苗字-7
翌日、周同句司は阿武亜実の家へ呼ばれた。
「ここは?」
周同は長四郎に質問を求める。
「ここは、阿武亜実さんの自宅です」と長四郎は答えながら、家の中へと案内する。
「さ、どうぞ。お先に」
長四郎は先に周同を中に通し、後に続いて長四郎は中に入る。
「暗いですね」周同はそう言いながら、廊下の電気のスイッチを見ずにパチンっと入れる。
そのままリビングへと入り電気のスイッチを入れた。
すると、燐、一川警部、絢巡査長の三人が姿を現し「うわっ」と驚いてみせる周同。
「驚かせてしまって、すいません」長四郎は心の籠ってない謝罪する。
「いえ、この方たちは?」
「助手と刑事です」そう答える長四郎は続ける。
「今日、貴方を呼び出したのは、犯人が分かったからなんですよ」
「犯人が? もしかして、僕がとか言うんじゃないでしょうね?」
「分かってらっしゃるじゃないですか」
その言葉にムッとする周同。
「いや、無責任に言っている訳じゃないですよ。最初に疑ったのはダイイングメッセージです」
「ダイイングメッセージ?」
「ダイイングメッセージは、これです」
絢巡査長はダイイングメッセージを撮影した写真を長四郎に手渡す。
「これなんですがね」それを周同に手渡す。
「これで、どうして僕だと」
「それはこう言う事です」燐が自身で解き明かしたダイイングメッセージの種を説明した。
「そんな事で私が犯人だと?」
「これが第一です。そして、第二はここに来て分かりました。貴方、初めて来た風を装ってますがそうじゃないですよね? 確証はありますよ。何故なら、貴方はここの家のスイッチを迷わずに押した。来たことありますよね?」
「はぁ~ 確かに来ましたよ。でも・・・・・・」
「でも?」
「凶器の刃物は、どこにあるんですか?」と逆質問してきた。
「刃物なんですね。凶器」と知らなかったような素振りを見せる長四郎。
「あんた、知らんと思うかもやけど。警察は公式に刃物が凶器と発表しとらんのです。それに、凶器が見つかってないこともね」
一川警部のその言葉にマズったみたいな顔をする周同句司。
「で、その凶器はどこに隠しているんですか?」長四郎が質問すると「知らない。知らない」と答える周同の顔には汗が滲み出る。
「ま、詳しいお話は警察署でしてもらえますか?」
「たっぷり、お話しましょうね」
絢巡査長はにんまりとした顔で、周同にそう言い連行していった。
「長さん、ありがとう」一川警部は礼を述べて部屋を後にした。
その後、警察の厳しい取調べにより、周同句司は阿武亜実殺害を自供した。
事件に至った動機として早い話が痴情のもつれだ。交際していたのだが、浮気を疑われた周同はそれを否定したのだがバンバンと罵られ、ついカ゚ッとして殺害してしまったのとことらしい。
そして、長四郎はというと・・・・・・
「はい、これ」燐は長四郎に封筒を渡す。
「何これ?」と言いながら封筒の封を開けて中身を確認する。
そこには5万円だけが入っていた。
「これ、報酬?」
「そう。富有子さんから」
長四郎は相も変わらずケチいババアだと言いたかったが、グッと堪える。
「けち臭いとか思ったでしょ?」
「滅相もない」
「顔に出てるわよぉ~」
長四郎はキッと顔を引き締めて誤魔化すのだった。
完