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5,スキルの検証とクッキー

 

今日は他にすることも無いと言ってノノと別れた。

また明日も俺の泊まってる宿に来るらしい。

やることはあると言えばあるんだけど、他の人に見られるのはちょっと都合が悪い。

俺は宿に戻ってステータスをチェックした。

うーん、まだレベルは上がってないか。

雑魚とはいえ結構倒したんだけどな……。


まぁ良い。

今日の午後は【ジョブチェンジ】の検証だ。

まだ【勇者】しか試してないから他のジョブも試しておかないと。

そうして俺は陽が暮れるまで【ジョブチェンジ】の検証に勤しんだ。


どんなジョブがあるのか分からなかったが、【ジョブチェンジ】ではどんなジョブにもなることができた。

【大賢者】や【剣士】、【聖女】に【狙撃手】なんかはもちろん、【木工師】や【鍛冶師】などの生産系、【踊り子】や【歌い手】、【遊び人】や【ギャンブラー】なんかにもなることができた。

その時点で覚えているスキルは1つだけだが、いずれもそのジョブに相応しいスキルを習得した状態になる。


しかし、俺の素の魔力ランクと魔力量が少ないから魔法を扱う系のジョブは真価を発揮できなかった。

いくら【全属性魔法】のスキルを習得していようと、全力でもコップ1杯の水を出す程度しか発動できなかったんだ。

強力な魔法で魔物を倒して無双はできそうにない。

ちなみに床に零した水は【インベントリ】に収納してゴミ箱フォルダに入れておいた。


それと生産系のレベル1のスキルは全て【○○の知識】系で、それを作るのに適した材料や手順が全て頭に入ってくるというものだった。

レベルが上がれば簡単にそれを作れるようなスキルが手に入るのだろうか。


宿の昨日と同じ夜飯を食べ、【クリーン】で綺麗にして眠った。


………

……


翌朝。

【クリーン】で身支度を整える。

うーん、【クリーン】で綺麗になるとはいえお金も入ったしそろそろ着替えたいよな

【異世界商店】を開いて服を見繕う。

下着と上下はシンプルめの服にして、上に着るコートを黒のフードつきコートにする。

制服は目立ってたけど、このくらいの服ならその辺によく見かけるから大丈夫だろう。


朝飯をパンで済ませて1階に降りると、もうノノはそこにいた。


「おはよう、ノノ」


「ん」


今日の分の報酬を渡さないとな。

マドレーヌを買おうとしてふと思った。


「昨日たくさんマドレーヌ買ってたし、別の物の方が良いか?例えばクッキーとか」


「クッキーは知ってる。貴族がお茶会でたべるやつ」


この世界のクッキーがどんな味なのか分からないな。

俺は日本のスーパーとかで売っている200円で14枚入りのクッキーを購入した。

これはそこそこ大きいのにたくさん入っていて美味しいから人気なんだ。

箱ごとノノに渡してみると、開け方が分からないのかくるくると箱を回している。


「こんな綺麗な絵初めて見た」


おっと、箱のイラストに注目してしまった。


「こうやって開けるんだよ」


べりべりと箱を開けてやると、びっくりしていた。


「これ芸術作品じゃないの?こわしちゃうなんて」


「いや……ただのクッキーの箱だよ」


中のクッキーを手渡してやると、包装を剥いて食べる。


「……!これは……すごい、何度かたべたことのあるクッキーと全然ちがう。口の中でほろほろほどけて……あまくてすごい。今日の報酬はこれで良い」


ふふふ、クッキーも口に合ったようだな。

しかしこのクッキーは1箱200円なのでさすがに1箱だけなのはどうかと思って5個渡すと嬉しそうにしていた。


「今日はレベルを上げたいんだけど……何か良い方法は無いかな」


「今のレベルいくつ?」


「……1」


笑われるかと思ったけど、ノノは笑ったりしなかった。


「それなら少し先の森の魔物を狩ればすぐあがる。歩きだと野営しなくちゃいけないけど」


「野営か……したことないんだよな」


「長時間町を離れるなら簡易結界石が必要。もってる?」


「いや、持ってないな」


「ぼくのもあるけど、自分のももってたほうが良い。買いにいこう」


ノノの案内で教会に来た。

何で教会?と思ったが、結界を張る魔道具は教会の専売なんだそうだ。

教会に入る時、他の人とすれ違った。


「うわ、ノームだ。気持ち悪りぃ」


耳を疑った。

ノームってノノの種族のことだよな?


「何だよ今の奴、感じ悪いな」


「気にしてない。人じゃないものを嫌う人は結構いる。このからだは作り物だからそれをきもちわるいと思う人もいる」


確かにノノは陶器の人形のような肌や表情をしている。

見ようによっては不気味だと思う人もいるかもしれない。

けれど聞こえるように陰口を叩くのは気に入らない。

もやもやした気持ちを抱えていると、ふとノノが振り返ってにやりと笑った。


「ああいうのは精霊に嫌われる。森に入ればなぜか迷うし、暑い時期にあいつのところだけ風が吹かない。火おこしはうまくいかないし、なにもない場所で転ぶようになる」


お、おお。

精霊の怒りって恐ろしいな。

なんかこう、事故に遭うとか怪我するとかじゃなくて絶妙な嫌がらせっていうか。

気を取り直してシスターに話しかけて結界石を見せてもらう。


「1番安い物はこちらの『簡易結界石(極小)』です。半径1メートル以内に魔物が出現しないようになる物です。ですがこの結界はこの中で魔物が出現しないというだけで魔物の攻撃を防ぐ能力はないので、こちらの物ですと不意打ちを受けてしまう可能性が高いです。次に……」


シスターの説明を聞いて、3メートル以内に魔物が出現しないという簡易結界石を買った。

結界外ギリギリの所に魔物が出現して攻撃されれば危ないのでお金のある人はもっと広い物を購入するそうなのだが、俺はお金がなかったために20万ガルのそれを買うしかなかった。

これで手持ちは3万ガルになってしまった。


「石の魔力がなくなったら教会で補充してもらわないといけない。頻度にもよるけどだいたい1か月ぐらいで切れる」


うわ、それでも金がいるのか。


「ノノに補充してもらえないのか?ほら、精霊って魔法得意なイメージだし……」


「精霊が使うのは魔法じゃなくて精霊術。それにぼくは聖属性はないからむり。聖属性の精霊ならできると思う」


やっぱそう簡単にはいかないか。

少し先にあるという森を目指して俺たちは王都を出発した。

道中ノノは話し相手になってくれた。

俺が当たり前のことも知らなくても何も聞かず教えてくれるので大助かりだ。


話を聞いていて驚いたのだが、この世界ではジョブというのはとても大切な要素らしい。

例えば【錬金術師】。

【錬金術師】の持つスキル【錬金】を使わないとポーションは作れない。

それ以外のジョブではポーションは作れないそうだ。


例えば【鍛冶師】。

これは【鍛冶】スキルを使わなくても剣を打てることは打てるのだが、どうやっても失敗してなまくらしか出来上がらない。

【料理人】の【料理】スキルに関しても同じことが言えるそうだ。

この世界では【料理人】ジョブの【料理】スキルがないと料理が作れないらしい。

俺が泊まっていた宿には厨房に【料理人】がいたからスープや肉が出て来たそうだ。


それなら一般家庭はどうやって飯を食ってるんだ?と聞くと、食堂に食べに行くかあらかじめ買い溜めしておいた物を温め直して食べているのだと言う。

王都を探索していた時にやたらと食堂が多かったことを思い出した。

王都だから観光地として食堂が多いのかと思ったけど、そういった理由があったのか。


しかし稀に【料理人】ジョブじゃなくても【料理】スキルが発現したりするので、そういった人は複数のジョブスキルを所有していて重宝されているらしい。


ためになることを聞きながらひらすら歩いて陽が暮れかけてきた頃に森に着いた。

狩りは明日からで今日はここで野宿だ。


ノノはテキパキと焚き火を作ってくれた。

夜飯を用意するのは俺の役目だな。

テーブルを設置してファミレスのハンバーグのライスセットをドンッ。


「いただきます」


「……それなに?」


「え、ああ。えーと、食前の挨拶だな。食材になってくれた動物たちにありがとうって意味を込めたりとか、食材を育てたり獲ったりした人や食事を作ってくれた人たちに感謝の気持ちを込めて『頂きます』って言うんだ」


「へぇ……じゃあぼくも、いただきます」


ちゃんと手を合わせてからハンバーグを食べるノノ。


「おいしい……おにくなのはわかるんだけど、こんなに柔らかいおにくはじめて。こっちの白いのは米?米は知ってるけど、こんな風になってるのもはじめて見た」


「あ、米知ってるんだ」


「人の間にはあんまり出回ってない。ぼくが知ってるのは土の精霊だから植物にくわしい」


「なるほどな」


食べ終わったら【クリーン】でお互いを綺麗にすると、それに対してもノノは驚いていた。


「【クリーン】でこんなに綺麗になるなんて……」


「え、スキルって全部同じ効果なんじゃないのか?」


「スキルは才能とイメージに強く左右される。ぜんぶおなじってわけじゃない」


「へぇー」


寝る準備はテント……はお金が無いから買わなかった。

露店でも使ったレジャーシートを敷いて、毛布をかぶるだけだ。


「ノノは寝ないのか?」


「見張りが必要。ぼくが見張りしとくから寝てて」


「分かった、じゃあ交代する時は起こしてくれ」


「精霊は少しぐらい寝なくてもだいじょうぶ。きにしないで寝てて」


「そうか?……分かった、まぁ何かあったら起こしてくれよな」


寝ずの番をずっと頼むのは気が引けるけど、そう言ってくれるのなら遠慮しなくて良いだろう。

毛布をかぶって眠りについた。


 


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