と訓練場で戦闘だ。

集められたのは勇者と聖女と聖騎士。

勇者が持っているスキルは共通で【聖剣召喚】だ。


神々しい真っ白な剣を召喚するスキルで、握ると力が湧いてくる。

その剣は振るうだけで魔物を両断し、力を込めるとエネルギー波が発射されて訓練場の地面を抉った。


スキルというのは基本的に気力、スタミナを使うものらしいが、自分と相性の良いスキルだったりするとそれも僅かな消費しかしないそうだ。

俺は何度スキルを使っても疲れなかったが、他の勇者は何度かエネルギー波を放ったら疲れて膝をついていた。


聖女は回復魔法の練習をしていた。

兵士の人が訓練で怪我をしたのを治している。

聖女は【聖属性魔法】というスキルを持っていた。

聖属性というのは怪我を治す回復魔法だったり、魔物を阻む結界魔法だったりが使えるらしい。


聖騎士は【絶対防御】というどんな攻撃でも防ぐスキル。

強力な魔法も兵士の斬撃も全部完全に防いでいた。

けど気力消費が激しいようで、肩で息をしていた。


その日も昨日と同じ食事を食べる。

このスープ、辛すぎて食べるのつらいんだよな。


お風呂に入る際メイドさんが手伝ってくれようとしたけど慌てて拒否した。

他の勇者はメイドさんが一緒にお風呂に入って体を洗ってもらっているらしい。

羞恥心ってものはないのかあいつら。


明日は王都の外に出て魔物と戦うそうなので、今日はちゃんと休んでおかないと……。


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