苗字-3
「どうぞ、これを使ってください」
社員は空いていたノートパソコンを二人に貸し出した。
「このクラウドで名刺管理をしておりますので、全社で管理している名刺が見れるはずですから」
「ありがとうございます」
長四郎は礼を述べて、PCと睨めっこし始める。
「犯人に繋がりそう?」
調べ始めて間もなくして退屈を持て余していた燐は長四郎に話しかける。
「分からないなぁ~」気のない返事をする長四郎はモニターの画面をスクロールして名刺リストを見る。
「そればっかりじゃん・・・・・・・」
「そればっかりでぇ~す」長四郎はそう答えながら、スクロールを止める。
そして、スマホにメモを書き記す。
「何々?」燐がそう聞くと「何でもないよ。ダイイングメッセージの事を考えてたら、分かるかもよ」そう答えると長四郎は燐を置いて出て行く。
「ちょっと、待ってよ!」燐は大慌てで長四郎の後を追う。
長四郎と燐が向かった先は、近所の大手メーカーのビルであった。
「すいません。営業7課の周同 句司さんはいらっしゃいますでしょうか?」
受付嬢に長四郎はそう告げた。
「周同ですね。どのようなご用件でしょうか?」
「阿武亜実さんの件と言って頂けたら、分かるかと思います」
「少々お待ちください」受付嬢は内線で周同を呼び出す。
「周同って、誰?」
「誰、何だろうなぁ~」長四郎は白を切る。
「絶対、知っているくせに・・・・・・・」
「本日は、外回りで不在とのことですが、どうされますか?」
受付嬢がそう教えに来てくれた。
「そうですか・・・・・・・ 待つって訳には行かないですね。帰りますっ」
長四郎は仕方なく切り上げることにした。
「チッ、クソッ!」
長四郎は指パッチンして悔しがる。
「まさかとは思うけど、その人が犯人って言わないよね?」
「どうして、そう思うの?」
「あんたの事だから、もうダイイングメッセージ解けたんでしょ?」
「解けましたよぉ~」あっさりと長四郎は認めた。
「教えなさいよ」
「嫌だ」
「子供かっ!!」
「心は少年そのものですっ!!」長四郎はニヤッと笑う。
「重要参考人から話を聞けなかったのは痛かったね」急に事件の本題に入る燐にビックリする長四郎。
「そうだけど。急にぶち込んでくるなよな」
「えっへへへへ」燐は照れ笑いをするのであった。
翌日、長四郎は一人で再度、周同句司の会社を訪れた。
「今度こそは出会えるといいな」
内線で待っている間、長四郎はそう呟く。
「アポイント取れました。では、こちらを持って、17階へ行ってください」
受付嬢から仮の入場証を貰った長四郎は、言われ通りに17階へと向かった。