引導-13
燐の大活躍により、売人の男達を逮捕することができた。
「ラモちゃん、大手柄だね」という明野巡査に燐は「ま、朝飯前だったけど」とまんざらでもないといった顔をする。
「でも、こんなあっさりで良いのかな?」
「どういう事?」
「いや、奴さんにしてはあっさりボロを出したというか・・・・・・」
「気のせいじゃない?」
「う~ん」燐は眉間に皺を寄せ、考え込む。
「あの・・・・・・」島倉が声を掛けてきた。
「どうしたの?」
「いや、あの・・・・・・」
「歯切れが悪いなぁ~ はっきり言いなよ」
「私もその協力させてくれないかな?」
「協力?」
「そう。危ないことは重々承知しているけど、薬をばら撒いてる奴らが許せないの」
「良いよ」
「ラモちゃん!」と明野巡査が言う。
「泉ちゃん。折角、協力を申し出てくれたのに、断るのは良くないよ」という燐にはある魂胆があった。
「そうかもだけど」
「心配しすぎ。私、運が良いから」と答える燐からは自身が満ち満ちていた。
「そう言う事じゃなくて・・・・・・」
「よしっ、じゃあ、早速手伝ってもらおうかな?」
「何をすれば?」
「えへっへへへ」燐は不敵な笑みを浮かべるのであった。
その頃、長四郎はというと・・・・・・
品川ふ頭に来ていた。
「探偵さん。本当に取引があるんですか?」遊原巡査は長四郎にそう聞く。
「ある! って、言いたいけど、本当の所はどうなのか俺もよく分からん」
なんて、無責任な奴だ。遊原巡査はそう思いながらも、本当に取引があるならこいつに付き合うしかないので文句は言わなかった。
「そういや、泉ちゃんは?」
「ああ、あいつなら探偵さんの相棒の所です」
「遊原君、ラモちゃんは相棒じゃないよ」
「じゃ、何なんです?」
「助手。つり合いが取れないよ相棒だと」
「知りませんよ。そんな事」
「と、下らない会話をしていると」
長四郎の視線の先には如何にもな感じのワンボックスカーが港内に入ってきた。
「来たんですかね?」
「分からんっ!!」
監視を続けていると、車からこれまた如何にもな感じの男女が降りてきた。
「行きますかっ!」遊原巡査が出ようとするが、長四郎がそれを止める。
「なんで、止めるんですか?」
「人を見かけで判断しちゃダメだよ」
そう言っていると、もう一台ワンボックスカーが来た。
そして、似たような感じの男女が降り、互いを睨みあう。
「何、やってるんだ?」
遊原巡査が首を傾げていると、ヒップホップバトルが始まった。
「な? 行かなくて正解だったろ?」
「はい・・・・・・」
二人は、そぉ~っとその場から去り、帰路に着こうとした矢先、二人の前を一台のセダンタイプの車が通りすぎて行った。
「あれだ。追うぞ!」
「は、はいっ!!」
二人は気づかれぬよう全速力で車を追いかける。
車は100メートル先で停車した。そこには、外国人が居た。
「お待たせしました」
車から降りた男が外人にそう声を掛ける。
「待ったね」
「で、ブツは?」
そう問われた外人は、部下に目配せで合図する。
部下は、アタッシュケースを開けて男に見せ、男は指パッチンしセダンから拳銃を持った大男が降りてきた。
「では、さよなら」
男がそう言った瞬間、大男はトリガーに指を掛ける。
やられるっ!!
外人の男たちはそう思ったが、、パァ~ンっと乾いた音が響き渡るだけで何も起きなかった。
ゆっくり目を開けると、大男が手首を抑えてうずくまっていた。
「ナイス!」大男目掛けて発砲した遊原巡査を褒める長四郎は、日本人の男を殴って倒し外人たちに向かってこう告げた。
「大人しくするんだ。ベイビー」と。