引導-17
その日、燐は島倉と共に喫茶店で勉強していた。
「島ちゃんはさ、やっぱいい大学に入りたいと思って勉強してんの?」
「あ、うん」と燐の質問に答える島倉。
「そうか」
「羅猛さんは?」
「羅猛さんって他人行儀な。燐ちゃんとかで良いの」
「じゃ、じゃあ、燐ちゃんは何で勉強するの?」
「私は自分の為かな」
「自分の為?」
「そう、誰に言われるとかではなくて自分の為にやるの。夢があるしね」
「夢? どんな」
「それは秘密」
「え~ 何で」そう言っていると島倉のスマホに着信が入る。
相手は、確認できなかった。
「はい、もしもし」電話に出る島倉のトーンはどんどん下がっていき「分かりました。向かいます」とだけ返事をし、通話を切った。
「ごめん。行かなくちゃ」
「どこに?」
「ちょっとね・・・・・・」
それだけ言って、島倉は去っていった。
燐は後を追いかけようかとも思ったが、辞めることにした。
そうして、燐は勉強を終えて林田の予備校へと向かった。
その頃、長四郎はというと・・・・・・
警視庁にその身を置いていた。
「探偵さん、取り調べの結果ですけどね。北条恒は、麻薬カルテルとの癒着している事が分かりました」と遊原巡査がそう言う。
「麻薬カルテルか・・・・・・」
「他には、トォォルン製造工場は都内に複数箇所にあることも判明しました」明野巡査が報告する。
「で、工場は?」
「今、潰す算段を整えているところです」
「遊原君。この前、捕まえた奴らから北条恒に関して何か聞き出せた?」
「いえ、それについては・・・・・・」と明野巡査は悔しさを滲ませる。
「全然、進まねぇな」長四郎はやれやれ困ったといった顔をする。
「ラモちゃんの方はどうなんでしょうか?」
「連絡してこないって事は芳しくないんじゃないのかな?」
「八方塞がりのこの状況、どうにかならないですかね」
明野巡査の言葉を受け、三人はう~んと考え始める。
「あ~ ダメだ。全く思いつかないな・・・・・・」
「そうですね」と長四郎に同意する遊原巡査。
「探偵さん、秋谷に接触したんですよね?」
「おう」
「感触はどうだったんですか?」
「黒だね。あいつは」
「秋谷から崩せる事は出来ないんですかね?」
「遊原君、それが出来るならとっくにやっている」
「そうだよ。少しは考えてから言ってよね」と明野巡査に注意され、遊原巡査はムッとする。
「そういうんだったら、何か思いついたんだろうな?」
「急には無理だよ」
「じゃあ、偉そうな事を言うなよ」
「何、怒ってんの?」
「怒ってねぇ~し」
「まぁまぁ、お二人さん喧嘩しないで。ね? 仲良く、仲良く」
長四郎がそう言うと、館内放送が流れる。
“入電。隅田川に薬物中毒の遺体が上がったもよう。現場に臨場せよ”と。
長四郎達は、すぐに動き出した。