引導-2
「トォォルンがばら撒かれてるって?」
長四郎は機材を用意しながら、燐の話に耳を傾ける。
「そうらしい」
「ったく、凝りねぇジジィだな」
長四郎はドローンを起動させ、動作チェックを始める。
「ねぇ、何してるの?」
「人探しの準備」
「それより、トォォルンをどうにかしないと」
「あのな、そういうことは警察のお仕事。高校生なのにそんなことも分からないようじゃ、大人の仲間入りにはできないな」
「そんな仲間入りはしたくない」
「ま、そういうことだから」
「どういう事よ。手伝うわよ。人探し」
「え~」
「え~ って何よ」
「え~ なものはえ~ なんだよ」
「何、隠してるの?」
「隠してないよ。ま、とにかく帰って勉強でもしてなさいっ!」
その夜、長四郎は北条恒邸から少し離れた位置で、陣地を取り葛城唯奈の捜索を開始する。
「なんで、ラモちゃんがいる訳?」
「居ても良いでしょう?」
「いやぁ~」
「何が、いやぁ~ だよ。てか、あそこって北条恒の家だよね?」
「あ、覚えていたんだ?」
「トォォルンをばら撒いている元凶だもん。忘れる訳ないじゃない」
「ああ、そ」長四郎は双眼鏡で、北条恒邸を見る。
燐は長四郎の双眼鏡を取り上げて、覗く。
「変な所は無いようねぇ~ で、依頼の内容は?」
長四郎は燐に依頼内容を話した。
「前も似た依頼だったよね。人探しの依頼」
「そう。だから、前回の経験を生かしてだな。これを持ってきた」
ドローンを飛ばす長四郎。
屋敷に入ったドローンは、前回監禁されていた蔵へと一直線に飛んでいく。
「あ、居ないな・・・・・・」
長四郎は暗視スコープから見える蔵の中を見てそう言う。
「ダメじゃん」
「ああ、ダメだ」
ドローンは屋敷内を周回し、唯奈の姿は見つける事が出来なかった。
「ダメだわ。撤収」
長四郎はドローンを手元に飛ばして、回収し足早にその場から去ることにした。
「ドローン作戦は失敗でした」
翌日、事務所を訪ねてきた姉の幸香にそう報告をする長四郎。
「そうですか・・・・・・・ 妹はどこに居るんでしょうか?」
「それなんですがね。他に行きそうな場所とか心当たりありますか?」
「すいません。思い当たる節がなくて・・・・・・」
「分かりました。こちらも気合を入れて、捜索を始めます」
「お願いします」幸香は帰っていった。
「長四郎、居るぅ~」
入れ違いで燐が事務所を訪ねてきた。
「居ますよぉ~」長四郎は椅子にもたれていた。
「今、すれ違った人が依頼人?」
「左様」
「で、どんな反応だった?」
「良い反応じゃなかったことは分かるでしょ?」
「そうねぇ~ どこにいるんだろう?」
「どこに居るんでしょうねぇ~」
回転椅子をクルクル回す長四郎は自身も椅子と一緒に回る。
「北条恒が監禁してるのかな?」
「お姉さんの言い分だと、そんな感じに聞こえるな・・・・・・」
そう答える長四郎の顔は渋い顔をしていた。
「別荘とかは?」
「別荘か・・・・・・ 良い線だな。前回の件を学習して、別荘に監禁もありうるな。ラモちゃん、冴えているね」
「あんたが冴えてないだけ」
「厳しい事を言うねぇ~」
「じゃあ、別荘を調べようか」
「へい、お頭」
長四郎は燐の指示に従い、北条恒の別荘がある場所を調べるのだった。