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3,露店と変わった異世界人

 

テンプレに巻き込まれて酷く疲れたな。

ひとまずギルドを出て次は商業ギルドに向かった。

おっと、ジョブを【異世界人】に戻しておこう。


こっちでは何事も無かった。

説明を聞いてサクッと登録完了。


ランクの説明は

S……複数の支店を持つ大商会

A……大きな店を持つ商会

B……個人商店

C……屋台や露店、行商

が可能だということだった。


お金もあまり無いのでCランクに登録。

登録費用はなんと大銀貨3枚。

痛い出費だ。

年会費は1年以内に別で払わないといけないらしい。


外に出て考える。

とりあえずお金を稼がないといけないよな。

今の手持ちは大銀貨2枚だから明日の宿が取れない。


昼飯食べようとチャージした分の残り9250円分が残ってるから……これを何とか大銀貨3枚ぐらいにしたいところだ。

何か高値で売れる物はないだろうか。


例えば……砂糖を使ったお菓子とか?

甘い物なら定番で人気だよな。

クッキー……だと単価が安いから……シュークリームとかどうだろう?

俺もシュークリームは大好きだ。


いや、待てよ。

生菓子だから屋台に置いて客を待つのは向かないな。

その点を言うなら焼き菓子の方が向いてるのか。


焼き菓子か……じゃあマドレーヌだな。

あのケーキ屋のマドレーヌが好きなんだ。


商業ギルドで聞いた露店通りに向かう。

この露店通りは商業ギルドに登録している人なら誰でも自由に店を出して良い場所だ。

この通りと広場以外の場所では原則屋台を出すのは禁止らしい。


昼もだいぶ過ぎた時間だし空きがあるかなと思ったけど、思ってたより露店が多くて空き場所が見つからない。

端っこの方でようやく良い感じの空きを見つけてそこに陣取った。

えーと、露店を出すには……床に敷くレジャーシートと、台になる物……ダンボールで良いか?と思ったけど、食べ物を地面に近い場所に置くのはどうかと思ったのでテーブルと椅子を買う。

それとテーブルの上に敷く布だな。

【異世界商店】でぽちって設営する。


とりあえず10個のマドレーヌを購入して机に並べる。

包装つきなので汚くない。

椅子に座って客を待つ。


………

……


1時間が経つが誰も客が来ない。

チラッと商品を見るには見るのだが、そのまま通り過ぎてしまうのだ。

こんなに美味しそうなのに、何がダメなんだ?


と思いつつ小腹が空いたので、おもむろに商品の1つを手に取って包装を剥いた。

口に運ぶと、芳醇なバターの香りと濃厚な卵の風味が口に広がる。

うん、美味しい。


「ねぇ、それ食べ物なの?」


声をかけられて顔を上げると、茶髪のぼんやりとした雰囲気の男の子が立っていた。

しかしその容貌は不思議な感じがする。

肌は恐ろしいほど白く、表情も肌の質感も作り物のような感じだ。


「砂糖を使った甘い焼き菓子ですよ」


「甘い……」


ああそうか、食べ物だと認識されてなかったから客が来なかったのか。


「いくら?」


要因その2。

値札がないから値段が分からない。


「小銀貨2枚です」


「ん」


男の子は小銀貨2枚を手渡してきたのでマドレーヌを渡す。

その場で包装を剥いて1口かじり……固まった。

数秒固まり、ゆっくり咀嚼し……飲み込む。

もう1口食べ、またゆっくり咀嚼して……飲み込む。

大事に大事に1つを食べ終わった。


「残りのやつぜんぶちょうだい」


「え、ありがとうございます!」


気に入ってもらえたみたいだ。

1個自分で食べちゃったから18,000ガルの売り上げだな。

これでなんとか明日の宿代には足りた。

しかし宿代大銀貨3枚って高いよな……明日は大銀貨2枚程度の宿が空いてないか探さないと。


「これはすごくおいしい。でも危険」


「え?危険?」


「おいしすぎて狙われる。今後君はぼくがまもる」


そんな大袈裟な。

変わった子に目をつけられたな。


「ぼくはノーム。君は?」


「ナツキだけど……」


「そう、ナツキ。今後ぼくが護衛してあげる。報酬はその焼き菓子がほしい」


ん?護衛?


「護衛って例えば魔物とか盗賊から守ってくれるってこと?」


「そう。精霊術が得意。そのへんの相手には負けない。それと焼き菓子をねらう輩からもまもる」


「精霊術か……精霊でノームって言うと土の精霊って感じがするけど」


「その通り、ぼくは土の精霊。土の精霊がお手製の体に憑依してうごいているものをノームと呼ぶ」


驚いた。

目の前の子は人間じゃなかったのか。


「じゃあノームっていうのは種族名で個体名じゃないのか?」


「そう。人間、とかエルフ、とかとおなじ」


「名前が無いと不便だな……」


「そう?じゃあなまえつけて」


「えっ」


突然そんなこと言われても困る。

ペットの名付けでも悩むのに。

実家の犬の名前はぽちだし、子供の頃飼ってた文鳥はピヨだ。


「…………じゃあ、ノノ」


「わかった。ぼくはノノ」


良いのかそれで。


「どこの宿に泊まってる?」


「ラビット亭ってところ」


「わかった。あしたの朝迎えにいく」


そう言ってノノは行ってしまった。

護衛するって……本気か?

さすがにマドレーヌを守るために俺を守るっていうのは冗談だと思うんだけど。


まぁ良いか。

来ないなら来ないで構わないし。


魔物退治もしたいけど、今から外に出て陽が暮れるとまずいから明日にしよう。

もう陽も暮れてきたので設営を片付けて宿に戻った。

宿代は飯付きの値段なので1階の食堂でご飯を注文する。

出て来たのはパンとスープ、何かの肉のステーキだった。


パンは黒くて硬い。

ギッシリしている感じだ。

力を込めてちぎって口に運ぶ。

うーん、小麦の風味もあんまりしない。

酸味がある感じなのは不味くはないけど、美味しくはない。


スープは野菜の入った白く濁ったものだ。

飲んでみると、塩味がした。

え、塩味のお湯?煮込まれた野菜が入ってる。

あ、ちょっとスパイスみたいな香りがする。


最後に何かの肉のステーキ。

これ何の肉だろう。

分厚くて切り分けるのも苦労した。

食べてみると……うん?うん、肉の味。


血抜きがきちんとされてないのか何だか臭くて獣の臭いがする。

食感も硬いし噛んで飲み込むのも疲れる。

ただまぁ、不味くて食べられないというほどではない。

塩はかかってるけど胡椒はかかってないなこれ。

やっぱり胡椒は高級品なんだろうか。


ボリュームだけはあったので全部食べるとお腹いっぱいになった。

銅貨3枚で桶に入ったお湯がもらえるらしいけど、今後も使うだろうし自分で買うか。

部屋に戻って【異世界商店】をぽちる。

購入するのは桶と体を拭く用の布と、お湯。

1,5リットルのお湯のペットボトルは1,5リットルの水と同じ値段で購入できた。


パッパと服を脱いで体を洗う。

うーん、お風呂に入りたいし服も着替えたい。

でも現状お金がカツカツだから服を買うのは贅沢だよな。

王都を見て回った感じだとお風呂屋さんも無かったみたいだし。

当面の目標は風呂と着替えだな……。


脱いだ服を着ようとして気付いた。

制服のポケットにスマホとお金が入っている。

召喚された時は学校の教室だったから鞄すら持ってなかったけど、ポケットに入れていたスマホとお金は持ち込めたのか。

スマホは当然繋がらないけど、時間は確認できる。

異世界と時間が連動してるかは分からないけど。


ポケットに入れていたお金は千円札が3枚と500円玉が4枚。

合計で5000円分だ。

これは嬉しい臨時収入だぞ。

円だからこっちの世界では使えないけど、【異世界商店】のチャージには使える。

5000円全部チャージに突っ込んだ。


今の手持ちはガルが38,000ガル。

チャージの分が6,050円だ。

明日も宿代を稼がないと……明日は午前中は魔物を倒してみるか。


魔物退治って儲かるのかな?

だとしたら冒険者って高給取りってことになるけど。

ラノベとかのイメージだとランクの低い冒険者は稼げないイメージだな。

俺はまだGランクだから大した依頼は無いだろうし、稼げないかもしれない。


ああ、依頼をこなさなくても魔物を狩ってギルドに売れば依頼関係無くお金になるのか。

でも王都っていう人がたくさんいる町の周辺にお金になるような魔物が生息しているのだろうか?

生息していたら狩られまくってもう絶滅してそうだけど。


一気にドラゴンとか狩れたら金持ちに……いや、無理だな。

いくら【ジョブチェンジ】で【勇者】になったとしてもレベルは1だ。

ドラゴンなんて倒せる気がしない。


訓練場で【勇者】になった時は聖剣の力でとんでもない力を発揮できたけど……魔物に通用するかな。

いや、やる前から弱気だといけないな。

ともかく明日試してみるしかない。

ベッドで横になって目をつぶった。

 


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