苗字-6
残り三日で事件を解決しなくてはならなくなった長四郎。
再度、周同句司を訪ねる為、勤務先へと向かった。
が、目的の人物である周同句司は休みを取っていた。
「休みか・・・・・・」
長四郎は残念そうにしていると、「どうされました?」と周同句司のアリバイを証明した村田が声をかけてきた。
「いえ、周同さんに二、三お話が聞きたいなと思っていたものですから」
「そうでしたか」
「あの、周同さんは職場ではどのような方ですか?」
「特にもめ事を起こすような人ではありませんよ。はい」
「営業成績はどうです?」
「優秀な方だと思いますよ」
「そうですか・・・・・・ 優秀ですか・・・・・・」
「それが何か?」
「いや、特には。あ! もしよろしければ、営業成績表とか見せてもらえますか?」
「わ、分かりました。少々お待ちください」
村田は資料を取りに行き、すぐに戻ってきた。
「こちらが営業成績表になります」
「拝見します」
長四郎は受け取ると、資料を読み始めた。
その間に村田は姿を消していた。
「バラが咲いたぁ~ バラが咲いたぁ~」長四郎は歌を口ずさみながら、資料を読み解いていく。
そこで、気になる物を見つけた。
周同の営業成績と村田の営業成績の数値が近いのだ。
一例を見せよう。
周同 04/28
取引先 入金額
島倉物産 1,500,000
岩倉商会 2,650,000
タッチ 1,460,000
村田 04/28
取引先 入金額
H2O 1,600,000
尾崎 2,540,000
アンパン 1,470,000
他の人間はここまで近しい数字を現していないのだ。
長四郎はこれを見て、無性に気になった。
そして、これが事件解決の糸口になるのではないか。長四郎はそう考えこれを辿ることにした。
その頃、燐は一人、図書館にその身を置いていた。
「あ~ ダメだ。何の事指しているんだ?」
燐は、ノートに殴り書きしたダイイングメッセージの解析結果を見ながら、う~んと考える。
「言うがよく分かんない」とぼやき「言う言う言う言う」とぶつぶつと呟き始める。
すると、司書さんに咳払いで注意される燐。
「すいません」と小声で謝罪し、自分の作業に戻る。
そして、手に取ったのは漢字辞典。
「周同句司。チョウ、トウ、コウ、シ 言 ×」
その時、燐の頭に何かに気づいたニュータイプの音が流れる。
「ゴン弁だ!!!!!」
今度は、確実に大きな声だったため「お静かに」と再度、注意される燐は顔を赤らめ「すいませぇ~ん」と謝罪し、席に着く。
「ゴン弁だぁ~」
燐はノートに次のように書いて行く。
調 → 周
詷 → 同
訽 → 句
詞 → 司
「そう言うことねぇ~」燐は胸をなで下ろして、ホッとする。
「あいつ、もっと早く言いなさいよ」
そのタイミングで長四郎から着信が入る。
燐は場所を移して電話に出る。
「解けた?」長四郎の第一声はそれであった。
「お陰様で」
「ああ、そう。なら、良かった」
「で、何?」
「ああ、もうそろそろ追い込めるかなと思って」
「そう」
「付いて来るでしょ?」
「勿論」
「じゃ、明日、しているする場所に来て」
「分かった」
こうして、周同句司を問い詰める算段ができたのであった。