引導-15
「そういや、行方不明の人は?」
佐藤田警部補は長四郎にそう聞いた。
二人は今、都内某所の公園で情報交換を行っていた。
「行方不明の人は多分、最悪な形で見つけてはあります」
「最悪な形ねぇ~」そう言う佐藤田警部補はチュッパチャプスを舐め始める。
「それで、行方不明者を見つける為にトォォルンを追ってるんです」
「そうか・・・・・・ それでばら撒いている元締めは?」
「そっちは、ラモちゃんが」
「女子高生やるねぇ~」目を丸くする佐藤田警部補。
「やるときはやりますよ。あれも。それより、警視庁の動きはどうなんです?」
「あ、うん。鈍いねぇ~ 流石は大物フィクサー」
「そうですか。佐藤田さんにはご迷惑をおかけし申し訳ありません」
「いいや、謝ることないよ。ま、また何かございましたら、教えてくださいな。後、内の若いのは好きに使って良いから」
「ありがとうございます」
かくして、二人は別れた。
別れた足で長四郎は、新宿へと向かった。
昼間からやっているバーに入る。
すると、先客が長四郎を待っていた。相手は勿論、金田一小五郎である。
「よぉ、待った?」
「待った。待った」という金田一の呂律は少し回っていなかった。出来上がっているのである。
「それはすまなかった。で、調べの方は」
「もう、ばっちし」とOKサインをする金田一。
金田一は、封筒を机の上に置く。
「失礼」
長四郎は封筒を開いて中身を確認すると、そこには、林田修の調査結果が入っていた。
「林田がトォォルンの販売を始めたのは、つい最近だ。それまでは脱法ハーブで一儲けしていたみたいだ」
「そうか。人気講師が裏では脱法ハーブを売りさばくか・・・・・・ 嫌な、世の中だな」
「それよりも、もっと嫌な事がある」
長四郎が資料を捲ると、次に目に入ったのは売春クラブの情報であった。
林田は自分の生徒に売春させていた。相手はテレビ関係者で、タレントからプロデューサーと多岐にわたる。
「で、このリストがテレビ関係者に出回っているのか」
その中に、島倉の姿があった。
「報酬は、金だけでなくトォォルンの可能性もあるな・・・・・・」
「長四郎、可能性ではなく事実だ」
「事実なんかい」長四郎はやれやれみたいな顔をする。
「そう。奴は、金ではなくトォォルンを報酬に売春させている」
「てか、相当な悪だな。林田って奴は」
「倒しがいがあるだろ?」
「あるねぇ~」
「次のページを見てくれ」
長四郎は言われたままページを捲る。
そこに書かれていたのは、林田を使役する北条恒のエージェントの男の情報であった。
「こいつは?」
「北条恒お抱えの優秀なエージェントの秋谷だ。お前さんが昔、捕まえた奴の後釜だ」
「懲りないねぇ~ あの爺さんも」
「ま、懲りてりゃこんなことしないよ」
「それもそうだ。ありがとうな」
長四郎は礼を述べ、金田一のお代を肩代わりしてから秋谷の元へと向かった。