賄賂-15
「あの紙袋の中身って」
「多分、裏帳簿だ」
遊原巡査と明野巡査はすぐ様、河合香織の後を追いかける。
「どこ行くんだろう?」
「貸金庫とか」
「貸金庫って。隠されたらアウトじゃん」
「アウトだな」
大慌てで二人は、河合香織の前に回り込む。
「この前はどうもぉ~」遊原巡査はそう声を掛けた。
「あ、貴方は!?」
「どうも、その紙袋の中身何ですか?」明野巡査がそう問いかけた。
「いや、これは。その資料です」
「資料なのは知っています。その資料があぶなかっしい代物だって言う事も」と遊原巡査が言う。
「あなた達、何なんです?」
そう聞かれた二人はニヤッと笑うのだった。
翌日、変蛇内高校を訪れた長四郎は再び稲垣久子に接触した。
「どうも、こんにちは」
授業で写生している久子に話し掛ける長四郎。
「何ですか?」
「そう、つんけんしないで。おじさんの話を聞いてくれ」
「先生、呼びますよ」
「呼んでも構わないけど、呼ばれたら困るのは君じゃない」
「どういう意味ですか?」写生の手を止める久子。
「もうこの際だから、はっきり言っちゃおう。君が門口早苗さんを」
そう言った瞬間、久子の顔から血の気が引いて行くのが分かったので続きを言うのは止めた。
「門口早苗さんは君を脅迫したんじゃないのか? 裏帳簿を武器にして」
「裏帳簿? 何の事ですか?」
「これ、なんだけどね」長四郎はバックの中からポチ袋に入った黒革の手帳を見せた。
「優秀な刑事が見つけ出してくれてね。どうも、これ。一時期盗まれたらしい。てっきり、コピーがあるとも思ったんだが」
「コピーなら、ありました。私が燃やして捨てました」と観念したのか、久子は自供し始めた。
「で、本物も取り返したのか?」
首を横に振って答える久子の目には涙が浮かんでいた。
燐が調べにきた翌日のことであった。久子は部活帰りに門口早苗に声をかけられて家へ
招かれた。そこで、母親の暁美が不正を働いている事を告げられた。
咄嗟に、近くにあった花瓶で殴りつけその場から裏帳簿のコピーを持って一目散に逃
げた。
「それが真実です。まさか、死ぬなんて・・・・・・ 殺すつもりじゃなかった・・・・・・」
「コピーだけを持ち帰ったんだね? てか、花瓶はどうしたの?」
「コピーと一緒に燃やして・・・・・・ ごめんなさい・・・・・・ ごめんなさい・・・・・・」
「ありがとう。ま、君のしたことは良くないが、真犯人がよく分かったよ」
長四郎はそう告げると、明野巡査に久子を託して燐が居る大会議室へと向かった。