2,ギルドでのテンプレ
魔力ランクと魔力量は低すぎるので無理。
ちょっと試してみたけど魔法は使えないっぽかったし。
まずは【ログインボーナス】から調べてみるか。
「えーと、唱えれば良いのか?【ログインボーナス】」
すると、目の前にぽとっと何かが落ちた。
細長い陶器の入れ物だ。コルクで蓋がされている。
何だろうこれ。蓋を開け……いややめておこう。劇薬だったら怖い。
ログインボーナスなんだから毒物ってことはないと思うけど……。
【インベントリ】にしまっておこう。
収納っと。
手をかざして念じるだけでそこから消えた。
【インベントリ】を開いてちゃんと入っているか確認する。
ん……?
『Bランク(最高品質)ポーション』っていうやつがある。
ああ、これがさっきのアレか。ポーションだったのか。
タップしてみると、説明書きもあった。
簡易鑑定機能がついているらしい。
『Bランク(最高品質)ポーション
大きな傷や骨のひび割れを治すポーション』
骨折レベルは治せないのか。
それでも大きな傷を治せるなんてありがたい話だ。
【インベントリ】には他にフォルダ分け機能、ゴミ箱機能、解体機能があるみたいだ。
あとは時間停止機能がついてれば良いんだけどな。
次は【異世界商店】か。
唱えてみると、目の前にウインドウが表示された。
これ……ネットショップみたいなレイアウトだけど、色々と違うな。
カテゴリに家とか車とかある。
タブを切り替えるとポーションとかとんでもない道具とか空飛ぶ島とかもあった。
こっちのタブはファンタジーな物が売ってるのか。
でもファンタジーな物は値段も高いな。
試しに『Bランク(最高品質)ポーション』を検索してみると、値段はなんと100万ガルだった。
高い。いや戦闘中に大怪我を治すと思えば安いのか。
ともかく色々な物が買えるってことが分かったな。
また今度どんな物があるのか見ておこう。
最後に【ジョブチェンジ】のスキルを試してみよう。
念じてみると、どのジョブにチェンジするか選べと頭の中に流れる。
えーと、そうだな。
じゃあ【勇者】とか?
すると、ステータスの表記が切り替わった。
ジョブが【勇者】になり、スキルに【聖剣召喚】が加わった。
凄い、本当にジョブが変わった。
このスキルって永続なのか?
ジョブを【異世界人】に戻すと、増えたスキルも消えた。
習得したスキルはそのジョブになってる時だけか。そりゃそうか。
レベルも上がれば【ジョブチェンジ】した時のスキルも増えるかもな。
今のところ魔物を倒す手段は浮かばないけど。
あ、そうか。【ジョブチェンジ】で魔物を倒せるジョブにすれば良いのか。
スマホの時間を確認すると、今はちょうど昼頃だ。
召喚されたのは午前中だったからな。
昼飯食べてから外に行くか。
異世界と言えばギルド。
冒険者ギルドに登録しておこう。
商業ギルドも良いな、【異世界商店】を生かして商売とかしたい。
【異世界商店】に大銀貨1枚をチャージして昼飯を買おう。
コンビニやファミレス、ファーストフード店のメニューなんかもそのまま買えるので、チーズハンバーガーのセットを購入した。
うん、美味い。異世界で食うハンバーガーとコーラは最高だな。
腹ごしらえも済んで外に出る。
さっき宿を探してた時にギルドは見つけていたので迷わず冒険者ギルドに着いた。
中に入ると、何故だか視線が俺に向かう。
感じ悪いな。と思っていると、がたいの良い男が目の前に立ちふさがった。
「おうおう、お仲間の敵討ちにでも来たのかぁ?こいつもひょろっちい男だなぁ、笑っちまうぜ!」
「敵討ち?」
「同じ服着てるんだからさっき俺に負けて尻尾撒いて逃げてった奴の仲間だろうがよ」
同じ服……ああ、制服か。
ってことは別行動になった男子生徒のうちの誰かがこいつと勝負して負けたんだろう。
「所属は同じだけど別に仲間じゃないから敵討ちなんてするつもりはない」
「ハッ!弱虫が怖気づきやがって。良いから来やがれ!」
腕を掴まれて引きずられていく。
決闘でもするのか?
まずいな、この間に【ジョブチェンジ】で【勇者】に変更しておいた。
ギルドの地下の訓練場に連れて来られた。
「おいおいグルド、また新人イジメかー?」
「せめて怪我で済ませてやれよー」
周囲から野次が飛んでいる。
つるつるのハゲが審判をするようだ。
「相手が気絶するか戦闘不能になったら試合終了だ。何でもありで降参は無し。分かったな?それでは試合開始!」
ハゲはグルドと呼ばれた奴とグルなのか、にやにやと俺を見ている。
「俺は優しいからな、まずそっちに先手を譲ってやるよ」
グルドは手を招いて挑発している。
そっちがその気ならやらせてもらおう。
【聖剣召喚】スキルを使用すると、手に光が集まり剣の形を作る。
それを握った途端、力が体に溢れてきた。
「な、なんだあの剣は……なんて神々しい……!」
「す、凄い力を感じるぞ」
「へっ、子供だましさ」
剣に力を込めると、エネルギーが収束していくのを感じる。
それを思いっきり振りかぶった。
バシュウウウン!
エネルギーの刃が床を抉り、グルドの真横を通過して訓練場の壁を轟音と共に盛大に破壊した。
グルドは腰を抜かしてその場に座り込んでいる。
気絶か戦闘不能だったよな?
もう1度剣を振りかぶる。
「ま、待った!終わりだ、終わり!」
審判がそう言うなら仕方ない。
スキルを解除して聖剣をしまった。
シンと静まり返る訓練場。
これどうすれば良いんだ?
困り果てていると、ドタバタと上から誰かが降りて来た。
「何だ今の音は。何が……」
破壊された床と壁を見て絶句する筋肉マッチョ。
「どういうことだこれは。ガブ、説明しろ」
「は、はい!あの貴族のガキが壊しました!」
ハゲがそんなことを言う。
貴族のガキ?辺りを見回してもそれらしき人はいない。
……もしかして俺のことか?
マッチョと目が合う。
「貴族だからと言ってやって良いこととやってはいけないことの区別ぐらいつかんのか。これだから甘やかされて育った子供は……」
「待ってくれ、俺は貴族じゃない。それに妙な因縁をつけて無理やり決闘させてきたのはそこの腰抜かしてるグルドとか言う男だ。戦わなければボコられてた、正当防衛だろ」
「なに?」
マッチョはグルドを見るが、奴はまだ喋れないようだ。
「俺がギルドに入った瞬間絡まれてるのを上にいる奴らが見てるはずだ」
「……それならば冒険者同士の争いにはギルドは関与しない決まりになっている。問題はお前が壁を壊したことだけだ」
「俺は冒険者じゃない一般人だぞ?ここでは冒険者がただの一般人を連れ込んでボコすのが礼儀なのか?」
そう言うとマッチョの顔色が変わった。
「ちょっと待っていろ、上の奴らに確認して来る」
マッチョは上に戻って行く。
やれやれ、面倒なことになったな。
マッチョは2人の女性を連れて戻って来た。
みんな揃いの制服を着ていることからギルドの職員だろう。
「ええ、確かにあの子です。ギルドに入った途端にグルドさんに無理やり連れて行かれていました」
「私も見ました。何もしていないのに可哀想だなって思ってました。それにあの子は初めて見る顔です」
「何か挑発するようなことを言ったんじゃないのか?」
「いえ、彼からは何も言ってませんでしたよ」
「ええ、その通りです」
「……分かった、戻って良いぞ」
女性2人は上に戻って行った。
「疑ってすまなかったな、ほんの1時間ほど前にお前と同じ服を着た子供がグルドを挑発して乱闘騒ぎになっていたから懐疑的になっていたんだ。施設を壊した件は冒険者に無理やり決闘させられた一般人の正当防衛として処理する」
「分かってもらえて良かったよ」
あー、やっぱりあの3人のうちの1人が騒ぎを起こしてたのか。
「ほらお前ら散れ!」
マッチョの号令で野次馬していた冒険者たちが散っていく。
「俺はギルドマスターのガルウィンだ。今日は何の用で来たんだ?」
「ギルドに登録しに来た」
「分かった、俺が対応しよう。上に戻るか」
正直こんなことがあって冒険者になるのが嫌になったけど、登録はしておいて損は無い……と思う。
マッチョ……ガルウィンと共に1階へ戻った。
「これに記入してくれ。文字は書けるか?」
「大丈夫」
だよな?
日本語で記入すると、この世界の文字に自動で書き換わった。
用紙には色々項目があったが、記入したのは名前と出身地だけ。
『ナツキ』『日本』と書いただけだ。
それでも問題無いようで、普通に処理された。
それから冒険者ギルドについて説明を受けた。
冒険者ギルドは国に属していない組織である。
冒険者は民やギルドからの依頼を受けて報酬をもらう。
依頼に失敗すると違約金が発生する。
犯罪を犯した場合、ギルドから除名となる。
ランクはGからSランクまであり、依頼を受けられるのは1つ上のランクまで。
依頼をこなしていくとランクアップできる。
Aランクからは強制依頼があり、断るとランク降格や罰金などの厳しい処罰がある。
ギルドは冒険者同士の争いに関与しない。
依頼中に負った怪我や死亡についてはギルドは一切責任を負わない。
ギルドカードは身分証の代わりとなり、町に入る際や国境を越える際の税が無料となる。
ギルドカードを失くした場合、再発行に大銀貨1枚がかかる。
などということだった。
登録料金として大銀貨1枚を渡して、カードに血を一滴垂らして登録が完了した。