引導-18
隅田川の堤防に臨場した長四郎、遊原巡査、明野巡査の三人。
「この子、どこかで見たな・・・・・・」
ご遺体を見た長四郎の第一声はそれであった。
「見たことあるって。どこで?」と遊原巡査が質問すると「林田が経営する売春クラブのリスト」と答える。
「どうして、そう言う大事な情報を教えてくれないんですか?」
「ごめん、ごめん。言うの忘れてた」と明野巡査に謝罪する長四郎。
「で、そのリストは今、どこに?」
「車の中だわ」
「取ってきます」明野巡査はそう言って現場を離れた。
そして、長四郎は遺体の写真を撮り、燐に送信した。
「探偵さん、これは見せしめなんでしょうか?」
「さぁな。見せしめであったら、シャブ漬けで殺したりしないと思うけどな」
「持ってきました」明野巡査がリストを持って戻ってきた。
「どれ」長四郎はリストをもらい、ペラペラとめくりながら照会作業をしていると燐から着信が入る。
「しもしも?」
「・・・・・・」
「どうした? ラモちゃ~ん」長四郎が返事のない燐にそう声を掛けると「島ちゃん」とだけ返事が返ってきた。
「島ちゃん?」
「島倉って子なの。その子・・・・・・」
リストを見ている二人に目を向けると、島倉の欄を長四郎に見せる。
「知り合いか?」
「うん」
「そうか。残念だったな・・・・・・」
「・・・・・・」
「取り敢えず、会おう。これから最寄りの警察署へ行く、そこで会おう」
「分かった」
そこで通話は終わった。長四郎は燐に最寄りの警察署の住所を送信した。
「ラモちゃん、何だったんです?」明野巡査が質問した。
「被害者の子と知り合いだったらしい」
「そんな・・・・・・」
「ていう事は、被害者は予備校関係者って事ですか?」
「そうなるな。というより、そのリストに載っている子は予備校に関係しているんだ」
「マジか」絶句する遊原巡査。
「ここで立ち話もなんだから、警察署に行こう。ラモちゃんとも落ち合う事になったから」
「分かりました」刑事二人は、そう返事をする。
燐が警察署に到着したのは、それから30分後のことであった。
「あ、来た」
長四郎が近づくと燐は目を腫らしていた。
「辛いところ、悪かったな」
「島ちゃんは今どこ?」
「こっちだ」
長四郎は霊安室に案内する。
「島ちゃん・・・・・・」
燐は涙を浮かべ泣き始める。
それを見ていた長四郎は、島倉と親しかったのがよく分かった。
「ラモちゃん。彼女が殺される心当たり、あるか?」
その問いに燐はコクリと頷いて答えてから、口を開いた。
「彼女、トォォルンをやっていたんだよ。私には言わなかったけど。そんで、この前、誰かに呼び出されていたんだよね。多分、その時に・・・・・・」
「呼び出した相手、分かるか?」
燐は首を横に振って答える。
だが、長四郎には心当たりがあった。その相手は林田だ。
「他に気になる事あるか?」
「ない」
「分かった。ありがとう」
長四郎は霊安室を出て、部屋の前で待機していた遊原巡査にこう告げた。
「林田をマークしよう」と。