引導-12
長四郎が一人で調査している頃、燐はというと・・・・・・
予備校で授業を受けていた。そして、今は目的の人物・林田 勇の授業ではなかったが如何にもお薬をやっていそうな生徒を見つけ、そいつの監視をしていた。
「え~ 今日、入学した」
「羅猛です」講師にそう答える燐は「じゃあ、この問題を解いてみて」と問題を解くよう指示される。
「はいっ!!」という元気な返事と共に、ホワイトボードに答えを記入していく。
「正解だ」
「ありがとうございますっ!」燐はそう言いながら、席へとつく。
「では、これから模試の問題を出す。これを5分で解くように」
講師はホワイトボードに問題を記載していく。そして、「始めっ」の号令で皆が問題を解き始める。
が、一分も絶たずに燐は問題を解き終え、暇そうにあくびをする。
「君。何してる? 問題を解きなさい」
「へ? ああ、終わりました」
「そんなバカな」
この問題は、難題として数々の受験生を苦しめてきた問題。
それを1分足らずで解いて見せた燐に動揺を隠せない講師は、燐のノートを見る。
「答えしか書いてないじゃないか?」
「じゃあ、解法を前に書きましょうか?」と言うので、「やってみろ」と言う講師。
燐は言われた通りにホワイトボードに解法を書き始めていく。
「合ってる・・・・・・」
啞然とする講師に「そうですか」と済ました返事をする燐。
気づけば、講義の時間が終わっていた。
「では、次の講義がありますので、失礼します」燐はそう言って、部屋を出ていった。
教室の外で、お薬をやっていそうな生徒が出てくるの待つ燐。
「来たっ」
目がうつろな女子生徒が出てきた。燐はすぐさま声を掛ける。
「かぁ~ のぉ~ じょっ!!」と。
「何ですか?」戸惑う女子生徒。
「お姉さん名前は?」
「島倉です」
「島倉さんね。私、羅猛燐って言います」燐は自己紹介と同時に握手を求める。
「よ、宜しく」と島倉は握手を交わす。
「ね、さっきの講師のおっさん、うざくない?」
「あの人は、嫌われ者だから」
「通りでね。嫌な感じの出題すると思った」
「羅猛さんは、入学したてなんだよね」
「そう。しかも、高校二年生」
「えっ! 私も」とまさかの同学年であった。
「じゃあ、私達、友達だね」
「友達・・・・・・」そう言いながら、島倉は目を逸らす。
「いやだった?」
「そんな事ないよ」と答える島倉の目に涙が浮かぶ。
「私、変な事、言った?」
「ううん、こういうの久々だったから・・・・・・」
取り敢えず、二人は休憩室に移動した。
「私、学校でいじめにあっているんだ・・・・・・」
島倉からのカミングアウトに燐は少し驚いたが、取り敢えず、話を聞くことにした。
「で、ここでも、似たような目にあっていたから・・・・・・」
燐の中で怒りが沸々と湧いて来ていた。燐はこういうのが許せない体質なのだ。
「それ、どこのどいつよ」
「え? 羅猛さんは知らない人だから」
「だから、何よ。いじめる奴は許せないっ!! それだけよ」
「でも・・・・・・」
「でもじゃない。こういうのは白黒はっきりさせなきゃダメ」
「じゃ、じゃあ」島倉は恐る恐る指をさす。その先には、休憩室の入り口でこっちを見ながら嘲笑する連中がいた。
「待ってて」
燐は鼻を膨らませながら、相手に近づき締め上げる。
すると、連中の一人がポケットから白い粉が入ったポチ袋を落とした。
「に、逃げろっ」一人がそう言い、連中は逃げ始める。
「逃がすかぁぁぁ!!!」
燐はジャケットに内側に仕舞っていたダーツを取り出し、投げつけるのであった。